フェスシーズンの先駆けとして行われたUDO MUSIC FESTIVALが終わって早2週間。余韻に浸る間もなく日常に引き戻され日々が過ぎていたが、ある程度の時間が経ち、このフェスを冷静に分析出来る時期が来た。基本的にフェスティヴァルというものは、いちロックファンにとってはビッグプレゼントであり、楽しめないはずがない。ただ今回のフェスをひと言でくくるならば、必ずしも素晴らしいフェスではなかったと感じている。非常に残念なことだ。以下は今回のフェスに関する所感である。行った方も行かなかった方も異論反論あると思うがそこはそれ。今後よりよいフェスを創り上げていくために各自思いを巡らせて欲しい。
1.何が一番問題だったのか
いきなりこんなタイトルにしなければならないフェスもどうかと思うが事実だからしゃーない。参加された方は勿論、参加されなかった方もいろいろと今回の惨劇についての噂は耳にしていると思う。ざっとあげてみると ・客入りが酷い・マナーが悪い・HPが酷い・場所が悪い・イヌとヌコがいる・霧が濃くて花火がみえん・飯がまずい・スタッフがアホ。。。等々 若干フェスそのものとは関係ない内容も混ざったが大体このあたりが今回のフェスで気になったところ。特に客入りに関しては責任問題になってるんじゃなかろうかというほど酷かった。MTVステージの観客2、3名とか(23名じゃないですよ)バンドが可哀想だ。WARPEDステージにしたって100名いるかいないかだっただろう。THE VANDALS, PENNYWISE, SOCIAL DISTORTIONが出ているのに、である。大トリで1万に満たないフェスというのも珍しい。KISSもガッカリしただろう。空いている中でゆっくり観られるフェスという考え方も出来る。しかし、今回の観客の少なさはそういうレヴェルではなかった。無理矢理4ステージつくるより、ひとつで良かったのではないかと思った。そんな状況の中全力投球してくれたバンド達には拍手を送りたい。少なくともボクが観ていた中では手を抜いていたバンドはいなかったように思う。それだけに、逆にこちら側が申し訳なくなってしまった。 その他細かいことはキリがないのでやめる。結局何が問題だったかというと、主催者側が、フェスというもの自体を理解していない。ということに集約されるのではないか。ウドーのスタッフは、フジロックやサマソニに行ったことがあるのだろうか。参加者が何を求めているのか分かっていたのだろうか。そのあたりのケアがあまりに出来ていなかった。高揚感を煽られるので個人的にはよくチェックするフェスのHPに関しても、更新頻度、内容共に酷いものだったのも残念だった。 これだけフェスが定着してきた昨今、ビッグネームだけで人を集められるほど甘くない。それを教訓に来年の設定をして欲しい。ボクみたいにビッグネームだけで行っちゃう人ばっかじゃないからね。
一発目にまともに観たのはNUNO BETTENCOURT。言わずと知れた元EXTREMEのギタリストだ。ソロ含めいろいろなバンドを創っては潰し創っては潰ししてたが、今回のDRAMAGODSはお気に入りみたいである。登場してきた時の観客の反応は上々。NUNO自身もリラックスした雰囲気で楽しんでいた。DRAMAGODSの曲中心(だと思います)にプレイしていたが、そこまで熱心ではないボクのような人間はやはりEXTREMEの曲をやるかどうかに興味は尽きる。セットがすすんでいくと耳慣れた曲が出てきた。"Cupid's Dead"だ。更に耳慣れた曲が。。。"Get The Funk Out"。これは驚いた。彼は新しいバンドでやっている限り、過去は過去として封印したいタイプの人間だと思っていたのでこの選曲は嬉しかった。その後アコースティックギターを取り出し弾き始めたのでまさかあの超有名曲もと少し期待したがそこまではやらなかった。いずれにせよ気心の知れた仲間達と好きなことがやれているんだとの印象を持った。
ここからはBack To The Pastタイム。まずはTHE PRETENDERS。音は全く聴いたことがなかったが、ロッカー然としたアルバムジャケからJOAN JETT的な音を想像していた。ぞろぞろと登場しスタート。。。これがユルい。エッジもパワーもなかった。非常に残念。後ろからの観戦だったが、後ろにいるのにノリノリの後ろ姿美人(振り返り婆)。踊りたいなら前行けばいいのにと思いつつ、これもおっさんフェスの醍醐味かと思った。NUNOの時から気になってはいたが、レジャーシートエリアの規制がないため、結構前にいる人でも堂々とシートを広げている。直接は見なかったが最前列で広げた猛者がいたらしい。しかもバンドの演奏中にサンドウィッチを作っていたらしい。魔女に違いない。Witchだけに。0点。
THE VANDALS。ヴェテランの味があるとは知りつつなかなか入っていけていなかった。このチャンスは逃すまいと臨む。ばらばらとメンバーが出てきてライヴスタート。皺がうかがえるメンバーもいつつ、演奏はパンク然としている。特にg.。筋金入りのアホだ(尊敬の念をこめて)。コミカルな動きを交えつつ堅実なプレイをする。曲間のMC。そのg.がギターをメンバーに渡しおもむろにステージ脇へ。メンバーにギターを掲げるよう指示する。何をするのかと思ったら、そのステージ脇からダッシュをしストラップに腕を通すと同時に転倒。。。アホだ。あまりに不条理でシュールだ。そして彼がその跡に発した言葉は今でも忘れない。“JEFF BECKにコレが出来るか!?”。。。これだからパンクは楽しい。人生を謳歌しているのだ。メインストリームに唾を吐き、シリアスを笑う。こういう空間がボクには必要だ。そういう意味でVANDALSはベストを提供してくれた。残念ながらまだまだアホになりきれないボクは後ろ髪を引かれつつそのJEFF BECKを観るために(観客5人程度のMTVステージを横切り)スクウェアステージに向かった。
JEFF BECK。彼が伝説であることに異論のある人間はいないと思う。ただ、彼の良さ判る人間と判らない人間は存在する。そしてボクは完全に後者だった。ギターをプレイしないボクには彼の凄さが理解できない。ボクに残ったのは伝説を目撃した。ただそれだけだった。この会場にいた多くのおっさんにはロックの何たるかを分かっていないと諭されるかもしれないがそれでもいい。ボクには判らなかった。
SOCIAL DISTORTION。かれらもパンクの世界では伝説的な存在だということだけは知っていた。それだけに今回のフェスでの過疎状態はファンでないボクとしても申し訳なく思う。20分押しで始まった彼らのショウ、Mike Nessの存在感を楽しみにしていたが、出てきていきなりの薔薇撒き(バラマキ)。素晴らしい。ゆったりとした曲調の中にも沸々と湧き上がる感情が感じられるというか。2曲しか観られなかったのが残念だったが、大物の貫禄充分だった。
地下通路をくぐり5分ほどでステージへ。ENDEVERAFTERが演奏を開始したところだ。音は全く知らなかったが、ガンズやエアロを意識したメタルバンドであるという情報は得ていた。一聴して技術的に高いレヴェルにあることが分かった。さらに曲もまさにガンズエアロ的なキャッチーな歌メロと適度にヘヴィなリフが混ざった、ボク的にはかなりの確立で好きになっちゃう音だ。昨今、TRIVIUMやらBULLET FOR MY VALENTINEやら将来有望なメタルバンドが出現してきているが、基本的に彼らはハードコア寄りだ。それに比べENDEVERAFTERはもっとハードロック的なアプローチを取っている。この2極体制がひとつの波になれば今後のメタル界も明るい。まぁ分析はいいとして、ホント、アルバムデビューが期待できるバンドであることに間違いはない。ここにきてやっとフェスならではのボーナスをもらった気がした。
そのままスクウェアにとどまり、次のTHE CLICK FIVEを体験。KISSはじめ、多くの大物アーティストのバックアップにより鳴り物入りでデビューしたポップロックバンドだ。個人的にも良質のパワーポップバンドとして注目をしていた。お揃いのスーツに身を包み出てきたメンバーは揃いも揃ってイケメン。“まぁええよどんな音出すんだ、きかしてみ?“と早速アンチイケメンアティテュードで臨んだクズなボクでした。そこででてきた音はなんとVAN HALENの"Jump"!あちゃ~!大好き☆むちゃむちゃ底の浅いボクでした。結局Jumpはイントロだけだったもののライヴ栄えのする曲を散りばめ、新人とは思えない堂々たるステージングだった。“Just The Girl”を聴きたかったのだけど、ボクの永遠のアイドルSebastian Bachを観るために途中でモビリタステージに移動。ちなみにこの頃には霧も最高潮で一寸先は闇でした。アーティストにとっては客が少ないのがばれなくて良かった?なんて言ってはいけません。
SEBASTIAN BACH。彼はボクにとってはアイドルdeath。SKID ROWという伝説的なバンドを脱退してからもメタルアイコンとして布教活動に努めてきた。留学中にVancouverで観た彼のライヴにPANTERAのTシャツを着ていったら彼の目に留まり、ライヴ中に話しかけられたという今後も絶対にありえない貴重な経験をした。彼が今回のフェス参戦を決めたときはAUDIOSLAVEキャンセルを補って余りあると思った。それだけボクにとって彼は特別な存在だ。出来るだけ前に陣取り彼の登場を待つ。一発目はもう8年近くも前になるライヴと同じ"Slave To The Grind"だ。前回のライヴとは違うが強力なバンドを率いて彼が登場した。顔が赤く酔っ払っているようにも見える、体も前回よりは太ったようにも見える。ただ彼のアクション、エネルギーは前回といささかも変わりない。年齢による衰えは確かに見えてしまった。必死さが見えてしまった。だからなんだというのだ。彼はいつの時も全身全霊でエンターテイナーとしての役割を果たしているんだ。"Youth Gone Wild"に入る前のじらし方も前回と全く変わっていない。それでもいいと思った。評価が甘甘なのを許して欲しいが彼の存在は全てのメタルファンを安心させるのだ。今回披露した3曲の新曲はいずれも強力なものだった。早く第一線に復帰して欲しい。みんなが待っていると思う。良いライヴだった。ちなみに後で気付いたがボクの声はこのときに潰れました。
終了後は今回の出演者の中で話題性は最もあるであろうALICE IN CHAINSを観に移動。この頃霧は更に酷くなっていた。個人的にはあまり入れ込んでいたバンドではなかったので興味本位という部分が大きかった。そういう点では彼らは全く期待を裏切らないステージだった。ただそれ以上でも以下でもなかったというか。ボクをステージ前に引きつけるまでのマジックは起こらなかったのでGODSMACKを観るためにスクウェアへ移動(その後Sebastian Bachが飛び入りしたことを知り少し後悔した。どこまでもハイパーな男だ2)。
アメリカでは1,000万枚以上のセールスを誇るモンスターGODSMACK。日本での評価はまだそれに追いついてはいない。個人的にも彼らの存在はいちヘヴィロックバンドという認識だった。しかし最新作IVを聴き、彼らの底力の一端をしれた気がした。METALLICAがRoad, Reloadの方向性がより突き詰めていけていれば、このような音楽性になったのだろうと感じる。そういう点で彼らはMETALLICAをも上回っているのだ。そんな彼ら、ただのスタジオバンドでないことを確認するためにも注目のステージだった。この頃には霧は本日最高潮、雨も降り出し、個人的にはだんだんヤケクソ感が漂ってきた。当然ビールの量も増える。そしてそんな霧の中彼らが登場。奏でる音は相当ヘヴィだ。このバンドは何はなくともvo.のSullyありきのバンドだが、彼もその意識が当然あるのであろう。左右と中央にマイクがセットされていたが、彼はそれぞれのマイクに等しく移動し歌う。左右のファンには嬉しい彼のスタイルだ。曲間、"Come on, OSAKA"と言った気がしたのだが彼も何事もなかったかのように演奏を続けたので、聞き間違いだろうと思っていたらまた"Hello Osaka"と今度はハッキリと言い、気付いた彼が慌てて"Sorry Tokyo"と言い直すというハプニング(実際は富士ですけど、まぁこれはサマソニでも同じだし)があった。彼曰く“移動ばかりで混乱した”だそうだ。そのあとすぐ“でもこの時点で大阪よりは盛りあがってるぜ!”と、フォローを入れる。普段なら"ケッ!お世辞言いやがってと思ってしまうが、今回の惨状から判断するに大阪は本当に酷い客入りだったのかもしれないなどと思ってしまう。それはさておき、10曲程度のセットだったが彼らのモンスターたる所以は十分理解出来た。曲を追う毎によりヘヴィに、より激しくなっていった。特に途中で入れたリフが激しく絡み合うジャムは圧巻。彼らが立派な音楽集団であることも証明したと思う。サマソニでDEFTONESの前あたりに入っていれば見事にはまったと思うけどね。
そしてついに大トリKISSの登場だ。近い。これは近い。ステージから10メートルぐらいしかないのではないか。単独をこの距離で観ようと思ったら死に物狂いでチケ争奪戦をしなけりゃいけないだろう。更に今回のお得ポイントとしてはステージチェンジが観られたということ。普段なら既に組上がっているステージが、今回はフェスということで始めから組み上げていかないといけない。アホみたいにデカイスピーカーが天高く積まれていく様は爽快でした。かなりの人数が作業に従事している。皆インカムマイクをつけている。やはりあれだけの仕掛けを繰り出すには緻密な計算と、技術が必要なのだと感じた。その作業中真上を見ると渡りロープが。そしてその先には小さなステージとマイクが。こ、これは、Paul用のステージではないかそしてステージ上を見上げるとそこにもステージが。こ、これはGene用のステージではないか。事前情報で知ってはいたが、この時点で今回のKISSはまさにフルスケールのショウであることを確信する。15分ほど押しただろうか。BGMが止まり、不穏な音が。当然期待するのは名ゼリフ“オーラーイふ~じ~!ゆぅうぉんざべすと、ゆぅがっざべすと”のくだりだ。来るか来るか、胸が高鳴る。ん?来ない?あれ、メンバー出てきた。Paulが何か言ってる。曲が始まっちゃったよ。。。マイクの調子が悪いのかとも思ったがどうやら今回はあのセリフを言わずに始めたらしい。え“~。更にもうひとつボクをガッカリさせたのが音。異常なまでに小さい。あんだけ積んでるスピーカーはハリボテかってくらい小さい。今まででも結構経験あるけど、前座よりトリの方の音が悪いってのは何でかね。Paul Rodgersまではいい音出してたのに。この音の小ささは結局最後まで気になった。一発目の曲が"Detroit Rock City"だっただけに更に残念。ま、それは別としてGene, Paul, (Tommy, Eric)が目の前にいるという事実。これは何物にも代え難い。別世界の人間が少しでも近くなった。そんな気がした。セットリストに関しては事前に情報を得ていたのでサプライズはなかったが、定番とは言えやる日とやらない日があった"Strutter"をやってくれたのが嬉しかった。爆発や火柱は要所要所で上がる。今までは遠かったが為に音と光がズレていたが、この距離では当然ながら爆発音がズシンと来る、火柱も熱を感じる。まさにエンターテインメントだ!今回でKISSは4回目、海外での観戦経験もあるので仕掛けは知っている。ただ、今回観る仕掛けはあまりにリアルだ。リアルというのは、仕掛けを仕掛けとして観ることが出来るということだ。今まではもっと物理的距離以上に心理的距離があった。今回は全てをリアルに体験することが出来ている。例えばGeneの血吐きの後のジャンプした空中ステージのマイクが安定しておらず、Geneが口元に寄せるたびにツーと向こうに動いてしまったりしたコト。例えばPaulがレールを伝わり別ステージで歌い始めたが、その輪がPaulが戻る前に動いてしまい、しばらくPaulが戻れなくなってしまったりしたコト。例えば大盛り上がりでドラムライザーがせり上がり、左右から花火がグルグルと回り始めるのだが右側の花火が全く回転しなかったりしたコト。重箱の隅をつついているわけではない、そういうミスのひとつひとつを感じられたことが逆に嬉しかった。彼らも人の子だと思えた。今回の公演、他の場所ではどうであったか分からないが、この日のPaulは明らかに調子がおかしかった。声もあまり出ていなかったし、”Black Diamond”のアカペラパートをいきなり歌い直したりしていた。きっと今回の客入りに落胆したのではないか。そう考えると申し訳ない気持ちになる。あとはTommyの地味さは想像以上だったことと、Ericの歌が下手だった。そう考えるとGeneの堂々たるステージングはこの距離で見ても大迫力だ。King of Rock n’ Rollerと呼ぶしかない。 そして最後は当然ながら"Rock N’ Roll All Night"。飛び出した紙吹雪の量もハンパじゃない。何トンのレヴェルらしい。スモークと紙吹雪とで彼らが見えなくなる。気が付くと両端のライザーでGeneとTommyが高い位置まで上がっている。そしてPaulのギター破壊。観客を魅了することに全てをかけているこの瞬間は絶対に忘れることはないだろう。目の前の光があまりに強烈なだけに、こんな光景はもう二度と見られないと思った。彼らがもう体力的に限界に来ているだろうコトを感じてしまったという意味と、この距離で見られたという意味の両面からそう思った。こんな体験をさせてくれるのは今までもこれからもKISSしかいないだろう。日常の不満やら怒りやらを全部吹っ飛ばしてしまえる瞬間がこのロックンロールの中にあり、この紙吹雪と花火の競演の中にあった。We love KISS, you are the BEST!! え?終演後の花火?第二次イラク攻撃にしか見えなかったよ。昨日の状況を知ってたからさっさと車に戻ったよ。KISSのあとにそんなことをやって誰が喜ぶというんだ? KISSare: vo/g.Paul Stanleyvo/b.Gene Simmonsg.Tommy Thayerdr.Eric Singer