ミステリの部屋

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2011年03月07日

造花の蜜：連城三紀彦

テーマ：ミステリはお好き？(1498)

カテゴリ：日本ミステリ（や・ら・わ行作家）

その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。
高橋は　開き直ったような落ち着いた声で、「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。
それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。
内容（「BOOK」データベースより）

誘拐、その卑怯な犯罪がこんなに鮮やかな描かれ方をするとは……。

登場人物がみな　どこか怪しい素ぶりをするので、最初から、油断できないと思いながら読みました。

秘密を抱えた人物は　特に怪しいはず、と、先を予想していたのですが、まったく思いもよらない展開に、唖然としました。

ミステリとしての構成のうまさは、『白光』（感想）でわかっていたはずなのに、また見事に騙されたのです。

緻密な構成と、意外な展開、そして浮かんでみる人間ドラマ。
読み終えたときの気分は、素晴らしいマジックを見せられた時のよう。
鮮やかでした。

最後の事件は、まるで後日談のようで、夢のようで、これはこれで面白いのですが、長篇としての満足感が邪魔されたようでちょっと残念。