扉の向こうへ・・・4

次の日の朝、空鈴は、林香と海渡に昨日の夜のことを話しました。そして、あの声を思い出しました。「海渡がいないと感じが違う・・・」
そして林香の言葉を思い出しました。「そうね。海渡がいないとなんだか感じが違うわね。」空鈴はビクッとしました。「まさか、じゃああのときの声は、扉を開けるとはぐれてしまうっていうことだったんじゃ・・・。」と空鈴は思いました。
三人で明日も開けようと約束した、でも開けたらはぐれてしまうかもしれない。そんな不安がこみ上げてきます。「どうしたの空鈴?そんな顔して。大丈夫?」
「そろそろ扉を開けようよ。」空鈴はどうしたらいいのか分からなくなりました。結局、行くことになってしまいました。
「じゃあ開けるよ。一、二の、三、ハイ!」海渡が音頭をとり、一気に扉を開けました。
ものすごい光が出ました。三人で手をつないでいましたが、急に三人の手が離れ、空鈴と林香と海渡はバラバラにはぐれてしまいました。
しばらくして目をあけると、そこはどこかの真っ白な建物の廊下(ろうか)でした。「ここはどこだろう?」来たことがあるような、ないようなです。空鈴はちらっと後ろを見てから前へ進みました。しばらく歩いていくと、完璧に真っ白な扉がありました。そっと開けると中はやっぱり白い部屋でした。そこには白いテーブルと白いカーテンと窓があります。「ほんとにここはどこだ?」そのとき、前に、スーッとあの島で見た二人組の男の人が現れました。「思い出しましたか?」
「ここがどこなのか」
「この建物が何か。 わかりましたか?」
空鈴はどういうことなのかわからず、黙っていました。
「わからないのですね。」
「なら、見せてあげましょう。」すると二人は何かを言い始めました。「今から過去へ、タイムス・・・、あれ?なんだっけ?」
「タイムスリップ!」
「あぁ、そうか。・・・今から過去へ、タイムスリップ!」
何を言い出すかと思ったら、タイムスリップでした。空鈴は、キュッとどこかに吸い込まれて渦の中をワープしました。しばらくすると、誰もいない静まりかえった島にいました。空鈴は悲しくなりました。小屋の中に入ってみました。そしてホッとしました。海渡と林香がいるのです。「あれ?」と思いました。でも何かが違います。二人とも小さいのです。しかも林香の方は、ぐたぐたなのです。「えぇ!?」なんと自分が小屋で寝ているのです。
これには空鈴もびっくりしました。ジーッと立っていると、後ろから急に男の人が二人来て言いました。
「あなたが見た人たちの中に子供たちが四人いました。」
空鈴はあのとき、扉の向こうで悪口を言い合っていた人たちを思い出しました。あの中に子供が四人いたらしいのです。「海渡と林香は虐待(ぎゃくたい)でこの島に行き着いた。つまり、この島に逃げてきたということですね。あなたは生まれた頃からご飯ももらえず、最後にはこの島に捨てられたのです。それと同時に地下が掘(ほ)られたのです。地下を作る計画は突然打ち切りとなったのです。」
もう一人の男の人が言いました。「その通り、そしてあなたたち三人、あなたと林香と海渡が地下にラクガキをしたから、地下の壁に白い点々があったのです。」
空鈴は思いました。「そうだったのか・・・。待てよ。それならなんで僕たちはそのラクガキのことを覚えていないんだ?」すると男の人が同時に、「あ。」と言いました。そしてその一人が「そうでした。忘れていました。どうして覚えていないのか。それは、この時代で言うとつい昨日のことです。この島にはいろいろなものがあり、とても楽しいことばかりでした。そして、旧の見たこともない魚が現れたのです。大きく、キラキラとした魚。その目を見てからすべて忘れてしまったのです。」
空鈴は男の人二人にまだまだ聞きたいことがあったのですが、もうそこまで聞いたら、ちょっとショックでした。「それではもうよろしいでしょうか。」そう言うとまた一人が
「後は自分で分かってもらえればいいです。」と言いました。

----この続きは「物語 扉の向こうへ5」でお楽しみください。----


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