さて今回読んだ号(10月号)の浅田次郎の連載エッセイは 『ペンネーム』
というお題であった。
彼の名前浅田次郎というのがペンネームであって、それについて語っている。
自身が著名になることによってこのペンネームが定着するまでのエピソードや
本名を使わないことのさみしさなどをおもしろおかしく書いているのだが、
わたしが最も惹かれたのはそれらの中になんとなしに書かれた彼の多彩さである。
この多彩(ある時は「多才」)さというのにわたしはとことん弱い。
彼の作品は 『壬生義士伝』のさわりしか読んでいない
わたしなのに…(でも映画は見たぞ)。
歴史作家というわけではないというのは知っていたが、
歴史作家が書いたといってもおかしくない出来だと思う。
彼の文章によれば、雑誌のライター時代は
「インタヴューでも書評でも、風俗ルポでも裁判傍聴記でも
競馬の予想でも何でも書」いた
んだそうである。
それからは極道小説を書き、『鉄道員(ぽっぽや)』のような日本中を泣かせる小説を書き、
歴史モノまでじゃんじゃん書いてしまうというのだからすごい人だ。
そして今友人に借りて読み始めた、ラスベガスが舞台の 『オー・マイ・ガアッ!』
という小説は、
それらのいずれとも異なるジャンルのものである。
驚かずにはいられまい。
ちょうど今日また別の友人に薦められた 『椿山課長の七日間』
も
きっとどれにも当てはまらないのだろう。
同じ才能を持つ作家として 宮部みゆき
も尊敬しているのだが、いい勝負かもしれない。
JAL機内誌の浅田次郎連載エッセイ、『つばさよつばさ』はいつまでも続いて欲しいと思う。
(2005年12月17日)


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