ミステリの部屋

ミステリの部屋

2007年01月30日
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光秀謀反にちらつく秀吉の陰謀。
阿弥陀寺の僧侶が握る秘密の鍵。
そして、主人公・太田牛一が最後につかんだ驚愕の事実とは。
日本史最大の謎に挑んだ本格歴史ミステリー。



あ~、もしかして、それで図書館の予約数がものすごい数になっていたのでしょうか

「信長公記」の作者、太田牛一を主人公に据えた切り口は新鮮でした。

彼は信長の側近でしたが、信長から預かり物をしてすぐに本能寺の変が起きます。
だから信長は生きて登場はしません。

ところが読み終えたあとに残ったのは、残酷な仕打ちも数々あることがわかっても、なお魅力的な信長の姿でした。
もっと信長について知りたい、という思いを抱いたのは太田牛一に影響されたのかもしれません。

信長を心から慕う太田牛一は、秀吉の天下となった時代の中で信長の伝記を書き続け、さらに本能寺の変で亡くなったはずの信長の遺骸が見つかっていないという謎を人生をかけてさぐります。

なかなか渋い語り口だと思ったのですが、作者は1930年生まれ、70歳で作家デビューされたそうです。



その点では、細かい調査をされたことがうかがわれる上で、思いがけない大胆な視点もあり、面白く読めました。

ただ、ミステリーとして読むならば、謎解きはほとんどが後半登場する女性のおかげでできたようなもの。
しかも、その女性がいかにも男に都合の良いように描かれているのが気になりました。

太田牛一の著した『信長公記』は実在しますし、この作品のおかげか現代語訳も最近出されたようです。



歴史好きの人ならば、読み比べて検討してみたくなるんでしょうね。

秀吉が『信長公記』を検閲する、みたいな場面がありますが、そのいきさつを見ていると、歴史とは勝者の作り話だと言う説もうなづけます。

もちろん手書きですから、冊数をふやすには写本するしかないのですが、どれだけ手間がかかることか。そして写し間違いも当然あることでしょう。

歴史が正確に後世に残ることの難しさを感じます。

本当のところはなかなかわからない、だからこそロマンがあるのかもしれませんが。

 信長の棺 : 加藤廣 


秀吉の枷 が出されていますが、『光秀の○』と合わせて三部作になる構想のようです。
三作全て読んだ時に、この作品は完成するのかもしれませんね。







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最終更新日  2007年01月31日 10時12分08秒
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