ミステリの部屋

< 新しい記事

新着記事一覧(全1108件)

過去の記事 >

2005年11月22日

インディゴの夜：加藤実秋

(6)

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：日本ミステリ（か行作家）

「クラブみたいなハコで、ＤＪやダンサーみたいな男の子が接客してくれるホストクラブがあればいいのに……。」

＜club indigo＞の愉快な仲間達は、第10回創元推理短編賞受賞作「インディゴの夜」　　（『ミステリーズ！vol.02』掲載）で初登場、受賞後第1作は「原色の娘」（『ミステリーズ！vol.04』掲載）です。
今回の単行本には、この2編に加えて、＜club indigo＞の仲間たちが渋谷区長の娘にまつわるスキャンダル処理のため夜の渋谷を奔走する「センター街ＮＰボーイズ」と、兼業オーナーの晶が、殺人事件解決のためにホストの世界の裏側へ潜入するという「夜を駆る者」の、書き下ろし2編が収録されています。

私はホストクラブにもクラブ（ブにアクセント！）にも行ったことがありません。ナンパ師というものも初めて聞きました。（どうやって暮らしているんでしょう？）

ところが、この作品は全く違うものでした。

まず、登場人物たちが実に魅力的です。
＜club indigo＞のオーナーをつとめる女性、高原晶。儲からなくてもいいと思って始めた店が大成功、それでもユニクロと無印良品を着て健康実用書の原稿を書くという生活は変わりません。物語は彼女の視点で語られます。

共同経営者であり大手出版社の編集者、塩谷。

塩谷に忠誠を誓う、謎めいた敏腕マネージャー、憂夜（美形です）。

巨大アフロがトレードマークの気のいい青年、ジョン太。プロのキックボクサーでもある日米ハーフの巨漢、アレックス。ファッションセンス抜群で利発な犬マン。彼等は個性豊かなホストたち。

怖いもの知らずのゲイバーのママ、何かしらつきまとってくる刑事の豆柴。

それぞれのキャラクターの描き方が生き生きとしているので、映像として目に浮かんできます。
彼等が事件解決のため、渋谷の街を縦横無尽に走り回るところなど、すぐにでもテレビドラマ化できそうです。
アクションシーンもあるし、かわいい男の子達も沢山出てくるし、きっと面白いものになるでしょう。

事件について調べるために悪徳クラブへ潜入する、なんていうのは余りにお話としてできすぎていて、ドラマより漫画になりそうな所もありますが……。

ミステリフロンティアの一冊で、やはりこれまで読んだ作品のようにミステリ色はうすいです。
登場人物にいい人が多いので、ちょっとほっとするし、事件の結果は落ち着くべきところに落ち着くので、読後感はすっきりします。
このホスト探偵団の活躍する話は、まだまだ続編が読みたいです。
これで終わるのはもったいないという気がするし、明かされていない謎もありますから。