ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

Sep 28, 2006
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「昭和末期?」

 今日のカルテットの練習では、最後に モーツァルトのト長調 の1楽章と終楽章を軽く通して終わりにした。ベートーベンを弾いた直後だからかもしれないけど、この曲のじわーっとした明るさに心が洗われる。

 この1楽章を聴くたびに弾くたびに童心に帰ってしまうのは、曲がそういう性格を持っているからなのか、あるいは自分自身の子どものころの体験によるものなのか。

 この曲を含むモーツァルトの弦楽四重奏曲「ハイドンセット」全集のCDは、僕がまだ若かったころ、自分の小遣いで初めて買った思い出の品。時代は昭和の末期、世は、レコードから「しーでぃー」とかいう新種の円盤へと移行し終える頃で、「でじたる」という響きにいちいち庶民が胸をときめかせてた古き良き時代(遠い目)。
 アルバンベルク四重奏団の録音のCDで、三枚組だから値段も張る。当時の自分にとってはかなりの大金だったけど(今の自分にとってもだが)、CDといういうものへの興味も手伝い、意を決して無理して購入した。近所のレコード屋さんにはもともと室内楽曲はあまり置いてなく、結局は注文を入れてもらって、何日か待って入手した。

 だから、このCDを手にした夜、緊張しながらも、1曲めに収録されているこの曲、この楽章を聴いたときの感動はひとしお。今も鮮明に覚えてる。

 そんな自分も、いつのまにか大人になって、実際にモーツァルトのカルテットで遊ぶ機会が出てくると、結局は「狩り」とか「不協和音」などの有名どころを先に弾きたくなって、このト長調は優先順位が下になってしまった。この夏ついに弾く機会に恵まれて、当時のことが急に思い出された。足繁く通ったレコード屋のオヤジさんのことか、当時我が家の居間に置いてあった不必要にばかでかいCDプレーヤーとか。

 だから、自分にとってもこの曲のイメージは、18世紀末のウィーンとかじゃなく、昭和の末期のニッポンの田舎町だったりして。






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最終更新日  Oct 1, 2006 09:50:36 PM
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