ミステリの部屋

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2006年05月10日

比類なきジーヴス：P・G・ウッドハウス

(8)

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：海外ミステリ（ア行作家）

完璧な執事……昔、探偵紹介みたいな本で知った頃には手に入らない作品でしたが、ジーヴスを表現したこの言葉が忘れられませんでした。

欧米では「20世紀最大のユーモア小説家」と言われる彼は、没後四半世紀以上を経ても人気は衰えることなく、現に流通している刊本だけでも300点に近いのです。
戦前は、「新青年」の人気作家の一人だったということで、邦訳された作品の数は決して少なくないらしい。
最近、戦後ほとんど訳されずじまいの幻の巨匠ウッドハウスの本が、出版され始めました。
今こそウッドハウス復権の時がきたのだと言ってよさそうです。

「比類なきジーヴス」は、国書刊行会ウッドハウスコレクションの第一弾です。
その後「よしきたジーヴス」「それゆけ、ジーヴス」「ウースター家の掟」「でかした、ジーヴス」（０６年９月刊行予定）と続きます。
さらに「ジーヴズの事件簿」は文芸春秋から出されています。

それらの関係は donmaboさんの日記

イギリス貴族のバーティーは、アガサ伯母さんに頭が上がらないで無茶な要求をされたり、悪友・ビンゴの厄介ごと（恋愛沙汰）にいつも巻き込まれてしまいます。
それをうまく解決するのは執事のジーヴスです。

バーティーは何とか主人としての威厳を保とうとするのですが、いつも慇懃なジーヴスに、結局頭があがりません。
ジーヴスはバーティの服装のセンスにはきびしく、バーティーが健闘むなしくジーヴスに従うことになる様子は、情けなくおかしいのです。
バーティーだってワーズワースやテニスンの詩を引用するし、頭は悪くはないのでしょうが、働かずに遊んで食べていけると、色んな面で甘くなってしまうようです。

もちろん、ジーブスは執事の普通の業務もバッチリです。

目覚めた2分後に、テレパシーのように感知して紅茶を持って、ふんわり部屋に入ってくる執事……素晴らしいですね。うらやましいですね。

この作品は、短編を集めて連作長編のようにしてありますが、ほとんどが惚れっぽいビンゴの恋にまつわる騒動が描かれており、愛すべきワンパターンとなっています。
それがまた心地よさを醸し出しているようにも感じられます。

ジーヴスの言葉はいつも丁寧で、変わりません。
ところが、「全くその通りでございます。」とジーヴスが言うだけで、圧迫感を感じさせることもできます。

そういえば、彼女とはその後どうなったのでしょうか？

英ユーモア小説の良さが十分味わえる作品でした。