10/24(水)
器を生かす人生かさない人
今日はお店がないので、こないだの東京クラブネタの続き。
「髭剃りひとつにも哲学がある」とは、文豪サマセット・モームの
有名な一句だが、この世界では「たばこの火の点けかたにも哲学がある」
ってかんじだろうか。
私が今勤めているスナックで働いている女の子は全員、
この店に落ち着くまでに他の店で働いた経験のある女の子たちだ。
ママが、できることなら初心者を入れたくないと考えているというのも
あるし、慣れた子が殆ど辞めないので、回転もしないからである。
ママは人を教育するのには恐ろしく向いていないと思うので、それで
いいんだと思う。別に悪口を言ってるんじゃない。向き不向きの問題だ。
彼女はその都度気付いたことを、その日の気分で、適当に言うだけなので、
器を作っている最中にどばどば水が流し込まれ、何時までたっても
ちゃんとした器が作られないことになってしまうのだ。私が最初に勤めた
お店は曲がりなりにもクラブであったので、私はかなり細かいところまで
一貫した教育をうけることになった。
その店では、
お客様の席についたらまず、
しゃがみ(ボーイのように膝を付く)、
にっこり笑って挨拶。右手を差し出して握手をする。
それからおしぼりを渡す。
席を離れる時には自分のグラスの上にコースターを置いてまた戻ることを
アピールする。
灰皿は吸殻が3本溜まる前に片付ける。
ハンカチは2枚用意して、一枚は常にひざの上、もう一枚でお客様のグラス
についた汗を拭く。
お客様がトイレに立つ際は入り口の前までついていって、そこでおしぼり
を持って出てくるのを待って、一緒に帰る。
お客さんのたばこに火を点けるときは火が直接目に入らないようにする。
等々の細かい決まりがぎっしりだった。最後に挙げた
「たばこの火の点けかた」だけは、何故か皆やり方がバラバラで
ライターのもち手を上に持ってきて火をひっくり返した状態で片手で点ける
人もいれば、左手の人差し指と親指の間から火が出るように構える人もいた。
おっぱいの大きい人は、おっぱいの谷間にライターを挟んでいて、お客さんが
たばこに触った瞬間にさっとライターを出したりしていて、お客さんの中には、
ただおっぱいに視線を走らせたいだけのためにスパスパ連続でたばこを
吸っている人もいて、煙くて煙くて大変迷惑だった。
貧乳のわたしにはもちろんそんなことできない。
お客さんにどうしてもやってみろと言われて、ブラジャーにひっかけ
ようとしたら、失敗して、そのまま洋服を通過してスカートの中から
勢いよく飛び出てきてしまったことがあるが、それはそれで受けてたから
いいのかもしれない。
たくさんの女の子がいると、自分の売り方もそれぞれで、私のように
馬鹿なことばかりやったり言ったりして、ボケ路線で責める子も
いれば、あくまで美しさをテーマに清楚なイメージを売りにしている人もいる。
マイペースを売りにしている人もいて、お客に媚を売らない態度が
逆にうけているという子もいた。それじゃ接客でもなんでもないじゃん!
って思うんだけど、様々な女の子がいるように、お客様も様々で、
我儘を言うと喜ぶようなちょっと変態ぎみの人もいる。
ただ、器を生かしてどんどん売れっ子になる子がいる一方、とことん
やる気の無い女ももちろんいる。
彼女には売りもポリシーも、接客もくそも何にもない。
ただやってきて、時間内我慢をして、終わればお金もらって早く帰りたい。
ただそれだけ。
口癖は「私は何やっても食ってけるから、ソープ行ってもいいんだけどさ。」
じゃあ行けよ。ってずっと思ってた。
彼女1人きりの問題なら全然どうでもいいんだけど、私たちは
団体客に集団でつく場合だってある。彼女1人の失礼な態度のせいで、
ホスト役のお客様の顔に泥を塗っちゃうこともあるわけだ。
そう考えるとちょっとした組織でしたね。
私はたぶん、働いてお金を稼ぐという行為そのものがすごく好きな人なので、
どんな仕事にしろ、責任持って、誠心誠意を込めてやっていきたいと思う。
が、今グラフ作成中断してこれを書いていることは、
どうか皆さん黙っていてください。
はい。やります。ちゃんと。