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2010.07.21
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奥田英朗の重くて長い作品を読んだ。

○ストーリー
東京の西にある本城市で,ある部品メーカーの支社でボヤが起きる。本城市に住む,その事故の第一発見者の社員の妻・恭子,第一発見者を捜査する本城署の警部補・九野,九野をフツーのサラリーマンだと思いカツアゲをしようとしてのされた高校生・祐輔の3人。彼ら3人の運命は,この小さな事件で徐々に狂い始める。加速の止まらないその終着点は?

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「イン・ザ・プール」から奥田英朗を読み始めた僕としては,なかなかツライ作品だった。と言うか,この閉鎖感に満ちた作品を読んで,心が塞がない人はいないと思う。

物語は3人の人物の視点で交互に語られる。そのほとんどを占めるのが,警部補の九野と容疑者の妻である恭子だ。九野は上司からの命令で,暴力団と癒着している刑事の素行調査を行う過程で,その問題刑事と暴力団双方から狙われ,ボヤの捜査でも全体方針に異を唱えて孤立してしまう。恭子は夫が犯人であることを恐れ,思わずパート先の待遇改善の団体交渉にのめりこみ,さらにはそれを主導している団体に裏切られる。

主人公たちの選択は,その都度の状況を考えれば決しておかしくないのだが,物語のうねりは彼らを悪い方へと容赦なく追い込む。

物語の強い流れは,読んでいるのが現代小説ではなく,昔の悲劇であるような印象を与える。一般的な意味での楽しい体験ではないのだけど,物語の大きいチカラに引き込まれて,ページを繰る手が止まらない。

奥田英朗には間違いなく,堅牢な物語世界を精巧に構築するチカラがある。



こうした趣向の作品なので,ミステリーとして読むにはムリがある。発表された時に,ミステリー作品として評価されたことは知ったが,事件に関連する謎があるワケでもないし,このジャンルの中で論じるのには限界があると思う。

犯罪小説とも呼ばれているが,やはり伝統的に悲劇作品だと捉えるのが最もしっくりくる。現代の作品では桐野夏生の「OUT」がまだ近いかも知れない。フツーの人がフツーを超え,さらには善悪を超えるような大きな物語のうねりが,この作品にもある。

ピカレスク・ロマンと言うほど洒脱ではない。ただ事件に巻き込まれて人生が変わってしまう人が描かれる。だがこれで強くしたたかに生まれ変わる人と,過去から逃れられない人が対比されていて,それぞれの運命の切なさに心が揺さぶられる。

やはり最後に残るのは大きな諦めと悲しみだ。

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間違いなく小説家としての構成力,筆の確かさ,物語の進行の上手さは感じさせられる。できることならば,もう少し違う世界へと読者を誘ってもらいたい。









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Last updated  2010.07.21 22:19:51
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