海の散歩道

【アメリカでの両親との生活】




【アメリカでの両親との生活】



正直、あたしは逃げ場をなくしていた

渡米当時は右も左もわからず父に頼るしかなかった

でも渡米をずっと嫌がっていた継母につきっきりで

ろくに話しすらできなかった




食事も別々の部屋

顔を合わせても、目を合わせることはなかった

毎週月曜日には1週間分のランチ代が

テーブルに無造作に投げられていた

たまに一緒に食事をすれば

こぼしたからとひっぱたかれていた





渡米後も家での仕事は変わらなかった

休みのたびに買い物に行く両親を見送り家の掃除

草刈もあたしの仕事

洗車もあたしの仕事




台所を徹底的に掃除した晩のこと

出された味噌汁を食べた瞬間

今まで噛んだことのないものが口の中に

直感で『虫だ!!』と思い、吐き出した

トイレで指を突っ込み、吐こうとするあたしに

継母『そんなことぐらいで泣きなさんな!!』と罵声を浴びせ

仕事から帰宅した父は『さっさと食事を済ませ!!』と怒鳴る

『娘の心配なんてしないんだ』と改めて知った瞬間だった





長期休暇のたびに旅行に行っていたが

その道中はあたしにとって苦痛以外のなにものでもなかった

会話のない車内

話し掛けても無視する両親

フロリダのDLでは

公衆の面前で父に顔をひっぱたかれた

アメリカ人の目にはどう映っただろうと今でも思もう





2年目のクリスマス

1泊だからとふたりで出掛けていった

置いて行かれた寂しさもあったけど

なんとなくほっとしていた





高校を卒業後

進学しようと必死に勉強する日本人を尻目に

あたしは帰国した


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