Nemesis

Nemesis

【タイプレター】




羽ペンと一枚の紙を

引き出しの奥からそっと取り出し

消えゆく夕焼けの光の元で

私はあなたへの想いを綴ろうとした


『Dear・・・』


『親愛なるあなたへ』

そう書こうとしたけれど

私の手は動かなくて

私の顔は林檎のように真っ赤になった


羽ペンを持つ手は

秋なのに寒いかのように震えて

青みがかったインクははじけて

Dearと書いた紙に丸いしみを作った


私はなんだか一人で恥ずかしがって

その紙を丸めてくずかごに捨てて

真っ赤になったまま

古いタイプを取り出した


『Dear・・・』


あなたへの想いは本当だよ

自分で書こうとしても書けなくて

こんな道具を使わないと書けないから

私の気持ちは本当だよ


『Dear you・・・』







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