第2回シンポジウム西宮記録(3)


■基調講演(概要)
 発表者:稲継 裕昭(大阪市立大学大学院法学研究科長)

1 公務員制度改革
 公務員制度改革という言葉はよく聞かれるが、いくつもの誤解がある。改革
推進派と改革抵抗勢力の両方があるのが普通だが、みんな賛成している。
 ただし、賛成の中身が違う。様々なアクターで各論がバラバラである。
 国家公務員制度改革の場合であるが、与党では、自民党行革本部や自民
党政務調査会で進めたものの、公明党では閣議決定後に一部クレームがつ
いた。制度官庁では、内閣官房で進められたものの、総務省人事恩給局や
人事院は蚊帳の外に置かれた。各省大臣官房では、政策官庁は未来志向で
変える人材を求める意向が強かったが、事業官庁は今抱えていることを粛々
と変えていく人材を求めるなど異論が多かった。
 職員団体は団体によって様々だが、労働基本権と天下り批判に注目し、経
済界は天下り批判と公務員の働きぶりへの注文が多かった。マスコミは人件
費削減と天下りや今のシステムに注目し、様々な有識者グループは様々な意
見があり、かみ合わない議論が展開されている。
 それでは、制度の改革が必要であるかと思われるが、現行法の枠内での制
度・運用改革ができるはずである。制度趣旨と運用実態の乖離が最大の特徴
である。
 例えば能力実績給与の導入論があるが、これは現行法にもあるのであり、
運用実態が変わらなければ制度を改革したことにはならない。他に、内部昇進
を意味するクローズドキャリアシステム、遅い選抜システムと積み上げ型報奨
の年功所列制度、他国と比べ異端の労働基本権の制約が現行制度の特徴で
ある。
 さて、今次の公務員制度改革は、2001年12月の「公務員制度改革大綱」
(閣議決定)があり、これには「2006年予定」と「地方も」の記述がある。2000年
9月自民党行革本部で始まり、12月の行革大綱、2001年1月には橋本担当大臣
と経産官僚によって内閣官房行革事務局公務員制度改革室が発足した。
 なお、1990年代にも公務員制度改革はあったが、制度官庁間の綱引きともい
えるものであった。
 また、国家公務員制度改革は外からの改革とも言える。官への信頼低下、バ
ブル崩壊等による経済政策不信、リクルート事件以降の不祥事等による制度
改革の大合唱による改革であるからである。

2 地方公務員「制度」改革
 国(自治省・総務省)において、2001年の閣議決定後、総務省公務員課での
法案づくりが検討されたものの、現行法の枠内での制度・運用改革を求めら
れた。
 また、地方公務員制度改革は内からの改革とも言え、改革の先鞭役でもあ
る。現行法の様々な取り組みの中で組織の問題を抱えていたからである。
 例えば30年代から40年代の大量採用世代の高齢化により、いびつな年齢
構成となり、ポストの増設、意思決定の遅延、上昇志向をなくした職員が増え
てしまった。これは牧歌的な地方自治行政時代ならば対応可能であったが、
1990年代以降の自治体を取り巻く大きな嵐には対応できなくなった。1
 1993年の細川連立政権誕生以降、地域発で対応の必要のある問題が急増
したことから分権改革が進んだ。1994年から1995年頃から財政悪化は共通認
識となった。
 NPMという言葉は1990年頃、イギリスのクリストファーフッドによって始まり、
1996年から1997年に日本に持ち込まれ、あっという間に広まった考えである。
 また、1980年代以降の情報公開による住民からの突き上げも増え、それま
で行われていた官官接待が明らかになり、批判が強くなったのも大きい。
 これまでは地方が中央をもてなすこととこのことが許されることと認識されて
いたことが、これで批判され、なくなった。
 また、インターネットなど情報の伝達スピードの革命的な発展により、他の自
治体の政策をすばやく知れるようになった。また、従来の自治体職員向け雑誌
は実務記事や昇任試験対策であったが、現在の主流は新たな取り組みの紹介
である。
 さて、現場では短期間にNPMを初めとする様々な大改革が行われてきたが、
改革メニューのホッジポッジ(ごった煮)で大混乱が起きている。
 コンサルタントは初めに知識を吸収するために格安で請負い、パッケージ化
して他自治体に売るようになった。しかし、現場ではそれを安易に利用する場合
があるが、時代環境の変化に組織が対応できていないなどでうまくいかないここ
とが多い。専門的部分で使うのはいいが。
 また、組織の要である人事制度を変えることが必要で、対応できる組織への
改革と合わせて対応できる人材を育成しなければならない。改革の最大の抵抗
勢力は特権階級でもある人事と財政のうちの守旧派である。この既得ステータス
に手をつける必要がある。

3 組織・人事制度改革を考える際に考慮すべきいくつかの「ギャップ」
 首長は4年任期の政治家であり、40年勤続保証の職業公務員とは認識のギャ
ップがある。首長のミッションは「住民福祉の向上」など曖昧であり、再選される
かが評価基準である。
 しかし、首長にとってはアウトカムであり、不確定な外部要因が多い。ベースに
ある単位を比べると、首長は2~3年くらいを見ている場合が多く、変革の必要性
を直に実感している。ただし就任初年度は予算や人事が決まっているのがネック
である。
 一方、職員は、10年、あるいは次の昇任等を見ているなど様々で、現場での
煩わしさは実感できるものの、変革の必要性を実感しにくいものである。そこで、
面従腹背といった行動パターンとなりうる。そこで、打開策として、首長がミッショ
ンを示し、目標、グループの目標へと降ろす取り組みが必要である。
 また、人事制度を改革し、目標を共有し、それを実感できる職員の育成が必要
である。
 職員間のギャップもある。団塊以前と団塊、団塊と中堅・若手、同年代の中でも
「考える職員」と「作業しているだけの職員」、「作業能率がよくて時間内に終了す
る職員」と「効率が悪くて残業手当がもらえる職員」などがある。オイルショック以
前は「でもしか公務員」が多かったが、以降急変し、自治体職員のポテンシャル
が向上した。
 しかし、一方で「こんなはずじゃなかった」と考えるなど、モチベーションやモ
ラールは低下していった。優秀な職員とは組織や時代により可変的である必要
がある。
 組織のミッションを遂行するに足る職員とは頭脳明晰・成績優秀、改革連呼の
職員とは限らない。地に足のついた仕事ができているかが大事である。NPMの
ブームの中、心地よい響きにとらわれることなく、日々の業務をこなし、今までの
ベースで改革を自ら実行する職員を指す。
 人事、財務、企画は間接部門であり、これらの官房系統組織が「我々はサポ
ート組織である」という意識改革が必要である。そのため建制順の一番下に置く
べきである。これは国民にとってどうでもいいものがトップにある現状の改善であ
る。既に佐賀県庁では昨年度から経営支援部門として一番下に置いている。

4 人材育成・人材開発の方向性
 研修所研修で人材が育つかを職員アンケートしたところ、「育つ」との回答は
10%であった。人事部と職員の認識にはギャップがあり、「自学」とその刺激が
人材育成の鍵である。
 例えば新しい仕事を任されたことで自ら成長したと認識する場合が多い。その
ためには、人事管理と人材育成の連携が重要で、従来の職場外研修と自己啓
発補助・職場研修の組み合わせから、今後は人事諸制度・職場研修と職場外
研修というシステムへの変更が必要である。
 さらにこれには、ジョブローテーションと仕事の与え方の仕組みを考えた上で
変えていく必要があり、自学を促す人事評価制度が必要である。これまで勤務
評定は地方公務員法でやらなければならないのにかかわらずやっていない自治
体が多かった。
 人事評価の目的と役割は以下の2つである。職員の今の状態を知り、評価して、
それに基づいて政策を立て実施すること、行動規範を提示して職員の行動を変え
ることである。
 評価は期待の表明であり、期待する人物像を示す。人事評価することで、職員
の能力が向上し、それが住民のサービス向上となる連鎖が大切である。
 また、人事評価も組織業績を上げるための1つの手段にすぎない。
 自学を促す「研修」とするためには、職場からどういう人をどうキャリアデザイン
していくかが大切である。職場外研修とその改革は、研修担当者の能力が問わ
れている。
 自己啓発研修と呼ばれているものは、高次の自学をしている職員へのサポート
とすべきである。
 すなわち、これからは、行政研修から行政研究とし、自学をいっそう刺激するも
のとして、サポートしていくことが大切である。研修を受けさせるという発想からモ
チベーションを上げる方向が必要なのである。


<パネルディスカッション>
■「住民サービスを高める自治体トップと職員の協働、人づくり」

 コーディネーター:稲継 裕昭(大阪市立大学教授)
パネリスト:齋藤 弘(山形県知事)、白井文(尼崎市長)、逢坂誠二(ニセ
        コ町長)、山路栄一(三重県職員) 、小堀喜康(岸和田市職員)

●稲継先生 

「住民サービスを高める人材について」三首長からご意見を伺いたい。

○逢坂町長
 職員として11年、首長として11年のキャリアがある。11年前に首長になった
ときは、自治の標準装備である「情報公開」「住民参加」すら、日本の自治体は
持っていなかった。
 当時は国政でも自治は大きな課題ではなく、市町村合併推進法制定の際にも
大きな議論がなかった。首長になって、まず「情報公開」「住民参加」に取り組
み、当時とは状況がだいぶ変わってきた。
 しかし、国政に自治の感性がないため現場と乖離した政策ばかりが出される。
その限界を感じ、昨日辞表を出した。
 しかし、何の後ろ盾もないにもかかわらず多くの自治体職員が自主的に集い、
このような質の高いシンポジウムが開催されることに、「日本は変わるのではな
いか」という予感を感じている。

○白井市長
 4月25日に発生したJR福知山線の事故は、尼崎市では自然災害以外で災害
対策本部を初めて立ち上げたものであった。会議は情報共有と決定事項確認
の場に徹した。
 すなわち、現場で先々の対応を議論し結論を出して、会議ではその報告を受
けることにした。中学校の校庭がヘリポートになったり、遺体安置所を総合体育
館に設置したのも、現場の判断である。
 これらの判断について、もちろん検証は必要であるが、現場の声を活かした
タイムリーさと適切さによる、すばやい対応が出来たことは評価できると思う。
 人材育成に関しては、現場での職務を通じて「今、何が求められているか、見
る・聞く・感じる」能力を高めることが何より重要であると考える。
 また、先日1億2000万円税金を徴収しそこなうというミスを外部から指摘され
た。調査してみると、個人は正しい判断をしても組織として間違った判断をする
ことがあることがわかり、非常に危機感を感じている。
 個人の能力を高めることと、組織が適切な対応をとれるかは必ずしも一致しな
いことを実感させられた。外部の圧力など様々な要件によって、判断を狂わされ
ることがある。
 このようなことを防ぐために、公益通報システムやコンプライアンスの徹底など
を行っていく必要がある。

○齋藤知事
 山形県の中で有志の会第1号会員になった。常日頃MLでレベルの高い議論
に驚いている。
 今までのお二人とは違った視点で2つ述べたい。
 一つめは、我が国が直面する人口の急激な減少について。山形は人口減少
先進県であり、将来とも急激な人口減少に伴う労働力の減少が予測される。
これに伴い、県内総生産額も減少し、今までの豊かさを享受できなくなる。
 しかし、女性が出産・育児後も生き生きと社会参画できるよう、子育て支援や
就職年齢制限の撤廃等社会条件を整えることにより、現状男性比20パーセン
トポイントも低い女性の労働力を高めることが、総生産額の減少を少しでも防ぐ、
あるいはむしろ増加させることに寄与するのである。すなわち「男女共同参画」
とは、社会・経済構造の変化が当然のこととして求めること、時代の要請なので
ある。
 2つめは、我々の生きる姿の変化である。すなわち、我々はこれまでになく自
分のアイデンティティを確立し、そして他にそれを認めてもらいたい、と強く願うよ
うになってきた。換言すれば、「より深く生きる」ことが価値となっている。
 行政の立場からこれを見ると、「あなたのため」という、きめ細かな行政サービ
スが21世紀には求められている。その意味で、三位一体改革は、財源と権限を
市町村に移譲することにより、国の画一的な行政から自由度の高い行政に変
えていくものであり、是非とも実現しなければならないものである。これもまた、
時代の要請なのである。

●稲継先生
 「首長と職員の協働」についてどう考えているか、日ごろ職員にどう伝えてい
るかについてお聞きしたい。

○齋藤知事
 一番頭の痛い、難しい問題であるが、ポイントは「意識改革」と「情報の受発
信」
 意識改革については、「これをやれば大丈夫」というのはないのではないか。
 「おや?」と思った気持ち(旬)を大事に育てていくことが大切。人間の歴史も
また「旬」をいかにして保つかとの戦いの歴史であったと言っても過言ではな
い。
 一方、「職員の仕事の進め方」としては、例えば予算については、これを積み
上げるのではなく、大きな方針の下で予算を編成し、その目標を達成するため
に個々の職員の仕事と責任が決まるようなやり方を大切にしている。
 具体的には、特に、「いつまでに」行うのかという時間軸を持った「インナーマ
ニフェスト」を取り入れ、実践している。
 情報の受発信(職員・県民に対して)とは、「考えていることをどうやって伝え
るか」ということである。自分は就任以来原則毎日記者会見を行っているが、
今、旬の事項を旬のうちに伝える、処理することが大切である。意識改革は
その積み重ねの結果であり、みずからも変わっていくことでそれを示し、全体
として力を発揮した組織にして行きたい。

○白井市長
 職員との協働は難しい課題である。
 「本音で付き合う、本音で語る」ことが大切であると考えるが、どこまで職員
が受け止めてくれているかは不安がある。
 「わからない」「おかしい」と言い合える関係、首長の意見に対し、職員が一
発で「はい」と言わないのも良い関係かもしれない。

○逢坂町長
 自分は「はっきりしゃべる」「しゃべらない」のを組み合わせと、「夢」と「暗
い面」を組み合わせることが大切であると考える。
 例えば、首長としては「ビジョンを明確にする」ことが求められるが、自分に
しか理解できないビジョンではだめで、相手が理解できるように、明確に具体
的にしゃべっているか確認することが大切である。
 一方、最初から大きなビジョンを示すと相手とのギャップが大きすぎて実現
不可能になることもある。こんな時は、相手の理解と納得に応じながら少しず
つ小出しにし、小さなベクトルをあわせて少しずつ進んで行くというのも、現実
に物事を進めていく上では必要である。
 また、財政難ではあるが、その中で「夢」を語れるか。「詭弁」と取られるかも
しれないが、詭弁を語るのも首長の仕事である。
 一方、夢ばかりでもだめであり、批判的なことや釘をさすこともする。嫌な仕
事だが、きりっとするし、職員と距離感が取れる。長いこと(首長を)やってい
ると、距離感が取れなくなってしまう。
 「町長室日記」は、職員とコミュニケーションをとるのに、非常に重要なツー
ルである。

●稲継先生
 トップと職員のコミュニケーションは難しい。その中でどう協働を図っていく
のか。職員の側から問題提起していただきたい。

○山路
 自分が首長さん方と並んでこの場にいるのは、本の商業出版をするという
ことと、パネリストをするという自分の「夢」を実現させるために自分で行動し
た結果である。
 つまり、自分でシンポジウムを主催する側になればパネリストになれるから
である。
 私の自論は、自治体の首長は、組織の長というだけではなく、地域の経営
者であり、そのため選挙という民主的な方法で選ばれるのであり、職員とし
ては自分の1票以外に影響力を行使できず、自分たちでトップを選ぶというこ
とはできない。
 有志の会のメーリング・リストで議論になったことがあるが、「改革派首長が
いなかったらどうするのか」という問題がある。
 しかし、首長の任期は一期4年であり、長くても2期か3期であるのに対し、
通常、40年勤務する職員は首長の改革姿勢に関わらず、できること、やら
なければならないことがある。
 マスコミ受けだけを狙うのではなく、改革の実をあげるには職員が動かな
いといけないわけであって、そのためには、職員一人ひとりが組織のビジョ
ンに貢献し、自らのキャリア・デザインを描く、自分の「パーソナルビジョン」
「パーソナルマニフェスト」を持つことも重要ではないかと考える。
 担当の仕事をこなすだけではなく、こんなことを考えているが、こんな職員
をどう評価するか。

○逢坂町長
 求める職員像は重要だが、同じタイプの職員ばかりはいらない。同じ性質
の職員ばかりだと序列がついてしまう。同じ性質の職員をつくらない、という
方が重要ではないか。
 多様な個性をどうはぐくむかは、職員同士が多様な個性とお互いの良さを
認め合うところから始まる。ニセコ町でも、正職員の他、企業出向者、外国
国籍の方、インターシップの学生など、多様な人材がいる。このことが、役所
としての総合力を高めていると思う。

○白井市長
 山路さんは、自己アピールをはっきりと押し出している。全員がそんな風に
できないし、そういったセンスは人によると思う。
 組織には自己アピールする人やそれを支える人など様々な個性をもった
人材が必要であろう。

○齋藤知事
 首長はきちんと、鋭く意見具申をしてくれる人を求めている。しかし、具体
的にどうしたら(そういう人材が育つのか)、というのが悩みである。
 求める像があるとすれば、車のハンドルやブレーキがそうであるように
「遊び」を持つ職員か。  

○山路
 私はシンポジウムでは通常、聴衆の側にいるが、その際心がけていること
は、講師やパネリストとの「マス対個の一方通行の関係」を「個対個の双方
向の関係」に近づけるため、最前前に座り、蛮勇を奮って最初に質問する
ことをミッションにしている。

○齋藤知事
 私も、山路さんの熱意を大いに感じ取ったが故に、有志の会に入会した
いと思った。

●稲継先生
 続いて、さきほど「人材育成型人事考課制度」について報告いただいた
小堀さんより問題提起をいただく。

○小堀
 事例報告をした「人事担当者」の視点からの問題提起をしたい。
 「人づくり」の重要な要素が「人事」であると考える。どこに配置され、どん
な仕事になるのか、誰が昇格し、リーダーになるのか。その仕事の中で職
員が育っていく。
 自分が人事制度・組織改革に取り組もうと思ったきっかけは、表向きに
は、職員の能力アップはモチベーションが高い組織で高く、それが人材育
成につながると考えたからだが、
 裏向きには、職員のモチベーションが下がるのはふさわしくないリーダー
の下に配属された時であり、これは人事の怠慢ではないかと思ったからだ。
 「人事の怠慢」には、内部の秩序を重視しすぎる、客観的な能力評価を行
わないといったいわゆる「年功序列」があるが、一方では首長独自の判断
により人事課の案が通らない場面もある。
 このような「人事の怠慢」をなくすべく、新しい仕組みを提案することが人
事部局に必要とされているが、首長としてはどういう情報が必要なのか教
えて欲しい。

●稲継先生 
 民間の経験も踏まえて、齋藤知事

○齋藤知事
 いわゆる「正六角形型」(協調性に富む、責任感が強い、など)の人材が
理想と言われているが、自分は「新しい発想、スピード感、大胆な決断力」
が必要と考える。
 中でも「新しい発想」にポイントを置きたい。

○白井市長
 難しい質問である。
 「企画力・判断力・折衝力」と言っても、一人の職員の評価も評価者によ
って全く違ったものになる。勤務評定や自己申告書も一つの評価の手段
でしかない。
 「経歴」に併せて「具体的にそこで何をしたのか」ということが知りたいが、
これもどこまで客観評価できるのかという問題がある。
 とにかく、いろんな職員と会ってもらうしかないと人事担当部署から言わ
れたが、全員の職員と会ったからといってどこまでわかるのか、という問題
はある。

○逢坂町長
 首長の評価は難しいのと同様に「人の評価は難しい」ことを前提に、その
中でどれだけ確実な情報を得るかが重要
 一つは、人事の権限をだれが持っているかを明確にすること。
 他者からの評価も複雑であり、例えば「評判のいい課長」には、課内を
鼓舞して評価が高い人もいれば、ゆるやかで波風たっていないので評判
が良い人もいる。
 一つ言えることは、人事の瑣末な動きに関心のある職員は、ほとんど
仕事ができないことが多い。できる人は、日常の仕事の中で「どこに行っ
て何がしたいのか」がにじみ出ている。
 首長(人事を考えるもの)としては、一年中人事のことを考えている。自
分が水を向けて反応をみることもある。ニセコ町の制度としては、意向調
査と非公式ヒアリングがあり、ふさわしくない管理職の下に行くことは避け
るようにしている
 人事は相当複合的でありニセコも岸和田に学んでいるところである。不
確実ななかで、変数をどれだけ減らすかが課題である。

○山路
 人事についてはポストの関係もあり、必ずしも希望通りになるとは思わ
ないが、なぜ、希望通りにならなかったか、どういうキャリアを磨けば希望
がかなう可能性が高まるか、ということを本人に対するアカウンタビリティ
として果たして欲しい。

○逢坂町長
 人事は首長に対する評価だと考えている。内示を出した瞬間の評価と
その後の評価を静観するのも、首長としての重要な役割である。

●稲継先生
 そろそろまとめに入る。フロアの質問は時間の関係で省略させていた
だく。
 三首長に、自治体職員に対するエール、メッセージをいただけたらと
思う。

○齋藤知事
 レジメにも書いた「幸せ正三角形の法則」が重要。三角形の面積を最
大にするには、三辺の長さが一緒、すなわち正三角形となること。一辺
は「自己啓発」(「学歴」より「学習暦」)、もう一辺は、「職場での活躍」
(社会貢献)、残る一辺は「家庭」。
 面積を幸せに例えるならば、この最大化を維持するためには、どれか
一つでも欠けることのないよう、それぞれが均等に大きくなるようになっ
ていくよう、自分も心にとめて生きて行きたい。皆さんにもそうなっていた
だきたい。

○白井市長
 この会に参加すると、自分自身が元気をもらう。首長であれ、職員で
あれ、同じ方向に向かって、お互いに目標達成のためにがんばればよ
い。
 JR福知山線脱線事故、アスベストの問題など、課題をつきつけら
れることによって、組織として強く、成長するきっかけとなっている。
 しんどいことは多いが、仲間がいる。苦しみながらも、一緒にハードル
を乗り越える。しんどそうにやっていたら、誰も後に続いてくれないので、
無理をしてでも元気にふるまっている。元気で、明るく、前を向いて

○逢坂町長
 職員に勇気付けられることが多い。支えられている。それによって町
が良くなる。それでなければやっていられない。
 国をつくるにあたって、「地域から」つくれるレベルになってきたと感じ
る。今ここでの一人ひとりの活動が、5年後、10年後日本を変えて行
くことになるだろう。
 自分はその応援団になりたい。

●稲継先生
 首長と職員が同じ壇上でディスカッションをするという、まれな場であ
ると思った。
 忌憚のない意見交換ができ、有意義であった。


<閉会>
■閉演挨拶
 山路 栄一(三重県職員)

 参加者、講演者等への出席のお礼と進行不備で会場からの質問を
お受けできず、双方向にできなかったお詫びを申し上げる。
 最初20名ほどで始まったこの会も3年目を迎え47都道府県400名近
い会員を抱えることとなった。
 これはそれぞれの自治体で改革志向をもって前向きに取り組んでい
る職員が増えている証だと思う。
 どんなに優れた首長でも職員の力なくしては改革は成し遂げられない。
 これまでオフ会やシンポジウムでお招きした首長さん方はそれが分か
っておられるからこうした場にご協力いただけるのだと感謝している。 
 公務員の仕事は、いまだにお役所仕事として見られている。しかし、
そうではないということを我々の実際の言動で示し続けられればと思っ
ている。
 稲継先生のお話にあった「でもしか公務員」ではだめ。エンプロイアビ
リティ(雇用可能性)、マーケットバリュー(市場価値)のある、民間でも
通用するような者が志をもってあえて公務員をやっているのでなければ
ならない。そのためにも職員に研修の機会を与え、ちゃんと成果に報い
る、エンプロイメンタビリティ(雇用環境)を首長、当局側に整えていただ
きたいと思っている。
 去年の高浜、今年の西宮、200人、300人と参加者が増えて来て、個
人的な希望だが、東海地区、関西地区の次に来年関東・東京で開くと
したら400人、500人と参加者が集まる、そういう影響力のあるシンポジ
ウムにしたいと思っている。
 来年夏にまた、お会いしましょう。本当にありがとうございました。




Powered By 楽天広場

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: