有志の会のきっかけ:金井先生の講義


                        平成15年2月27日(木)
                       (財)神戸都市問題研究所
1 テーマ
 「リーダーシップ開発とキャリア発達」
2 講 師
  神戸大学大学院経営学研究科 金井壽宏教授
3 講師略歴等
 1954年神戸市生まれ。京都大学教育学部卒業、神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了後、MIT経営大学院博士課程修了。現在神戸大学大学院経営学研究科教授
 著書は、「企業者ネットワーキングの世界」(白桃書房)、「ニューウェーブ・マネジメント」(創元社)、「働くひとのためのキャリア・デザイン」PHP新書、「仕事で『一皮むける』」光文社新書など
4 講 義 <内 容>
● 経営学にキャリア論があると言うとかつては不思議がられた。
● 一生懸命働くことが仕事であり、上の意思が正しかった時代は幸せだった。
● 今、何が成果になるのか、リターンは何かということが問われている。
● 一橋大学の野中郁次郎先生は20年前、ミドルへの問いかけで「何ができるか」と言い、それに対す る有名な答えとして「部長ができます」というのがあったが、普遍的ではなく、その会社でしかできないことではまずい。
●キャリアの話には、暗いものが多い。パイオニアでは「以後、出社に及ばず」と言っているが、これなど最低の言い方である。
●「物をつくっている前に人をつくっている」と言われた松下でさえ、雇用調整 に入っている。
●会社の社長、会長、市長、知事が描くデザインと個人一人ひとりのキャリアがある。
●みんながくぐることだから泣き言は言えないが、入社は大きな節目である。
●リーダーシップが取れるようになることは人間の発達の第一歩である。自分一人の力でやれたものが、周りの人間の力を借りなければならなくなるからだ。
●キャリアの話をしていて思うことは、会社にやられっぱなしではなく、他でも務まるという生き方をして欲しいと思うことである。
●「流動性」とか「市場主義」はイヤなことばだと思う。
●その世界で一番良い生き方をしていると思っても、ある会社で「持っているポータブル・スキルを書き出してください」と言ったら出てこなくてノイローゼになる。
● 相当難しそうだが、実現するとうれしいものが仕事にはある。プロジェクトX
 のイメージである。
● 22歳で大学を卒業して働くとしてもそのための準備期間が人生の1/4もあ
 ることになるし、そのあと辞めてからも長くある。
● 発達段階で、あるときから「束ねる」ということがある。
● 事業を起こすためのリーダーシップは、事業で身につくものだ。
● エドガー・シャインは、「人はどうして他の人の影響を受けるのか」と「洗脳」の研究をしている。
●会社も管理職研修、初任者研修で社員を洗脳しているが、それは悪いことではない。
●個人の態度は組織の価値観にどう影響を受けるのかを研究するのが、「組織社会化」の学問である。
●会社を辞めたい人、ずっといる人の両方に絶対に貫き通したいものがある。
● 外からの要望と自分の貫きのどちらかが肥大化すると、バランスが取れなくなる。
● 友人である一橋の米倉誠一郎教授は「一皮むける」という表現が悪いと言った。
● 海外での経験やゼロからの立ち上げをほとんどの人が「一皮むけた」経験として挙げている。
●「2日で変わる奴は経営幹部にしてはいけない」といわれる。すぐに変わる。人間はすぐに元に戻るからだ。
●リーダーシップの本をいくら読んでも、また、研修を受けてもリーダーシップは身につかない。
●リーダーシップが身につくのは、研修が終わったあと、誰の下で仕事をするかにかかっている。
●初期のリーダーシップは感受性訓練であるが、その効果の持続は、2,3週間である。
●リーダーの特質として、“He is friendly and approachable”ということが言われるように総じて親しみやすい。
● 近々、5月ごろに「キャリア・アンカー」「キャリア・サバイバル」といったタイトルの本を出す。
<質疑応答>
Q) エンプロアビリティとエンプロイアメンタビリティ(慶応の花田先生の造語)の関係について
A) 花田先生に確かめたが、造語らしい。エンプロイメント・セキュリティといった雇用保障が必要になってくる。リテンション&アトラクションがエンプロイアメンタビリティになる。
Q) 組織内でのキャリアの構築について
A) みんなでキャリアを探し出す、見つけ出すプロセスが大事。例えば、芸術家と認められるためには周りの評価が必要となるように。本当に若い人がついて行きたいリーダーはリーダーというより、サーバントの顔をしている。元神戸製鋼のラグビー部の林が言っているが「使命」とは命を使うことだから、軽々しく言わないことだ。最初からミッションがなくてもやって行く中で見つかることもある。時代が違うとか最初から言わずに、組織内で上司に「一皮むけた経験」を聞いてみると良い。ディ・レールメント(脱線)と言って、課長をやらせたらよかったが、部長ではダメだ、とか、助役ならいいが市長は務まらないということはままある。そのため、外資系企業では脱線よけのプログラムも開発している。


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