I love Salzburg

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2013.11.24
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カテゴリ: 展覧会
シャガールといえば、6本の指を持つ自画像であったり、首が真反対になった男性が空を飛んでたり、

子供の頃の私は、ずっと不可解で気持ちの悪い絵を描く画家だと思っていた。


それが19の秋、ひろしま美術館で「私のおばあちゃん」という彼の作品と出会ってから気持ちが変わった。

二十歳の誕生日、その「おばあちゃん」の前にひとり佇む私が居た。

成人するその日を、大好きな空間の中、穏やかな気持ちで迎えたい。
友達が計画してくれたパーティさえ日にちを変更してもらって美術館へと赴くほど、彼の描くおばあちゃんのファンになっていた。(笑)

それほど その「おばあちゃん」は、よく絵本に描かれるような暖炉にぽっと灯った火みたいに、柔らかい あったか~い絵だったのだ。

それ以来、シャガールは私のお気に入りの画家となる。



それでも、ここ最近は絵を見るなら旅先の、しかも作品と縁のある場所で、できれば作品が生まれた国、空気の中で見たいという気持ちが強くなり、全国を巡回するような大規模な展覧会からは足遠くなっていた。


先日、広島県立美術館まで『シャガール展』を観に行って来た。

片道200km、軽自動車をふんふん飛ばし、なんと贅沢な芸術鑑賞であろうか。(笑)


しかし、これが本当に凄かった。

私だけじゃない、「凄い」と思わず言葉を漏らす観客のなんと多いことか。

しょっぱなのガルニエの天井画『夢の花束』からやられてしまった。
これは本物を見にゃならぬ、と思ってしまった。
しかも、ただオペラ座内部の見学ツアーでなく、天井画の下でバレエやオペラを楽しみたいと強く思った。

正直、パリのオペラ座やウィーンの国立歌劇場はあまりに有名すぎて、天邪鬼の私は自分がその場に似つかわしくないことを棚に上げ、時々ふんっ!て思ってた。(笑)

だが、悔しいことに天邪鬼だって感動する。


シャガールは言った。
「上部から、まるで鏡を乗せたように役者や音楽家の夢や世界を花束を抱えたみたいに反射させたい」というような言葉を。


馬鹿で無知な私は、画と描かれた内容の説明を交互に見比べながら、その夢の世界を想像する。
その後に続く『「魔笛」の思い出』という作品の前ではしばし動けなくなってしまった。

そしてシャガールの『夢の花束』は、ただ単なる夢の花束とは違うと思った。


シャガールは後半生において、歌劇場や美術館、教会、大学等の公共空間を飾るモニュメントを多く手掛けている。
彼が60歳を過ぎてからのことだから、彼の集大成、人生そのものが描かれているといっても過言ではないだろう。


「冷戦時代にあって、アメリカ音楽とロシア音楽の両方を賞賛し」表したシャガール。

その奥に、彼が旧ロシア(現ベラルーシ)で生を受け、東欧系ユダヤ人であったことが作品に大きな影響を与えていたことは否めない、と私は思う。


私は、この春巡った東欧に思いを馳せた。

そして、気付く。

この展覧会、確かに絵画の素晴らしさや色鮮やかさのみを観るのであれば、昨年の私でもそれなりに感動できたに違いない。

しかし、今回の展覧会の作品達が、絵画の持つ世界観を圧倒的迫力でもって私に迫ってきたのは、あの旅あってのことだろう。
極寒の中、厳しい歴史と逃げずに向き合ったことで、新しいシャガールとの出会いを見つけた。

感動というより打ちのめされてしまったというのが正しいか。


その中で、大きな赦しに抱かれる安心感を与えてくれるシャガールの絵。
いつまでもいつまでも眺めていたいと思った。


展覧会の謳い文句、「こんなシャガール見たことない!」

広島では12月25日まで開催されるということで、来月 もう一度観に行こうと思っている。





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Last updated  2013.11.27 18:17:32
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