Sep 2,1980(Tue)




キーストンコーナーでの演奏も3日目に入る。
こういう聞き方だとその音の変化は捉えにくいけど、確実にエヴァンスは死に近づいていってる。
その姿は、決して穏やかなものではなく、しいていうなら"死への情熱"とでも呼ぶべきものだろうか。
だからこそ、その壮絶な情熱が聞き手にもエネルギーを要求する。
何度も繰り返しの言葉になるが、この演奏は壮絶だ。


この日エヴァンスは少し遅刻したらしい。
くすりをやりすぎていたからかな…(笑)

『Re:Person I Knew』からマチネーは始まる。
これもこの頃のパターン化された順番だ。
ただ、この日の演奏は少し急いでいるように感じる。…遅刻のせい?(笑)
ハーモニーでメロディを埋めてゆく『Tifany』の手法は好きだな…
ジョンソンとラバーバラの2人も流れをさえぎることなく、ピアノと一体になってゆく。
ずいぶんと急いでいるなと感じる。少し音を埋める傾向にあるようだ。
強烈な推進力といえるのだろうか…
『Knit For Mary F.』では少し息切れが聴こえるように思う。
『Your Story』は内面を深く掘り進んでゆく…
このコードチェンジは見事だとしかいいようがない。
左手のトレモロが素晴らしい。
あんなにまで浮腫みあがった手でここまでよく弾けるものだ。
なんと感情的に無防備なことよ…
生々しい彼の感情が見えてくるようだ。苦しみ、悲しみ、そして平穏…
毎日の様に演奏されている『My Romance』だが、その役割は毎日違うようで、その形態もそれぞれ違う。
その前の曲からの流れをいかしたまま、この曲に入ることを彼は好んでいたようだ。
この日はコードの置き換えによる展開がめまぐるしいと感じる。

「The Last Waltz」のセットははスティーブ・スワローの曲、『Peau Douce』から。
非常に軽快なピアノ♪
次も今まであまり取り上げたことのなかった曲が続く。
自らの肉体が朽ちて行くのを感じていたはずだが、彼は音楽的にはまだまだ新しいことを試そうとしているのだ…
これが表現者としての執念か。
少しディスタッチが見られる、『My Foolish Heart』
でも、それが全体のレベルを下げているかというと、そうではない。
この日2回目の『I Do It For Your Love』は採譜されて今日まで残っている。
そこには、ショパン、リストなどの難解な演奏が散見される。
非常に印象的なコードの使い方をしているなぁ。
昼の部よりも美しく深い。
疲れは増しているはずなのに、イマジネーションはまだ消えない。
ミスを恐れず、自分の信念の下に進んでゆく。
そして、15分と前々日よりはすこーし短くなった『Nardis』(笑)
いつものように究極の形態だ。
この曲だけ9月3日の演奏だ。
トリオの調整弁としての役割も持っていたのだろう。この曲は。
ラストは『Noelle's Theme/I Loves You, Porgy』で終わる。
まだまだ、ソロが生きている。


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