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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年09月23日
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フレデリカの店に、彼女の本体、緑の少女、トールが集まっている。
彼女は奥から、そろいの銀色の指輪を出してきた。それはフェンリルが緑の少女に遺した、鎧兜と巨大なハルバート(戦斧)から切り出して加工したものだ。

「あの馬鹿、自分が巨人族だってこと絶対忘れてるのよね……ルースがそのまま使えるわけないじゃないの。つけもの石とか物干しですら無理だから!! ったくあの天然は」

フレデリカが大仰にため息をつく。
ジュエリーケースに並べて収められた指輪は、フェンリルのモチーフになっていた。
羽の生えた狼が緑のエメラルドを背中にのせ、口にはサファイアをくわえている。目はフェンリルの瞳の色だったルビーだ。
じっとそれを眺めたトールが言った。

「この素材の加工はさぞ大変だっただろう。普通なら元の形に再生してしまうはずだ」

「さすがよくわかってるわねアンタ。そおおなのよ、この材料切り出した兜なんか、翌日には元に戻ってたわ。材料として切った部分からはさすがにそのままは再生しないけど、もうもう、これ以上細かい加工ができないのよ!
アタシってホントなんでも出来ちゃうんだけど、でもこの素材の加工、二度とやりたくない!」

お疲れ様、ありがとう、とトールは笑った。もらった指輪を右手の中指にはめる。緑の少女の華奢な指には少々ごつすぎるので、柔らかな素材の紐をつけて首にさげるようになっていた。

しばらくお互いの指輪を見せ合ったりし、その後少女が店の奥にポータルを作る。
虐げられた闇の象徴であったフェンリルの鎧兜とハルバートを、天界のどこからでも見える場所に安置しよう、ということになっていたのだ。

最初いつものサイズでポータルを作り、それでは後の、特にフレデリカとトールがくぐれないことに気がついてかなり大きく作り直す。

「じゃあママは兜だけ持って! あたしはハルバート持つから」

少女は元気よく言った。しかしハルバートも十分巨大なため、持ちあげると後ろにひっくり返りそうになる。

「そのまま持つには重すぎるね。魔法陣でまとめて運ぼう」

トールが笑った。鎧を魔法陣で浮き上がらせ、ハルバートは彼が肩にかつぐ。その慣れた様子に、隣を歩いていたフレデリカがまじまじと見つめて言った。

「それ熟練者の武器っていうけど。アンタも使ってたんでしょ」
「ああ、昔ね」

槍の穂先のついた戦斧を見上げ、銀髪の男はうなずいた。

少女がいつもの神殿を通ってゆくと、花がたくさん咲いている草原の真ん中に、トールの作った白い屋根のある東屋があった。
そこに、ハルバートと甲冑を着ているのと同じ状態になるように組み立てて安置する。

呆然とそれを眺めていると、東屋の上に金色をベースにさまざまな色の混じった光が現れた。
光は彼らの前に降りてきて、ゆらりとフェンリルの姿に変わる。とたんに少女の目には涙があふれ、彼女は号泣しながらフェンリルに抱きついた。

「うわあああああん!」

フェンリルは立て膝になり、よしよし、と大きな身体で包むように少女を抱いた。この腕の中のちいさいものが、とにかく心から愛おしい。
少女は文句やら指輪のことやら、一生懸命に彼に話した。フェンリルはうん、うん、とそれを聞くと、最後にぽつりと言った。

「ごめんね。愛している」

しゃくりあげながら、少女がまた会える?と聞く。

「会えるとも。お前がどんな姿であっても、私にはわかるんだ。じゃあ指きりしよう」

大きな指と小さな指がからめられる。約束をもらって、少女はにっこりと笑った。


その様子を笑顔で見て立ち上がると、フェンリルはトールを振り返った。めずらしく自分から声をかける。

「変わらないな」

かつて共に戦場に立っていたあの日から、本当に変わらない。銀髪の男は苦笑した。

「お前は変わったのかい?」
「どうかな」

軽く肩をすくめ、表情を変えてトールの顔を見る。低い声で続けた。

「お前には、結局なにもかも丸投げになってしまって申し訳ない。負担も相当かかるだろうと思う。でも、俺にはこれしか選べなかった」

すると銀髪の男は、その昔利き腕を平然と彼の口に差し入れたときと同じ、深い青い瞳で微笑んだ。

「かまわないさ。それより私は、お前が初めて自分の意思をもって選択出来た、ということを嬉しく思うよ」

永い永い時を囚人として生き、自由意志を奪われていたフェンリル。
そうして生きてきた友が、初めてたいせつなものの幸せのために選んだことであるならば、かかる負担など何ほどのことがあろう。
元々内包するエネルギーが大きいというのなら、きっとこういうときに使うためにあるのだと思う。

「……続かせてやりたいんだ。俺に、できることなら」

森に立つ大樹のように、陽をあびてフェンリルは言った。そう、はるか昔の元々の彼は、妖精の王のような雰囲気を持つ人だった。

「わかるよ。私も同じさ」

トールが友人の肩をぽんと叩く。

長い長いつながりだった。けれどももう、同じ二人として出会うことはないのかもしれない。

それでも彼らの記憶は残り、想いは続く。
同じひとりを護り続けてきたという消せない強いつながりが、沸きあがる寂しさの裏側に、きちんと形をとどめていた。



















*************

>>【銀の月のものがたり】  目次1  ・  目次 2

>> 登場人物紹介(随時更新)


昼と夜の等しい日。


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最終更新日  2009年09月23日 00時53分44秒
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