<結果を出すプロの勉強法>



 「トップ経営者が伝授する!プロの勉強法」
 プレジデント編集部編 プレジデント社

 (■引用 ○私の意見)

■私は、現状を正しく認識するには「健全なる危機意識」を持つことだ
とつねづね考えている。
 現状に対して不満足や危機意識を持ちながら、好奇心豊かに周囲
を見回せば、必ず新しい事実にぶつかる。それが大切なのだと思う。
 「目の前の峠に登る努力をしよう」―目前の峠に登ってみたら、素晴
らしい景観が広がって、次にめざすべき峠が見えるかもしれないし、
頂上が見えるかもしれないし、断崖絶壁があるかもしれない。良い景観
が見えたら、当然「そこへ行こう」という意欲がわくだろうし、断崖絶壁な
ら引き返して違うルートへ向かえばいい。現状が変わればそこで描く夢
やビジョンも変わってくるということだ。
 (後藤卓也 花王会長)

○後藤会長の言葉では、「能ある鷹は爪を隠すというが、隠したままの
人なら私は要らない」というのが印象に残っています。爪を出さなければ
本当は爪がないのか、隠して出さないのかわかりません。能力の出し惜
しみはやめたいものです。


■ビジョンは共有しないと意味がないからだ。組織がビジョンを共有する
ためには社会性が必要。それがないと、トップが自分のやりたいことを
いくら声高に叫んでも、「ああそうか」という共感が得られない。「あなたの
私欲を満たすために、なぜ私たちががんばらないとならないのか」と思わ
れてしまう。それでは人がついてこない。人がついてこなければ、大きな
ことができるはずがない。ビジョンを実現するためには「よし、わかった。
一緒にやってやろう」という、みんなの共感がどうしても必要なのだ。その
意味で、ビジョンは提示すればいいというものではなく、示す人の人間性
が問われるのである。
 ビジョンを構築するにあたって、論理と閃きのどちらが重要かと聞かれ
れば、八割は閃きだと答える。いくら考えても、論理だけではいいものが
生まれない。ふと閃いたことが重要なのだ。閃きとは、経験から得た知恵
が集積され、生まれてくるものである。もちろん閃きだけではダメで、その
後の努力が重要。閃いてから、具現化するように組み立て、やってみて、
修正を繰り返す。それによってリファインされていき、夢やビジョンが実現
するのだから、途中で諦めるのは失敗ということになる。
 (飯田亮 セコム最高顧問)

○日本で初めて警備保障という分野のビジネスを始めた創業者だけに
ビジョンに関するお考えも独創的ですね。


■まともな反対意見が自由に言える雰囲気をつくるのはトップの役割だ。
簡単な話で、トップに立つ人は、皆に向かって「ゴマする人はいらないよ」
と言い続ければいい。会社のために体を張ってまともな反対意見を言っ
てくださいと。私はそれをはっきり伝えた。そして、反対意見を言ったから
といって、間違っても冷遇しないこと。それを保証しない限り、誰も口を開
かないだろう。
 (前田晃伸 みずほフィナンシャルグループ社長)

○まともな反対意見もそうですが、経営者、トップにはバッド・インフォメー
ション(悪い情報)は中々届きません。トップに立つ者は、耳障りの良い
情報や迎合する意見ではなく、都合の悪い情報や建設的な反対意見が
「尖った氷のまま」上がってくるように心がけ、工夫する必要があります。


■人を動かすには、トップの覚悟が必要だ。覚悟とは、「これをやる」という
ことを部下に会うたびに何百回も言うことである。上司でも部下でもそうだが
人は保守的なものである。新しいこと、いまの状況や環境を大きく変えるこ
とはできたらやりたくないものだ。しかしそれでも会社を成長させよう、収益
を上げようと考えたら、やるべきことはやらなければならない。目標を実行
に移すのだ。例えば、人事異動などの人材配置では、たとえ部下の嫌がる
人事であっても、それが正当で部下にも会社にもためになることなら明確に
伝え、適正な配置にと変えるべきである。
 (柳井正 ファーストリテイリング会長兼CEO)

○「トップだから部下は指示さえすれば言うことを聞くだろう」という考えでは
部下は主体的には動きません。何回も何十回も愚直に対話をして、部下が
納得するまでしつこく言い続けてこそ、プロアクティブな行動が期待できるの
ではないでしょうか。


■業務が順調であるときほど、人は「現状が維持できればいい」と考えてし
まう。だが、目標を現状と同じレベルに置いてしまうと、それは現状維持で
はなくて衰退につながる。
 (桜井正光 リコー社長)

○単に担当する仕事を漫然と処理しているだけでは、良くて単純再生産、
ひどい場合には縮小再生産になってしまいます。研修や講演に積極的に
幅広く参加し、人に会って新鮮な生の情報を得たりして、インプットを積み
重ねることで、業務についても拡大再生産ができ、成果が得られるのです。


■宮本武蔵は『五輪の書』に「我事によって後悔せず」と記している。これ
は自らを誇った言葉ではなく、後悔しても始まらないという前向きな彼の
生き様を意味している。私も、あれをやっておけばよかったという後悔は
ない。自分にやれることはほぼやれたという感じがする。相手がある中で、
五割で満足しなければならなかったこともあるし、八割以上やり遂げられ
たこともある。そう思えるのは自分が会社の試行錯誤の実験台になるの
ではなく、自分自身で試行錯誤をしてきたという自負があるからなのかも
しれない。
 (葛西敬之 JR東海会長)

○やらされ感を感じる作業としての仕事ではなく、自らプロアクティブに
意気に感じてやる「志事」をしていきたいものです。


■わが社の「リーダーの心得」には「言わせる勇気、聞く勇気」という一文
がある。私はこの言葉を大切にしている。とりわけ上司が部下に対して
「言わせる」勇気、そして「聞く」勇気。これがなければリーダーは務まらな
い。
 (松澤建 日本興亜損害保険社長)

○人間には、口は一つで耳は二つあるということは、しゃべる二倍は聞け
ということですね。特に上に立つ者は、部下がダブルバインディング現象
(無礼講と言われ、何でも言えと言われたが、それを真に受けて言えば
上司は不機嫌になるから何も言えないが、何かは言わなくてはならない
状況)に陥らないように努める必要があります。


■私の経験からすると、捨てる決断をして初めて別の何か大きなものが
得られる。それも結果を見れば、私の想像以上の成果を得ることができ
た。
 私は社員に対して、「給料をもらって働く人は要らない。働いて給料を
もらう人が必要だ」と言っている。両者は似ているが、主体性という意味
ではまったく違う。前者は従であり、後者は主だ。
 (松井道夫 松井証券社長)

○給料をもらうことを目的として働いているか、働いて成果を上げた対価
として給料をもらうか、やらされる仕事をするか、自ら「志事」していくかの
差は大きいと思います。


■経営者がすべき勉強には、ヘッドワーク、フットワーク、そしてハートワ
ークの三つがある。ヘッドワークとは文字通り、頭脳を磨き、知恵を養う
勉強だ。そしてフットワークは現場を見る行動力である。社長室に篭り
車の車窓からしか社会を見ないのでは心細い限りである。そして三つめ
のハートワーク。これがもっとも大切な勉強である。
 ハートワークの勉強は、ひとつに、胆識を磨くこと。胆識とは胆力のある
知識を意味する。次に、人心を掌握し、人を束ねる力を養うこと。そして
最後が、ハートでものを考える力を養成することである。
 (作家・経営評論家 江坂彰氏)

○ヘッドワークとフットワークでネットワークを構築することを信条にして
いる私ですが、一番大切であるハートワークや胆識という言葉は知りま
せんでした。知識にも魂がこもっていなければいけませんね。
 尊敬する経営者である伊藤忠商事の丹羽会長が今でも地下鉄通勤
され、カローラに乗ってみえる理由がよく理解できます。


■ビジネスマンには必ず、「軸」が必要になるときがあるんです。私はそ
れを「外圧と内圧の闘い」と言っています。外圧とは本人が理不尽と感じ
る干渉。内圧とは自分が無力感にさいなまれること。こうした圧力が自分
にかかったとき、企業は社会の中核的存在であるというドラッカーの定義
に立ち返れば、もう一度心を奮い立たせることができます。
 (高橋温 住友信託銀行会長)

○自分の行動基軸は何かとと問われれば、「お役所仕事」という言葉を
死語にするという、達成が極めて困難な志であり、人に対しては「信なくん
ば立たず」という信念です。


■ビジョナリーカンパニーの経営者に共通することは、「時を告げること」
ではなく「時計をつくること」だと説いている。
 「時を告げること」とは、すばらしいアイデアやビジョンを持ったカリスマ
的指導者であること。それに対して「時計をつくること」とは、いくつもの商
品のライフサイクルを通じて繁栄し続ける会社を築くことである。つまり
「時を告げる」企業では、一代限りの指導者で繁栄が終わるが、「時計を
つくる企業」では、指導者が変わっても、永続的な発展をし続けることが
できる。
 (福地茂雄 アサヒビール相談役)

○人に何かを与える場合の要諦も、釣った魚をあげることではなく、魚の
釣り方を教えてあげることだと言いますね。


■僕は経営者は、時にはあえて現状に目をつぶっても、楽観的にならな
ければいけない場合があると思っています。現状を厳しく認識しろと言っ
ても、悲観しすぎて死んでしまう人もある。僕の座右の銘は二つ。『なせ
ばなる』と『なるようにしかならない』なんです。
 (松本大 マネックス証券社長兼CEO)

○「たかが○○」「されど○○」という言葉に似て一見相反するようです
が、人事を尽くした後は開き直って天命を待つという心境に切り替える
ことも大事なのでしょう。


■毎朝、自宅を出るのは7時すぎですが、それまでの1時間あまりを読書
や新聞の時間に当てています。新聞や雑誌は情報の速報性という点で
は有益ですが、物事を考えていくうえではどうしても読書からヒントを得る
ことが多い。本からは、いろいろな人たちがさまざまな体験をして、それを
理論的・実証的に示してもらえる。つまり自分だけでは到底経験できない
部分を疑似体験させてもらえるのが読書だと思います。
 (オリックス 藤木保彦社長)

○読書の持つ意義について、私の考えと共感します。私の場合も本を読
んでいて、自分が漠然と考えていたことが理論的に整理されて記述して
あるのを見つけるが至福のときです。
 そんなお裾分けを少しでもしたいと思い、このシリーズを配信させていた
だいています。


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