ディサイション・パワード 3部第28話



イェルとリス、そしてネアンは、よもやかつての仲間とも知らず、敵として戦っていた。
「いきなり現れて、お前は!」
リスが背後砲でネアンを狙って撃った。
ネアンは10枚のウィングを展開させ、それを回避した。
攻撃の直後のリスに目掛け、イェルがナギナタで斬りかかった。
リスはシールドでそれを受け流した。
2機が接近した所で、ネアンがランチャーを放った。
2機は自然と距離を置く形となった。
その体勢を崩した時、リス機に向けてネアンが斬りかかった。
「なにっ!?」
リスは回避し損ね、彼女の機体は、右腕から胴体を通り、両足を一気に切断された。
大破した機体を、ネアンは蹴り飛ばした。
「チィッ。なんなんだ、あいつは・・・」
リスは撤退を余儀なくされた。
そこを狙い、イェルがネアンに向けてライフルを撃つ。
しかし、それは軽々と回避された。
ネアンの強さは半端でなかった。
ランチャーの砲身でイェル機を殴打した。
「くそっ、こいつっ!!」
イェルはナギナタを構えた。
それは次のネアンの攻撃によって、両断された。
「貴様は死んで償え」
ネアンは友人の機体を駆る敵に、死を持って制裁を下そうとしていた。
霞でコックピットを一突きにしようとした時、幟唯がソードで割って入った。
すると、彼女はイェル機の両腕を切断し、ソードの側面で殴り、海へ落とした。
「ぐわあぁぁぁ!!」
相手の驚異的な強さに、成す術なく敗退してしまった。
「ネアン君?あなた、今何を」
「あれは、私の友人が乗っていた機体だ」
幟唯は驚いた。
彼の友人が奴らの手に落ち、そして機体までも使われている。
それを瞬時に察した。
「気持ちは分かるが・・・」
幟唯は複雑な気持ちになった。

スバルとナセルを撤退させた後、渉流とケントはジミュートとライを止めるべく戦っていた。
だが、さっきの2人とは違い、彼らは相当強かった。
「こいつら、何故落ちない!」
渉流がサーベルを抜き、ジミュートに斬りかかった。
ジミュートはそれをセイバーで受ける。
そして、力で押しのけた。
そこにケントがライフルで撃ってきた。
しかし、それも強力なフィールドによって全て消された。
さらに、ライが2機に襲い掛かってくる。
2人は一旦距離を置いた。
そこに天から通信が入ってきた。
『ランド軍は撤退した。こちらも撤退するぞ』
納得のいかない、後味の悪いままの撤退となった。
「リオン!」「リオン君」
2人は急いでディフェンスに戻った。

回収されたリオン機がドックへ収容され、コックピットが開けられようとしていた。
ミリとヴュルム、春もその場にいた。
ドクターもそばにいる。
そして、やっとコックピットを開く事に成功した。
「リオンッ!」
感情に任せて近寄ろうとしたミリを、春が止めた。
ミリが何故?といった風に春を見る。
だが、春は一点を見つめたまま、表情を変えなかった。
すると、コックピットを開けた兵士が驚愕の表情を浮かべ、叫んだ。
「ドクター!!」
呼ばれ、すぐに駆け寄るドクター。
一同は最悪の結末を想像した。
そして、それは現実のものとなった。
「腹部の出血も夥しい。頭部の具合を見ても、ほぼ即死だな・・・」
ドクターが振り返り、首を振った。
ミリは腰から崩れ、魂が抜けたようになった。
ヴュルムは信じられないといった風の表情になり、春は自分の不甲斐なさに歯を喰いしばった。
そこにジミュートとライが帰還してきた。
着艦するとすぐにこちらへ駆け寄ってきた。
「ハル!リオンは」
春はどう対応すればいいのか分からなかった。
親友の息子を殺した、と上官としての責任を感じていたため、何も言葉が出なかった。
「おい、どうした!ハル!!」
彼は、春の胸座をつかみ、体を揺すった。
ライは全てを悟り、俯いた。
ジミュートもこの時点で分かっていただろう。
だが、信じたくなかった。
彼は春の制止を振り切り、リオンのいるコックピットへ向かった。
そして、そこで自分の息子の亡骸を見た。
彼はそこで呆然と立ち尽くした。
その場に暗い空気が漂った。

美衣は、深海石書に記された、イクナートンをめぐる戦いの行く末を見ていた。
「行動に移るには時間がかかる。時間稼ぎには都合がいいものだ」
彼女は、どの様な形ででも、両軍に復讐が出来ればいい。
すでに両軍は彼女の手中に入りかけていた。

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