両方とも劇場公開で見ました。
 私は実に正統派だと思いました。「ボウリング」で、ライフル協会会長のチャールトン・へストンにインタビューするところでもそうだし、コンビニから銃弾を撤去させたり。そして極めつけは、カナダとの比較。ムーアが、「自分の驚き」を前面に出しているところに好感を持ちました。
 上から説教垂れている感じではない。

 「911」は、軍は貧しいものを構造的に必要としているという事を追求しています。ムーアは安全地帯から批判していない。最前線で戦わざるを得ない兵への共感があればこそ、ムーアのもとへ、実名と部隊名を名乗った告発のメールが来たのだと思います。
 このメール集は本になっていますが、いのちを的にして戦っている兵士たちの生の声が出ています。 (2005.05.12 22:09:38)

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カテゴリ: 映画の話
去年の今ごろ、CSのムービープラスでカンヌ映画祭を独占生中継していて、夜更かしして授賞式の模様を見ていました。
(「誰も知らない」で柳楽優弥くんが最優秀主演男優賞を獲ったときのことです)

審査委員長のクエンティン・タランティーノが、「パルム・ドールは『華氏911』!」と発表したときは驚きました。映画祭の開催地が、最後までイラク開戦に反対の立場をとり続けたフランスということもあって、少し政治的な思惑もあるのかな?と勘繰ったりして…

でも、昨日初めてWOWOWでこの映画を見て、とても心をゆさぶられました。ドキュメンタリーとしても上質だし、「地獄の黙示録」や「ディア・ハンター」を見たときの衝撃を思い出しました。
今の時代に「居合わせた」人には一見の価値がある映画だと思います。

この映画の製作を通して、マイケル・ムーアが言いたかったこと、問いたかったことは

「9・11で、アフガニスタンで、イラクで、死んでいったたくさんの人々は、なぜ、何のために死ななければならなかったのか?」

この一語に尽きるのではないかという気がしました。

あっけなく失われていった一人ひとりの命、将来、人間としての尊厳…


発売されているDVDの紹介コメントを読むと「痛快なブッシュ批判とアンチ戦争を唱えるムーア節炸裂!」と書いてあるのですが、そして確かにその表現は間違っていないのですが…

監督の問いかけは「痛快」なんて言葉で表すにはあまりにも具体的で、深い哀しみと怒りに満ちた真面目で根源的なものでした。
華氏911 コレクターズ・エディション 華氏911 コレクターズ・エディション

映画の終盤、ドキュメンタリーのある主要な登場人物が(どういう立場の人かは、これからご覧になる方のために伏せておきます)ある場所で
「人々が、こんなに何も知らないなんて。私もそうだった。」
と、泣き崩れる場面が映し出されます。

思えばこの数年間、「9.11テロ→アフガン空爆→イラク戦争」という流れを見ていて、
「そもそも、ビンラーディンって人の存在はどこへ行っちゃったのよ?」
…という疑問を始め、(なんだか、ヘンだなぁ)と感じることはいくつもあった。
それなのに、突き詰めて考えることもしないで、どこか他人事と思っていたこれまでの自分に、その言葉の響きはとても重かったです。
涙をこらえることが出来ませんでした。

この映画は、あくまでも監督の立場から撮られた映画で、ブッシュ大統領の姿をはじめ、映像は巧みに編集されることによって、彼の主張を伝えるための演出にはめこまれています。


今、新たにイラクで日本人の身柄が拘束されたというニュースが伝わっています。
国と国とのあいだでは、すでに「終わった」ことになっている戦争が、民間の警備会社とテロリストにそのまま引き継がれているような印象です。
そして、この映画が全米で公開され大反響を巻き起こした後で、ブッシュ大統領は再選を果たしました。

うっかりしていると、私たちはほんの一握りの人間によって簡単にあざむかれてしまう。そうならないためには、「本当は何が行われているのか」を知ること、それをあきらめてはいけないんだと思います。

【日本におけるムーアの出世作、「ボウリング・フォー・コロンバイン」も名作です】
「華氏911」「ボウリング・フォー・コロンバイン」マイケル・ムーア・ツインパック(初回限定生... 「華氏911」「ボウリング・フォー・コロンバイン」マイケル・ムーア・ツインパック

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最終更新日  2005.05.12 18:26:40
コメント(14) | コメントを書く


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Re:知ることをあきらめたくない~「華氏911」を見た(05/12)  
紫0204  さん
ボウリング・フォー・コロンバインを見て絶対に華氏911は見ようと思いつつ、まだ見ていません。今週末に行けたらレンタルDVDはこれに決定です!

「うっかりしていると、私たちはほんの一握りの人間によって簡単にあざむかれてしまう。そうならないためには、「本当は何が行われているのか」を知ること、それをあきらめてはいけないんだと思います。」

本当に私もそう思います。
ある方のサイトへも書き込んだことがありますが、主人が自然保護の仕事をしているので諫早やその他の公共事業の現場の現実や住人の苦労など、色んな話を聴くので国内の事だけでも一体どうなっているの?という事が多すぎて疲れてしまう事があります。
どの角度で物事を見れば良いのか悩むこともしばしば。多すぎるほどの情報もいかに偏っているかという事も踏まえて冷静に見極め判断できる人間になりたいものです。

(2005.05.12 19:00:02)

Re:知ることをあきらめたくない~「華氏911」を見た(05/12)  
TBありがとうございました。
私もしようかと思ったんですが、できません・・・
なにはともあれ
「知ることをあきらめたくない」ってイイ言葉ですね!
知ることで、なにか力になれるのかと言ったらそんなことはできないけど、世界中の人が知るってことが力になるんだと思います。
そう信じたい。

フセインはイラクの石油をEUと取引しようとしたんですよね、確か。
それを許すと今まで石油市場を牛耳ってきたアメリカとしては競争相手ができてしまう。
だからフセインを叩く必要があった。
理由なんて何でも良かったんですよね。
だって、破壊兵器だの核だのって北朝鮮がこんなにアピールしてるのに「対話で」解決しようとしてる理由って・・・
お金かけて(軍を出して攻撃)金成日政権を潰したところで見返りがない。
ウマミがなんにもないからですよね。
わっかりやすぅ~い。
アメリカは世界の警察だなんて豪語してフセイン政権潰したくせにね。 (2005.05.12 19:16:47)

Re:知ることをあきらめたくない~「華氏911」を見た(05/12)  
mayao5  さん
『華氏911』は観ていないのです。観なければいけない!と思いつつ…。目を背けてはいけませんね。この作品、賛否両論でしたよね。ムーア監督の、単なるブッシュ批判!とかなんとか。ムーア監督は典型的なプアホワイトであるから(何かで読んだのですが)…と。そんな単純な作品ではないことは分かっていたのですが…。911は世界を変えました。私も観てみます。 (2005.05.12 19:19:54)

紫0204さん  
サリィ斉藤  さん
紫0204さん

諫早の干拓事業に関しては、TVで深夜のドキュメンタリーを見たことがありました。自然を壊すな、海を返せと叫んでしまうのは簡単ですが、海を失った猟師さん達が干拓工事で生計を立てている事実もあるのですよね。
ご主人様のお仕事は、今の時代に最も必要とされているすばらしい事業だと思います。

>どの角度で物事を見れば良いのか悩むこともしばしば。多すぎるほどの情報もいかに偏っているかという事も踏まえて冷静に見極め判断できる人間になりたいものです。

私も本当にそう思います!

60年前の戦争から、私達の祖父母の世代が犠牲をはらって伝えてくれた苦い教訓もありますね。

見たくない悲惨な現実には、ついフタをしてしまいたくなります。でも、そのツケを払わされるときになって泣き叫んでも、後戻りは出来ないのですよね… (2005.05.12 21:09:31)

ご訪問&コメントありがとうございました  
サリィ斉藤  さん
シナモンヤミーさん

こちらこそ、ご訪問ありがとうございます。

>知ることで、なにか力になれるのかと言ったらそんなことはできないけど、世界中の人が知るってことが力になるんだと思います。
>そう信じたい。

私も同感です。
日々のニュースは膨大で、情報の量も玉石混交ですさまじいものがありますが、流されず踊らされず、「何か、おかしいんじゃない?」という違和感を見逃さないようにしたいものです。北朝鮮を巡るアメリカの対応も、おっしゃる通り「???」ですよね。

>理由なんて何でも良かったんですよね。

イラク開戦が決まったときの会見、ラムズフェルド国務長官の嬉しそうな顔が忘れられません。
(あぁ、念願がかなった人の笑顔だ…)
と、背筋が寒くなる思いがしたことを覚えています。 (2005.05.12 21:16:48)

mayao5さん  
サリィ斉藤  さん
mayao5さん

>ムーア監督の、単なるブッシュ批判!とかなんとか。ムーア監督は典型的なプアホワイトであるから(何かで読んだのですが)…と。

「富める者」と「貧しい者」が二極化していて、犠牲になるのはいつも貧しい者たちだ…という主張は、この映画でも事実を通して強く訴えられていました。
マイケル・ムーアって、本当にアメリカが好きで、何とかこの国をよくしたい、世界から尊敬される国にしたい…って思っているんじゃないかな?と、「ボウリング…」やこの映画を見て思いました。
何だか、「憂国の志士」とでも言いたくなるような感じです。この後の活動にも注目していきたいですね。 (2005.05.12 21:20:51)

ボウリングから911へ  
まろ0301  さん

Re:ボウリングから911へ(05/12)  
サリィ斉藤  さん
まろ0301さん

> ムーアが、「自分の驚き」を前面に出しているところに好感を持ちました。
> 上から説教垂れている感じではない。

そうなんですよね。
監督自身が歩いて行く道のりが、そのまま見る側の私たちの驚きにもつながる感じがして…パルム・ドール受賞は納得です。

過日の日記で、JR西日本の事故当日のTVメディアの対応について苦々しく思う…というようなことを書いたのですが、ムーアのアプローチはシンプルで明快で、かつ「弱い者に心から寄り添う」という姿勢が素晴らしいと思います。

> このメール集は本になっていますが、いのちを的にして戦っている兵士たちの生の声が出ています。

ぜひ読んでみたいと思います。
そういえば、ベトナム戦争の帰還兵の話をボブ・グリーンがまとめた「ホームカミング」という本もありますね。
アメリカはあの戦争から果たして何かを学んだのでしょうか。 (2005.05.12 22:28:37)

Re:知ることをあきらめたくない~「華氏911」を見た(05/12)  
トラバ、ありがとうございました(私もトラバ頂きました)

>うっかりしていると、私たちはほんの一握りの人間によって簡単にあざむかれてしまう。そうならないためには、「本当は何が行われているのか」を知ること、それをあきらめてはいけないんだと思います。

そうですよね。私もこの映画を見なかったら、今回の戦争でこんなに考えたことはなかったと思います
この映画が公開後もブッシュって再選しちゃったんですね・・・
知りませんでした。なんで再選しちゃったんでしょう
アメリカ人にちょっとガッカリしました

ボウリング・フォー・コロンバインも放送してましたよね
見損ねてました(大泣)
次回は必ず、見ます!! (2005.05.13 14:40:57)

トラックバックありがとうございました  
サリィ斉藤  さん
さくら もちよさん

>トラバ、ありがとうございました(私もトラバ頂きました)

こちらこそ、早速ご訪問いただいてありがとうございます。

>この映画が公開後もブッシュって再選しちゃったんですね・・・
>知りませんでした。なんで再選しちゃったんでしょう
>アメリカ人にちょっとガッカリしました

宗教的保守派、と言われている層には、ブッシュ大統領への根強い支持があるのだそうです。
選挙戦の結果を受けて、「アメリカ人でいることが恥ずかしい」と発言していたアンチブッシュの人がいましたが…
最初の選挙の時も投票の数え直しでゴタゴタ。いわくつきの運命を背負った大統領なんですよね。
(2005.05.13 15:12:55)

Re:知ることをあきらめたくない~「華氏911」を見た(05/12)  
千佳りん  さん
今でも戦争の傷跡は消えないですよね。
しかも今もまだテロリストによって
戦いは受け継がれていますね。
尊い命が失われる戦争、二度と繰り返したく
ないですね。 (2005.05.13 15:55:06)

千佳りんさん  
サリィ斉藤  さん
千佳りんさん

>尊い命が失われる戦争、二度と繰り返したく
>ないですね。

本当に…残酷なニュースに、私たちは目を背けたり、テレビのチャンネルを変えたりすることが出来ますが、逃げたくても過酷な現実から逃れられない戦禍のただ中の人々のことを思うと、辛いですね。

普通の暮らしをおだやかに楽しむ幸せを、早くイラクの人々の手に返してあげたいです。 (2005.05.13 16:36:31)

Re:知ることをあきらめたくない~「華氏911」を見た(05/12)  
哲0701  さん
この作品は、「ある現象の奥にあるものを知ろうとする姿勢の重要性と物事へのアプローチ」について
教えてくれたと思います。
非常に重要なメッセージがこめられていると思います。
(2005.05.14 20:59:44)

コメントありがとうございました  
サリィ斉藤  さん
哲0701さん

>この作品は、「ある現象の奥にあるものを知ろうとする姿勢の重要性と物事へのアプローチ」について
>教えてくれたと思います。

「アポなし突撃取材」の過激さ?ばかりが強調されがちなムーア氏ですが、その根底にある「真実を知りたい」という姿勢は、決して奇をてらったものではないですよね。
「ロジャー&ミー」など、過去の作品も見てみたいと思いました。 (2005.05.17 19:29:55)

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