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サリィ斉藤

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2011.01.20
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カテゴリ: 本の話
少し前から就いた仕事で、数年ぶりの電車通勤をしています。


…とはいえ、読みごたえのあるものにどっぷり浸るには中途半端な時間なので、区切りのつけやすい、短い随筆や日記の類を選んでバッグに入れるようになりました。

池波正太郎の銀座日記改版

1983年から、亡くなる2ケ月前の1990年まで、雑誌に連載された作家の日記をまとめたもの。
グルメで知られた作家だけあって、食事の記録を見ているだけで、お腹が鳴りそう(笑)

…ただ最後の方で、食欲や気力が衰えていく様子は、その後に死が待っていたのだと知りながら読むと切ないものがありますが…中村吉右衛門主演でドラマ化した「鬼平犯科帳」は、最初の年の放送を最終回までご覧になって、満足気な感想が書かれていました。

この日記、私がちょうど、中学生から大学生になった時期にかぶっていて、何より懐かしかったのが、頻繁に登場する封切映画のタイトルです。

あの渋い作風からは想像できないような、ハリウッド・アクションムービーがお気に入りの様子なのが意外でした(「エイリアン2」とか「ダイ・ハード」とか激賞しておられます)。

当時の私、お小遣いで映画館通いを覚えて、ぴあで話題作をチェックしてはミニシアターに足を運んでいたものでした。今や、東京ではそんな思い出の映画館が次々と閉まっているそうですが…

「眺めのいい部屋」「ダウン・バイ・ロー」「バベットの晩餐会」「真夏の夜のジャズ」…書き出したらキリがない、柔らかかった私の心に強烈に響いた名作たち。映画のタイトルが出てくる度に、あの頃の街の風景が鮮やかに思い起こされて、懐かしく楽しい読書でした。
今度銀座に行ったら、久しぶりに煉瓦亭のメンチカツを食べたいなぁ…



◇幸田文  雀の手帖

こちらは見開き2ページ分にまとめられた短い随筆。新聞紙上に、1月末から5月の初めまでの100日間連載されたものが1冊にまとまっています。

せっかちな自分の気性を「万事にとぱすぱしている」とか、丁寧でない暮らしぶりを「ごろっちゃら乱雑に住んできた」とか、独特な下町っ子の言葉づかいで、相変わらず鋭い観察眼を発揮していて、目からウロコが落ちます。

人生の後半戦に入ってから、物書きを生業にした作者。
生まれ持った感性で、目ざとく様々なことをアンテナにキャッチしてしまう自分の心を、どう正確に文章で伝えるか。
天分にも恵まれていたとは思いますが、ご本人も地道な努力を怠らなかったのだなぁ…と感じました。




電車の中で、本や雑誌より携帯を手にする人の割合が圧倒的に多い時代ですが、「通勤読書」もなかなか良いものですね。





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最終更新日  2011.01.20 19:54:18
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