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サリィ斉藤

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カテゴリ: 本の話
スポーツニュース等で、プロ野球のダルビッシュ投手の名前を耳にすると、反射的に私の脳裏には、ハヤカワ・ミステリの分厚い装丁が浮かんでしまう。

なぜ、そんな発想の癖がついてしまったかといえば、大好きなイギリスの推理作家、P・D・ジェイムズの「ダルグリッシュ警視シリーズ」の長年のファンだから(笑)。

ロンドン警視庁のエリート警視で、詩人でもあり、頭脳明晰、品行方正なダルグリッシュが、部下と協力しながら難事件を解決する…
シリーズに共通しているのは、上流階級の人々がからんだ、限定された人間関係の中で殺人が起こり、怪しい数人の人物たちから犯人当てが行われる「フー・ダニット」もの、だということ。

しかも、殺された被害者、容疑者たちの一人ひとり、そして捜査にあたるダルグリッシュや同僚の刑事たちに至るまでの人物描写は、まるで細密画のようです。
どんなフラットに住み、どんな家具を選び、どんなお茶の飲み方をしてどんな服を着るか。
多くの場合、殺人事件が起きるまでに、登場人物の紹介で小説の1/4近くが費やされるという…

読む側としては、読めば読むほど「どいつもこいつも怪しい」と、どんどん事件の中にのめり込んでしまうわけで(笑)新作が出るたびに、(あぁ、またあの楽しみが味わえる)…と、ワクワクしてしまうのです。

しかし、クリスティやセイヤーズの後継者と言われ「ミステリの新女王」との称号を戴いてきたジェイムズ女史。実は大正9年生まれ(!!)、御年87歳。
殺人展示室 」のエンディングを読んで、もしかしたらもう、これがシリーズ最後かも…と思っていたのですが、今年、新作が邦訳されました。

灯台

今回の舞台は、VIP専用の保養地となった小さな島。少数の滞在客と従業員しかいない沖合の孤島で起きた殺人事件…
…って、何とまぁ「王道」なお膳立て!と、本格ミステリファンとしては頬が緩んでしまいました。

人が殺し殺される、という出来事は、例え犯人がわかって事件が解決したからと言って、めでたしめでたしと明るく幕を下ろせるようなものでなく、関わったすべての人の人生を変えてしまう。
その、後味の苦さも含めて、娯楽小説でありながら「人間の物語を読んだ」という満足感を毎回与えてくれます。

鮮やかなトリックなどは出てこないけれど、「誰が」「なぜ」「このやり方で」殺したか、この事実を地道に追い求めていく捜査の過程は十分にスリリング。

ただ、以前に比べて記憶力が落ちているせいか、のんびり読んでいては、長い物語の始めの方に出てきた微妙な伏線は忘れてしまうという危険性も…?(作者はお元気なのに、読者は情けない!)

イギリスには、トランジットのヒースロー空港以外行ったことのない私ですが、21世紀になっても厳然と「階級」が存在し、そのことがいかに人々の考え方に影響を与えているかという点には驚かされます。

貧しい生い立ちから努力をもって這い上がってきた、ダルグリッシュの部下のケイトという女性刑事が、シリーズが進むごとに成長していく様子を知るのも楽しみの一つ。

とにかく「重厚長大」で、読み始めたら家事は二の次、となるミステリですが、秋の夜長にはうってつけとも言えます。
今回の「灯台」も面白かったですが、シリーズの中では、名門出版社を舞台とした「 原罪

今度こそ、もうシリーズの大団円なのかも?と思えなくもないですが、ファンとしては、ジェイムズ女史の健康とご長寿を願い、つい新作を期待してしまうのでした…





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最終更新日  2007.09.27 09:09:27
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