著者名:野中郁次郎 勝見明著 出版社:日経BP社 紹介:イノベーションの本質を人と組織の観点からとらえます。 感想:以下の点に共感しました。(2004年8月読了) ・「競争に勝つ」という相対的価値の追求は、勝った時点で消える可能性があります。これに対し、絶対価値の追求の根底にあるのは「自分たちは何のために存在するのか」という根本的な問いかけであり、それは普遍性を持って未来へとつながっていきます。 ・「守・破・離」とは、武道や茶道などの日本の伝統から継承された概念です。「守」は基本の型を守り、模範どおり真似することです。最近日本の企業でもはやっているベンチマーキングは、まさしく守です。「破」は基本から抜け出し、試行錯誤して自分らしさを発見していく段階。「離」は基本から脱し、まったく新しい独自の型を創造し、生み出すことです。 ・「非常識なことではなく不常識なことを、不真面目ではなく非真面目にやれ」とは創業者本田宗一郎の言葉だが、「常識を打ち破る」ことの大切さを説いたのも、既存の常識にとらわれない商品コンセプトへの挑戦を絶えず求めたからだ。 ・「ホンダではお前の提案、夢ないなといわれるのがいちばん落ち込みます。われわれがつつかれた評価会も、チームが本気でお客さんに対して夢を提供しようとしているかどうか突っ込む。だから、評価会は裁判ではなく、これでいいのかどうかの意思統一会。ホンダでは最後は役員を含めて一丸になるのです」(井上) ・論争は、白か黒か、善か悪かという二項対立でものごとをとらえ、一方を抹殺しようとしますが、対話はこれとは本質的に違います。「私はこう思う」という人と、「いや、私はそうとは思わない、こう考える」という人が向かい合いながら、互いに対立する点を許容し合い、互いの長所をなるべく活かす新しい視点を見出して、より高い次元の命題を生み出し、限りなく真実を探求していく。こうした創造的対話こそが弁証法にほかなりません。 ・同じ浜松で生まれ、二輪車メーカーから四輪車メーカーへと発展した企業にホンダとスズキがあります。ホンダが夢から入る目標志向の会社であるのに対し、スズキはコストダウンから入る目標志向で入り口は違いますが、共通しているのは、どちらも本質追求型だということです。スズキのコストダウンの背後にはやはり経営者のロマンや夢があり、十分に創造的です。 ・元気のある経営者の多くは、最後は数字で目標を表現します。日産のゴーン氏も「日産リバイバル・プラン」やそれに続く中期計画「日産180」において明確に数値目標を設定しました。キャノンもキャッシュフローの数値指標を最も重視する経営を行っています。 ・数字は、誰にもわかりやすい共通言語です。しかし、ただの数字を掲げるだけでは、誰も動きません。その数字の奥にどのような深い意味があるのか、そして、どこで生まれたのか。企業の意志、信念、ビジョン、思い、チャレンジ、戦・・・・等々に裏付けられ現実にもとづいたとき、数字は組織に明確な目標志向を根づかせることができるのです。 ・アメリカの創造的企業3M社は、イノベーションに必要な役割として「メンター」「スポンサー」「チャンピオン」の三つを掲げています。 ・メンターは個人的なつながりを持つ教師役、スポンサーは本人が正しい道からはずれないように責任を持つ人、チャンピオンは新しいアイデアを持って、まわりを説得し実現していく人、といった意味合いです。 ・アメリカの研究者が実験を行ったところ、「世界の任意の二人は通常六段階程度の友人知人の連鎖でつながっている」ことがわかりました。つまり、知人友人を六人程度たどれば、世界中の誰とでもつながっている。これがスモールワールド・ネットワークの理論です。 ・場のダイナミズムをナレッジマネジメントの面から見ると、ナレッジは与えれば与えるほど膨らむ性質を持っていることがよくわかります。 ・リーダーが高質の暗黙知を持ち、その知識やノウハウをみんなにどんどん与えていく。それによって壁が次々ととり払われるとともに、組織の中で知の創造のうねりが生まれる。 ・「最高の自社製品を時代遅れにする最初の会社になろう(Be the first to make your own best products obsolete.)」―これはアメリカの創造的企業3M社で語られている言葉です。日清食品に求められているのもこれと同じ自己否定の論理です。 ・創業者松下幸之助の語録に、「お客様の欲しがるものを売ってはあかん、お客様の喜ぶものを売りなはれ」という言葉がある。 ・ジブリが主客一体の「We are a part of the environment」であるとすれば、ディズニーは主客分離の「We are outside of environment」です。 ・理念なき市場隷属のマーケティングと、理念を持ち実践しながら学ぶオタクとでは、どちらが強いか。顕在化したニーズは顧客に聞けばわかるが、誰が聞いても答えは同じになる。顕在化していない潜在的ニーズの地下水脈は、実践を通して自ら掘り下げながら見出す時代であることを、海洋堂の躍進は示している。 ・「自分は何をやりたいのか」―この問いに明確に答えることのできる人がどれほどいるでしょうか。特に企業のミドル層以上の人々は、この問いを自らに向けて発すること自体があるでしょうか。 ・日本の現状はどうでしょうか。多くの企業を回って感じるのは、特にミドル以上の層が「分析マヒ症候群」ともいうべき症状に陥っていることです。何かというとすぐ分析が始まり、「市場の状況はこうであり、競合他社はこういう状態にあり、したがって、我が社のとるべき最適なポジショニングは・・・・」といった具合に傍観者のスタンスで仕事と関わる。 ・あるいは、自分の会社をことあるたびに批判する。リストラが進む中で会社に対する信頼を喪失し、夢も思いもなく、ただ人事評価システムから外れないようにと上からいわれたことを要領よくこなしていく。主体的な当事者意識の決定的な欠如、実存性の欠落、これが日本の企業が抱える最大の問題です。 ・現場で直接経験する。媒体を極力排除し、リアリティに限りなく近づき、暗黙知の世界に入っていく。物語の主人公たちは、今の日本のミドルたちがどこかに置き忘れてしまった知の作法をごく自然に実践していました。 ・セブンーイレブン・ジャパンの鈴木敏文会長兼CEO(イトーヨーカドー会長兼任)はことあるたびにこう語ります。「われわれの競争相手は同業他社ではなく、日々めまぐるしくニーズが変化する顧客そのものである」 ・鈴木氏は社員たちに対して、「お客のために」という言葉を使うことを禁じているそうです。 「お客のために」と考えたとき、無意識のうちに過去の経験や既存の常識をもとに、お客とはこういうものだ、こうあるべきだと「決めつけ」をしているというのです。これは認識や分析の世界です。そして、うまくいかないと、「自分はお客のために努力したのに・・・・」と自身の認識や分析のズレは反省せず、顧客を責め始めます。 ・こうなると、顧客にとっての理想の追求というイデアは消え去り、顧客をありのままに知覚することもなくなって、もはや仮説を生み出せなくなります。だから、大切なのは、「お客のために」ではなく、「お客の立場で」考え、明日の顧客が求めるものを探り続けることだと社員たちに繰り返し語るのです。 ・『エクセレント・カンパニー』では、超優良企業の優れた点として矛盾を昇華する方法を知っていることが挙げられ、また、『ビジョナリーカンパニー』では、優れた企業は「オア(or)の抑圧をはねのけ、「アンド(and)の才能」を活かすべきであるとしています。 ・オアの抑圧とは、逆説的な考えを受け入れず、矛盾する力や考え方は同時に追及できないとする二元論的な見方であり、アンドの才能とは、さまざまな側面の両極にあるものを同時に追求する、陰と陽を同時にいかなるときも競争させることであるとしています。(以上)