なんちゃって妄想ワールド(War section)10


いや、敵と言ったらいいのだろうか。
その姿を見て、アイは状況が呑み込めずにいた。
「なんで・・・どうしてあなたはここに・・・」
アイは信じられないといった問いを結城に投げかけた。
「私は死ぬ気だったよ。終わりにしたかった。だが無常にもあの男のせいで生き延びた」
あの男。
結城が崖から飛び降りたあと、そのあとを追って崖から身を投げた三宅という存在だった。
「奴は瀕死の私を抱えて、あの体で陸まで泳いだ。そして、辿り着いた場所が今いる軍基地の敷地内だった」
アイに過去の事を話し始めるモノトーンと名乗る結城。
「基地にいた兵士に助けられ、そしてそのまま私たちは入隊を希望した」
モノトーンの話をアイは黙って物陰から訊いていた。
「奴とは共に戦場を駆けたさ。しかし奴は死んだ。私の目の前で無様になぁ!!」
アイは共に戦った戦友の想像していたものと違う死を知り驚愕した。
「そしてもう1人の私はその瞬間から消えた。この体は私だけのものだ!!貴様の知る結城はもういない!!」
2重人格だった結城啓悟。
だが戦友の死によって心を閉ざしてしまったらしい。
「そしてここまで私を追いやった大人たちを、人間に復讐する事を誓った!!」
モノトーンの自分勝手な発言にアイは、
「そんな事っ!!」
そう云って銃口をモノトーンに向けた。
「撃てるのかね?君が、私を。君とて私と同じ権利を有す。そうだろう?中倉ぁ!!」
モノトーンはアイは自分を撃てないと確信しているかのように微動だにしなかった。
そしてモノトーンは意味深な事を云い始めた。
「1射目。恐らくSIRNの誇る第3基地へ。そして2射目は本国へ」
「何の話だ!!」
アイはモノトーンに叫ぶ。
しかし、モノトーンは話し続ける。
「3射目。それで全てが終わるだろうな」
質問に答えるわけでもなく、モノトーンは微笑した。

シュウたちはSIRNの少年兵相手に苦戦していた。
「こいつら、やるな・・・」
シュウが愛用の日本刀『師走』で攻撃をする。
「チィ、なんで素直にやられてくれないんだよっ!!」
ナギナタで応戦するショーイ。
少年兵だけではない。後ろから続々とやってくる敵兵の数にもウンザリしていた。
「こいつらだけでも手一杯だってのにっ!!」
シュウは愚痴をこぼす。そして、一瞬の隙をついて敵兵に迫る。
「何ぃ!?」
シュウの攻撃にジンは対応しきれずに飛ばされた。
「これで、チェックメイトだ」
シュウがジンに止めを刺そうとした、その時、少し離れた場所で大きな爆音が聞こえた。
「なっ・・・」
「これって・・・どうなったんだ!!」
シュウとショーイは一瞬の出来事に訳が分からなくなっていた。
それは2人だけではない。
ビー、ジン、トオルやカズマも絶句して、戦場は一瞬静まり返っていた。
その爆発があった場所には4人の少年と1人の成人が立っていた。
「さぁ、本番だ」
「全部殺っていいんだよねぇ?」
「敵味方はわきまえろよ・・・まぁ、僕たちには関係ないな」
「君たちの好きにやっていい。行っておいで」
フォビドゥンたちだった。
黒い髪の少年の号令と共に4人は敵に迫った。
「終わりにしよう」
そういってアルミエルがダガーで敵兵を刺した。
すると、後ろから違う敵兵が銃を撃ってきた。
「僕たちの相手をしようっての?愚かな」
回避し敵兵に駆け寄った。
アルミエルはダガーを変形させ、5メートルほどのジャベリンで敵兵を貫いた。
ラズエルは自分の背中に背負っている射出ポットから何かを発射し、その物体から銃弾が数多放った。
その銃弾を浴び、連合兵は一気に数が減った。
「その程度で俺たちを止めようっての?」
ラズエルは嫌味を云った。
もう1人の少年、ガルエルは1丁のマグナムを基地に向け放った。
すると、信じられない威力で基地の1部が倒壊した。
銃撃というよりは砲撃と云った方がいいかもしれない。
そして、バーンは腰から大剣を抜き、敵を一掃した。
「何だ・・・あの武器・・・」
シュウたちと敵兵はみな手を止めていた。
桁違いの強さに声が出せずにいた。
その時、ジンは敵の無防備さに気付き、銃口を敵兵に向けた。
「死ねぇぇぇ!!」
そう云って放たれた銃弾は寸前でよけられ、逆に敵に間合いを詰められた。
ジンは死を覚悟した。
しかし、神はまだ彼を見捨ててはいなかった。
「ジンっ!伏せろ!!」
ビーが叫び銃を放った。
しかし無常にも回避され、シュウの師走がビーの体を貫く。
「ぐっ・・・」
ビーは苦痛の声を漏らし、
「い・・・き・・・ろ・・・」
生き延びろ。
彼はそう云いたかったのだろう。
しかし、彼はそんな余力は無く、ナノシステムによってビーの体は弾けた。
「なっ・・・そんなはずは・・・貴様っ、逃げる気かぁぁぁ!!」
日頃からビーの事をライバル視していたジンにとって、後味が悪いものこの上なかった。
「ちくしょぉぉぉぉ!!!!」
ジンはシュウに銃口を向け、放った。
応戦しようとしたシュウだったが、師走はもうボロボロだった。
「チッ、一旦退くか」
シュウは態勢を立て直すべく撤退した。

ショーイはトオルと戦闘していた。
「ナギナタ野郎っ、これで!!」
ショーイは当たらない銃弾を気にもせず、一気に間合いを詰めた。
リーチが長いナギナタは、トオルの腕に突き刺さった。
「ぐあぁぁぁぁ!!」
トオルの右腕から全身に激痛が走る。
そして、ショーイが止めを刺そうとした時、トオルは投降するという合図、両手を上に上げた。
「投降するのか・・・お前」
敵兵も人間なんだと再認識したショーイはその敵兵を連行するため、余裕のない状況なのに本部へと戻った。
「俺もお人よしだな、ってか」
今まで戦っていた敵の喋り方がトオルは不思議でしょうがなかった。

「特務隊が動き出したか」
モノトーンは笑い声をもらした。
「何がおかしい!!」
アイはモノトーンの態度が気に入らなかった。
「フォビドゥン=ラズエル。気性が荒い。特殊武器は遠隔操作型マシンガン、『オクト』」
モノトーンはいきなり人の名前を読み上げ始めた。
「フォビドゥン=アルミエル。冷静沈着。特殊武器はマジックジャベリン。フォビドゥン=ガルエル。3人の中では最も普通な性格。特殊武器はOPM。特務隊の少年たちの名前だ」
アイは『少年』という言葉に愕然とした。
自分の部下たちと同じくらいの年齢の少年少女が戦火に身を投じ、敵を滅ぼすために戦い合っている。
そう考えるとアイは複雑な気持ちになった。
「彼ら3人はフォビドゥンという少年のクローンだ」
モノトーンの言葉にアイは、
「クローン!?クローンを造るのは違法だぞ!!」
と云った。
世界的に禁止されているクローンの生殖。
それを敵軍ではしていたというのか・・・。
アイは世界はもう取り返しのつかない方向へと進んでいるのが見えてきた。
「クローンゆえ、その作成段階で強化できた。成功作だ」
モノトーンは滑らかな口調で云った。
さらに、
「連合の核とSIRNの人間兵器。どちらが世界を制すかな?」
と云った。
アイは逆鱗に触れ、
「それ以上、それ以上の・・・」
云いかけた言葉は最後まで出せなかった。
この状況を生み出した事に自分もかかわっていた。
知らなかった。
そんな言葉で取り返しがつくはずない。
アイは色々なプレッシャーで押しつぶされそうになっていた。

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