ディサイション・パワード 3部第21話



ノゥはアレン殺しの隠滅を謀っていた。
「キリア。この事は外に漏れぬよう、漏らさぬよう頼むぞ。後の始末は私に任せておけ」
「判っています。今後はどうなさる御つもりで?」
キリアが訊いた。
「一度基地に戻る。あの若造の亡骸を消した後、次の行動に移るさ」
ノゥは、ジロンドの中で眠っていた為か、次々と話し始める。
それをキリアは親身になって聞いている。
余程の信頼があるのだろう。
ノゥはアレンの亡骸を持って、ヘリに乗り込んだ。
「ではお気をつけて」
キリアに見送られながら、ノゥはヘリを発進させた。

ミリが艦内の廊下を歩いて、食堂の前を通りかかった。
ふと中を見ると、3人分の食事が用意してあった。
中に入り、食堂のおじさんにミリが訊いた。
「あの、これは?」
3つの食事を指差した。
「あぁ。パイロットの坊主たちのと、捕虜の分さ。頼んでた奴、まだ持って行ってなかったのか」
おじさんが少しムスッとした。
「あっ、私が持って行きますよ。丁度あいつらに会いに行こうとしてた所だし。捕虜の分も、あいつらに渡した後」
「そうかい?助かるよ、お譲ちゃん」
ミリは笑顔を見せて、2人分の食事の乗ったトレイを手に取った。

ミリは、2人のいる病室に入った。
「2人とも、食事よ」
食事を持ってきたミリを見て、リオンが云った。
「なんだ、ミリか。いつものオネーサンが良かったのに」
それを聞いて、ミリが云った。
「残念でした。それに、今日はあのお姉さんいないわよ。買出しだって」
リオンはそれを聞き、ガクッと肩を落とした。
ミリは食事を置き、すぐに部屋を出ようとした。
「お、おい。もう行くのか?」
リオンが呼び止めた。
「あの人の分も持って行かないといけないから」
あの人とは、捕虜であるイェルを指していた。
すると、リオンが起き上がり、横に立ててあった2本の松葉杖を手に取った。
「丁度いい。俺もその人に会いに行くわ」
2本の杖を突き、ミリの方へ寄って行った。
ヴュルムも、寝かした体を起き上がらせた。
「こいつ、今足に負担かけられないんだと。だから車椅子、押してやって」
リオンがミリに云った。
「すまんな」
ヴュルムが云った。
「いいのよ。じゃ、行こうか」
3人は食堂に食事を取りに云った。

基地に戻ったノゥは、アレンの亡骸を上手く担いだ。
死体の顔には傷が1つもない。
ノゥがわざわざつけなかったのだ。
腕を自分の首の後ろに回し、肩を組んだように見せる。
そして、基地の中に入った。
それを見た見張りの兵士が、ノゥに云った。
「アレン隊長、どうしたのですか!?」
「敵に襲われてな。足を負傷なさっている」
自分の事をジロンドだと思い込んでいる兵士に、怪しまれないように云った。
「何?!早く医務室へ連れて行きなさい」
兵士がノゥに云った。
彼はすんなりと基地内にアレンを連れ込んだ。

ノゥは医務室になど向かわず、アレンの部屋へ入った。
そして、ランド本国と連絡を取った。
「ノゥ・アンノーク少将だ。軍上層部の者へ繋いでくれ」
通信を受けたオペレーターが云った。
「ノゥ・アンノーク?彼は前大戦で戦死された。貴様は何をふざけた事を云っている。それに、この通信の発信源はバン・アレンになっているではないか。どういう事だ」
ノゥは仕方なく、前大戦時での個人情報、戦績を告げた。
オペレーターは調べ始め、そしてこう云った。
「なっ・・・、本物でありますか?!」
「さっきからそう云っている」
オペレーターは焦り、すぐに上層部へ通信を繋いだ。
すると、次に繋がった通信にオウンが出た。
「ノゥ・アンノーク少将、よくぞご無事で。15年ぶりの奇跡の生還ですか。あぁ、申し遅れました。現在のランド最高取締代表オウン・センターだ」
ノゥは本物そうな人物の登場に、不敵な笑みを浮かべた。
「いえいえ。それより、バン・アレンの管轄下にあったパイロットの昇格を要望したい」
オウンは疑問な顔をした。
「アレン特佐から私に云われましてね。私の独断ではどうにもできませんから」
オウンはアレン隊の戦歴を確認した。
そして、ノゥにこう云った。
「少々失敗も目立つが、オーストラリア基地の奪取。敵エース機の撃墜と好成績だな。よかろう」
そこで、ノゥが付け足した。
「しかし、アレン隊ネアン・デルタール、イェルマーク・ハプスブルク、ジロンド・オームは戦死。パイロットの生存者は、リス・サンダーボルトのみとなります」
こう伝えたのだ。
「うむ・・・、承知した。リス・サンダーボルト一等兵は中尉に昇格。そして、ノゥ・アンノークが復隊。これでよいな」
「えぇ、助かりました。話が解って下さる方で」
ノゥは礼を云い、通信を切った。
ノゥからの通信が切れた後、オウンは考えていた。
「ノゥ・アンノーク・・・。今更姿を現し、何を考えている・・・」
暗い部屋の中、彼は仕事をしつつ、考え続けた。
ノゥは、アレン名義で基地の司令官へ、打電を打った。
その内容は、リスの昇格の事だった。
それを司令官に伝えさせようとしていた。
「あとはこの若造を完全に消すのみか。楽だな」
部屋の中に、ノゥの笑い声が響き渡った。

リオンたち3人は、牢のある部屋へ来ていた。
部屋の中へ入り、イェルのいる牢の前に立った。
「今日はずいぶんと連れが多いんだな」
イェルが云った。
「えぇ。2人ともあなたと話してみたいって」
ミリが云った。
そこにリオンが出た。
「ミリを助けてもらったらしく、ありがとうございました」
杖を突いているので、浅く礼をした。
ヴュルムも車椅子に乗って礼をしている。
「そんな事はいい。君たちは大丈夫なのか。そんな体で」
イェルが2人の姿を見て、気遣いを見せた。
「ハハ、あんまり大丈夫ではないようですが。でもすぐに復帰しますよ。コイツ1人だけに任せられないですし」
そう云って、ミリを見た。
「そうか。いい仲間だな、ミリちゃん」
イェルが云った。
ミリはいい方の返事をした。
「あなたもいい人そうです」
リオンが云った。
「敵ではなく、仲間として出会いたかったな」
イェルの表情が、少し暗くなった。
仲間。
その言葉は、イェルにとって、一番辛い言葉だった。
彼は仲間を裏切った。
彼には仲間がいない。
ミリがそれを悟り、リオンたちに云った。
「ねぇ!イェルさんに食事持って来るの、ローテーションにしない?」
「おっ、それいいかも」
リオンは乗り気だった。
しかし、そこに今まで口を出さなかったヴュルムが云った。
「リオン、ミリ。彼が敵だったという事を忘れるな」
2人は彼の方を見た。
「おい、そんな云い方ないんじゃないか?」
リオンが云った。
「何かの作戦でないと、何故云い切れる?無理だろう。気を許した時、後ろから撃たれる可能性もある」
「お前・・・、あの人はミリを助けてくれたんだぞ!命がけで」
今にも手を出しそうなリオンを見て、イェルが云った。
「止めろ。彼の云う通りだ」
リオンとミリがイェルの方を見る。
「仮にも俺は捕虜だ。少し君たちと親しくなり過ぎたかもしれんな」
2人の表情が曇る。
「それに、俺と親しくしていて、ミリちゃんが疑われかねん。だから、君たちはもうここには来ない方がいいだろう。さっ、早くここを出な」
イェルにそう云われ、3人は部屋を出て行った。

春は上層部から次の命を受けていた。
「新型の受け渡しですか」
『そうだ。貴艦はこれよりサンティアゴ基地へ向かってくれ」
「了解しました」
そして、通信が切れた。
いつも横にいるジミュートが、春に訊いた。
「新型か・・・2機だろ?誰が乗るんだ」
「それは基地についてから伝えられるらしい」
ディフェンスはこの基地を離れる事となった。

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