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2005.05.08

ハルちゃんと霊と私のおとぼけ一夜物語（後編）

(4)

カテゴリ：自作の絵、詩、物語

７

何につけられてたと思う？　
落ち武者みたいな霊に、やで？　

ほら、あたし、そういうの見えるやん？　けど怖くてよう振りかえらんかったしぃ、振り返ったらなんかされそうな気がしたから、よう見ぃひんかってんけど。
これは、ひとりで帰ったらあかんわ、思って。
ふたりでここ帰って来たんよ？　そやのにあんたは、コーヒー飲みたい、とか言い出して勝手に外に出ていくし。ほんまにひやひやしたんやで？

「ちょっと待ってくれ。。」
「なに？」
「おれ、ひょっとして、ひとりでコーヒー飲みに？」

「。。。」
「うそじゃ、あほぉ。あたしもついていっとうし」

まぁ、昨日そんなことあったから、私、これ、絶対その霊がやったと思うねんけど、せびちゃん、どう思う？

そう聞くので、今度は私が話し出しました。

８

それはちょっと、おれ、そのへんのカンはないからわからんけど。。実はおれにも、いわへんかったこと、あるんよ。　
飲み会の行く前にサークルで買う機材、一緒に見にいったやん？　あのとき、「このビデオ・カメラええよなぁ」言うて見てたのあったやろ？　

そうそう。
店先で、モニターつなげて映り具合が見れるようになってたやつ。

あれ、ハルちゃんとふたりで見てるとき、おれが急に、がぁっ、て後ろを振り向いたの、覚えてる？　

そうそう。それそれ。
いや、そこまで細かく状況を再現してくれんでもええねんけどな。。もう分かったし。。

背はおれの肩くらいしかなかってんけどな。
ザンバラ髪で。
恨みがましい目つきで。
おれらを見とった。

最初は一瞬、子供がおるんか思ってんけど、鎧とかめちゃリアルでさぁ。顔つきも全然現代人ぽくないねんよ。怖すぎたから実体はどんなんか見たろ思って、振り返ってん。そしたらなんもおらんかった。モニターにも、なんもおらんくなった。

９

「なん？」
「なにすんねんよ。。あんたは。。」
「ん？」
「ん？じゃなくて、ごめんなさいって言わんとあかんのんちゃう？」
「なんで？」
「あんたが振り向いたから、あの霊、ついてきよったんとちゃうんかいよぉ？」
「ええっ？？　ハルちゃん、そういう角度で入ってきて、おれのせいにするん？」
「当たり前やん、それ。見えたからって、こっちからはかまわんときよし」
「そんなん、しらんがな」
「しらんですんだら犯罪なくなるやんけ？」
「いや。。なんで振り向くことと犯罪が同列で語られるのか、納得いかんけど？」
「納得いっても殺人は許されんやろが？」

１０

まぁ、そんなこんなで。。
私とハルちゃんの会話には、とりとめなさすぎるし、脱線しすぎるので、途中を割愛しますけれど、いろいろ話し合った結果、しばらくお互い気をつけよう、ということになりました。。

何に気をつけるのか、ということにはふたりとも見当ついてませんでしたが。。

そうなのです。
結局私たちは、なぜ東京タワーの置物が壊れたのかまったく見当がつかなかったのですっ。
落ち武者の霊がなぜ東京タワーの置物を壊したのか、なんて、分かるわけがないですから（いなおりｗ）。
「キミを想うハルヒコの気持ちが残留思念として置物にとどまってて、それがキミを霊から守ったんだっ」
などと言ってみたんですが、即座に真顔で「それはない」と否定されました。
さすがに、どの部分がないというのか（残留思念というものがありえないのか、ハルヒコの想いがありえないのか）は、さすがに聞けませんでした。
でも、ま、とりあえず結論らしいものもでたので私が帰ろうと思いました。ハルちゃんにそう伝えて腰をあげたようとしたら、彼女は言いました。
「なぁ、こんなことあったし、あたしら、しばらく会わんほうがええんかな。。」
つっこんどきました。
「おれらは犯罪者か？　共犯者かっ？」
彼女は笑いました。

私は彼女のカレシの友人。彼女は私の友人のカノジョです。
毎日会ってるわけではないのです。

しかし私が部屋を出ようとしたとき、ハルちゃんは再び私を呼び止めて、こう言ったのです。
「なぁ、せびちゃん。。帰る前にさぁ。。」
「ん？」
「帰る前に。。」
「な、なんやねんっ！！」
「化粧落としていったほうがええんちゃう？」

それははよ言えちゅうねん。。

私は化粧をきれいに落としてもらい、家に帰りました。
その後、これといった不吉なことは起こらず、落ち武者見ることもありませんでした。
私はもう長いこと、心霊体験してません。なんとなく直感的に、なんですが、もう見ることはないような気がしてます。

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