ディサイション・パワード 3部第17話



ディフェンスと交戦しているネアンたちは好調だった。
だが、オーストラリア基地に配置された防衛線では、突然の敵に混乱が始まっていた。
「何なんだ、あいつらは!」
「識別は!何処の軍だ!」
「何が目的なんだ!敵にも味方にも見境なく」
幟唯たちの仕業だった。
彼らは1機たりとも落とす事無く、戦えないまでに叩き潰していっていた。
幟唯たち3人の機体は前大戦の時と外見は変わっていない。
だが、機動力、装甲の強度、武器の火力などは強化されている。
「両軍を引き離すぞ。ミサイルを前方に乱射!」
天の号令と共に、無数のミサイルが発射された。
両軍は、弾に当たらないように避け、自然と距離があいていた。
そこに、幟唯たち3人がまだ戦意のある機体を叩いていく。
「早く退けよ。もう戦えなくなっしまうぜ?」
渉流がそう云いながら政府側、ランド側の機体を停止させていく。
ケントは、マシンガンを撃ち、多数の敵に被弾させた。
幟唯も、俊敏な動きで敵に近づき、ソードで戦力を削いでいく。
戦場は混乱の渦に呑み込まれて行った。

ネアンや、ディフェンスでもその状況が確認できた。
「どうなっている・・・。相打ちか?」
ネアンがボソッと云った。
そして、ディフェンスの方へ向き直り、リスに云った。
「リス、あの艦を沈めるぞ」
「りょうか~い」
2機はディフェンスに向かって行った。
ディフェンスでも春が行動に移ろうとしていた。
彼は格納庫に来ており、自分の機体に乗り込んでいた。
「艦を頼むぞ。ハル・キサラギ、出る」
春が艦の防衛の為に出撃した。
ネアンとリスはそれに気付いた。
春は、肩に搭載されているミサイルポットからミサイルを発射した。
2人は散開して回避する。
そして、ついてきたミサイルをライフルで撃ち落した。
その時、ミリの目の前に爆煙の中から春の機体が飛び出してきた。
「何っ!?」
春は、特殊武器『バトルチェーンソー』で斬りかかった。
リスは回避し損ね、左腕に攻撃を食らった。
切断された左腕が、空中で爆発する。
「くぅっ・・・」
バランスを崩し、少し動きが鈍くなった所で、春がライフルを撃った。
それは、頭部のメインカメラと、脚部に直撃した。
「リス、退け!」
ネアンが春に刀で斬りかかった。
春はヒラリと回避した。
「ごめん、撤退します」
リスが撤退して行き、それを見届けてネアンが再びかかって行った。
「チッ、まだ来るか」
春はチェーンソーをフル回転させ、ネアンに斬りかかった。
「やらせん」
ネアンは刀でそれを防いだ。
だが、チェーンソーの回転で、刀が徐々に削られていく。
「クソッ!」
日頃はクールなネアンから焦りが見え始めた。
そこに春がライフルで攻撃した。
一瞬の隙を突いた攻撃で、ネアンの機体は右足に被弾した。
「これ以上は危険か。ジロンド、一度戻るぞ」
春がチェーンソーをスウィングし、ネアンはそれを回避して撤退して行った。
ジミュートと戦闘をしていたジロンドも、彼について行く様に撤退して行った。
春はすぐに部下の機体を探した。
「4機は!位置を教えろ!!」
オペレーターに、叫ぶように訊いた。
「ヴュルムとリオンは見つけた。だが他の2機が見つからん」
ジミュートが春に云った。
春は歯を喰いしばり、とりあえず発見できた2機だけを回収し、艦へ戻った。

幟唯たちの妨害もあって、戦闘は終わった。
いつの間にか彼らの姿は戦場から消えており、政府軍も撤退して行った。
イェルは捕獲した機体を降ろし、自分も機体から降りようとしていた。
そこに、整備士の言葉が聞こえた。
「おい、パイロットが生きてるぞ」
「でも気ぃ失ってるな」
イェルはその機体に近づいて行った。
「どけ」
搭乗の時に使うエレベーターから整備士を降ろし、イェルはその機体のコックピットまで上がった。
すると、そこには女のパイロットの姿があった。
イェルは彼女見て驚愕した。
「なぁっ・・・この子、この間の・・・」
それは、休暇の時、街で出会った女だった。
そう。事故をしそうになり、自分が助けた少女だった。
その時、格納庫にアレンが来た。
その場にいた者たちが、一斉に敬礼する。
イェルも敬礼をし、すぐに云った。
「隊長!」
「おっ、どうした?」
アレンは、見慣れない機体を見ながら云った。
「この機体のパイロットが生存しています。ですが、怪我をしているようで・・・」
彼の言葉を聞いて、アレンが云った。
「おぉ、サンプルを持って帰ったか。ご苦労。敵兵は・・・まぁ、医務室に連れて行け」
イェルは少女を抱えて、すぐに医務室に向かった。

ディフェンスでは深刻な状況に陥っていた。
リオンとヴュルムは重傷を負い、ミリとマヤを失った。
男2人は手術室で手術を受けている。
春は自分の不甲斐なさに腹を立てていた。
「クッ・・・何をやっていたんだ、俺は」
気負いする春に、ジミュートはかける言葉がなかった。
艦中に暗いムードが漂う。
そこに、手術が終わったという連絡が入ってきた。
2人とも無事手術は成功し、命に別状はないといことだった。
とりあえず、そこではみな安堵した。
だが、状況は厳しいままで、彼らは成す術がなかった。

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