1/3(木)
なんちゃって奈々子ナデシコ今年もよろしく!!
年末に、着物を着てくる約束をしていたので、今日の仕事初めは
美容室で着付けをしてもらい、髪をアップにまとめてもらい
9450円。ママからのお年玉が1万円なので、残りの550円を、車で何度も送って
くれたパパリンにあげて、プラスマイナス0円。なかなかいい新年のスタートだ。
お店では、毎年お正月には、ボトルケースの横に「鏡もち」と「お屠蘇」が飾られ
ご来店のお客様には、升でお屠蘇が振舞われる。
檜のいい香りとぴりっと辛い日本酒。立派なお飾り。
今年も年が明けたのだなあと実感する瞬間。
うちのママは、この近辺のスナックの中では、お店の中の飾りつけには気を遣って
いるほうで、生花もいつも絶やさないようにしているのだが、
お正月用のお花もきれいで素敵だった。
今日は、着物で出勤をするという宣伝をしていたので、
よく知るお客さんが何人も「デジカメ」持参で来てくれた。
伝票にチェックを入れて顔を上げると、目の前に並んで座っていたお客様が
一斉にカメラを構えていて、照れくさい気分が邪魔をして、中途半端な笑顔しか
浮かんでこない。フラッシュが光る中、堂々とニコニコレンズに向かい続けられる
女優さんて凄いと思う。一緒に働いている、もう一人の女の子なんて、全ての
写真を嫌がって視線を送らない。
お客さんが撮った写真は殆ど隠し撮りのようになっている。
「あ!ねえねえ。後姿撮ってもらっていい?HPに載せたいの。」
「いいよ。じゃあ撮ったら、画像化工してメールで送るね」
優しいお客さんに甘えて、ここのプロフィールの欄に載せる写真を撮ってもら
った。
お客さんは、その常連さんたち以外に男女のカップルが一組と、飛び込みでやって
きた若そうな男の子2人組み。
そしてボックスに酔っ払って無理ばかりを強いる彼女を連れた男性客がいた。
カウンターのカップルの男性は前々からお世話になっているお客様のお1人。
「飲め。飲め。」と言われることが判っているので、少し時間をおいてから伺っ
た。いつもなら嬉しい「飲め」コールも、着物では、やはり少し辛い。
一緒にいらしていた女性は、かつて彼の部下をしていて、やはり彼の部下をしてい
た男性と結婚をして、家庭に入ったという女性で、大変気さくな方だった。
「すごく仕事のできる上司だったのよ。いつも決断が早くて。迷わなかったから
こちらもいつも安心して仕事ができたの」
「……。へえ。」
彼がお店に来る時、私たちはいつも下ネタばかりで盛り上がっているので、
マジメに仕事をしている彼の姿が、どうしてもうまく思い浮かばない。
でも、言われてみれば、それはそれでわかるような気がした。
仕事のできる男は、「スナックのお姉ちゃん相手に仕事の話なんてしないものだ」
下ネタの方がよっぽど気が利いている。
彼女は、彼に暫くぶりで会ったしく、饒舌になっている彼の話に一生懸命耳を
傾けて聞いている。私もいつもとは様子の違う彼の話に一生懸命耳を傾けてみるも
途中からはカラオケの音に遮られ、よく聞こえなくなっていった。
着物の苦しさとビールの酔いで、聞き取れない話について行こうと頭まで使うと
本当に具合が悪くなってきたので、申し訳ないとは思ったけれど、その場は
彼女に任せて、初めて来たという2人組みのところに移動をした。
この2人組みのうちの1人は、プロの歌手のように歌がうまく、しかも最近の歌を
たくさん知っているので、彼のオンステージ状態で、カラオケを歌いまくって
いた。私は彼らの前に立って、ただ手拍子を続けるだけで、殆ど会話らしい会話を
しなかったので、自己紹介をし合うこともできず、心残りなことが多かったのだが
「お客さま」が一番したいことは「カラオケ」だったのだから、それを遮って
まで話をすることもできない。
ああ、きっとまた「一見のお客さん」で終わるのだろうな。
と思いつつ、お帰りになる時に、お見送りに行ったところ、
「気さくで楽しいお店だから、今度はもう1人の友達も入れて3人で遊びにくるよ」と微笑んでいた。
気さくで楽しい…私たちは殆ど何もしていなかったのに、楽しいと言ってもらえた。もしかすると、普段、おもしろい・楽しいを意識しすぎてやっている方が
楽しくもおもしろくもないのかもしれない。
そういう作られた面白さよりも、特におもしろいギャグがなくても、なんとなく
明るくて楽しい雰囲気っていうのが、たぶん一番なのだろう。
お客様にとって…
「本気で口説く対象」でない限り、
女の子の個性は生きる必要性がない
のだ。
そう考えると、なんと私は個性が強く、前に飛び出し過ぎていることだろう。
特に面白すぎることも言わないけれど、どんなタイプのお客様とも、やんわら
話ができて、決して嫌われないということが、この商売では一番大事なことなの
かもしれない。それは経営をするママにもよるのだろうけど。
なんてことをぼんやり考えさせられた仕事初め。
デジカメ持参のお客様がもう一名増え、パシャパシャとたくさんのフラッシュが
たかれている。私はそちらに向かってにっこりと微笑み、「艶姿」をとっても
らう。
注目を浴びるのってなんて楽しいんだろう!!
ああ、結局「わたしはわたし」今年も目立ちまくりのマイウェイ!!
歩いて参ります。