ディサイション・パワード 特別編



壮絶な最後で幕を下ろした戦いから10年もの月日が流れていた。
地球・宇宙間の争いはなくなり、今は協力関係にある。
もっとより良い世界を目指し、両者は努力をしている状態だ。
皆が夢見た世界。
今、それが現実となっていた。

「よし、集合!」
渋い声で白髪交じりの将校が、部下たちに招集をかけた。
それは、40代後半もの歳になった如月 春だった。
隣には、フィン・デュナミスが付き添っている。
「私は今から用事があるのでな。これからの予定はキムラ中佐に任せてある。わかったな?」
部下たちは一斉に返事をし、春はフィンと共に歩き始めた。
現在の軍は、世界各国に支援などをしたり、災害が起きた時の為に動く集団となっていた。
「久しぶりに会えるわねぇ、彼女たちに」
春とフィンは結婚していた。
2人の子供もいる。
「そうだな。墓参り・・・。もう10年経つのか」
戦争が終結して、今日が丁度10年目だった。
「急がないと!もう待ってるよ?リリスたち」
「そうだな」
2人は急いで身支度をした。

春たちはリリスとある喫茶店で待ち合わせていた。
2人は車でそこを目指している途中だった。
「今日は誰が来るんだ?」
運転している春がフィンに訊いた。
「リリスと永原さんが来るわよ」
「全員集合・・・、だよな」
当初はもっといた仲間。
だが、今はたったの4人しかいなかった。
そんな話をしていると、その喫茶店に着いた。
海沿いの道に1店だけポツンと建っている。
木材で造られている、自然を感じさせる造りだった。
2人は店の戸を開け、中に入る。
するとそこにはリリスと永原の姿があった。
「いらっしゃい」「いらっしゃいませー」
店員が元気よく迎えてくれた。
「遅いわよ。コーヒー何杯飲んだと思ってんの?」
冗談を交えながら、リリス・ニナージャが言った。
「すまん。こちらも今忙しくてな」
軍は終戦10年記念祭の真っ最中だった。
上層部に位置する春だが、墓参りを優先させた。
「大丈夫なの?」
「平気よ。この人、強引にどうにかするもの」
リリスが気遣って訊いたが、フィンが軽く返した。
「お客さん。今日は何処かへお出かけですか?」
店長らしき男が話しかけてきた。
この男は、なんと飛立 天だった。
隣の店員はケント・フライチキ。
その他、和久井 幟唯、桐島 渉流の4人で、終戦後からこの喫茶で仕事をしていた。
幟唯と渉流は結婚しており、子供は3人いる。
何とも奇怪な偶然だった。
だが、お互い顔も名前も知らない。
「墓参りですよ。終戦から今日で10年でしょ?」
リリスが返答した。
「天店長。俺たちも墓参り行きませんか?」
ケントが訊いた。
「んな事出来るか。店休むワケにもいかんし、買出しの2人は帰って来んし」
幟唯たちは買出しに行っており、2時間経ったが帰ってこない。
「ハハ、お仕事大変ですね」
「ホントですよ。まぁ、好きでやってるんですけどね」
フィンが言い、天が嬉しそうに言った。
「行くか」
春が静かに言った。
「そうね。コーヒーご馳走様でした」
「ありがとうございました。またのお越しを」
2人の店員に見守られながら、4人は店を後にしようとした。
春が店の入り口の扉を開けようとした時、扉が自然に開いた。
外側から来た客が開けたのだ。
春たちはその客が入るのを待った。
客がそれを見て店内に入ってくる。
その客はサングラスをかけており、目に大きく縦に傷が入っていた。
春はその客に覚えがあった、ような気がした。
それも、とても大きく、親密だった人物に。
だが、彼は他人の空似だろうと思い、店の外に出た。

車を走らせ、仲間の墓がある場所に着いた。
車から降り、春がふと近くの岬の方へ目をやった。
そこには慰霊碑らしき物があり、1人の青年が立っているのが見えた。
「慰霊碑、見てくるわ。先行ってていいぞ」
「そう?じゃあ先行ってるわ」
春に言われ、3人は先に墓の方へ向かった。
春は慰霊碑の方へ向かう。
そして、その前に立つ青年の後ろに立った。
「君も墓参りか?」
春が不意に青年に話しかけた。
白がメインの銀髪で、短髪の青年だ。
「えぇ。戦争で多くの友人をなくしましたので」
それは、どこかで聞いた事のある声に似ていた。
「では、僕はこの辺で」
青年が振り返り、春は驚愕した。
「ヨ・・・ウ・・・?」
髪型から顔、声までも彼の死んだ戦友に似ていた。
「・・・昔よく言われました。何故か、分かりませんが。では」
そう言って青年は去って行った。
春はその後姿を見て、呆然としていた。

3人のあとを追って、春も墓の前に来た。
睦月ヨウ 内海美衣 睦月弥生 浅城ジミュート ヨーラン・ウィリー 戌亥焔 日下部紫郎
共に戦った仲間たちの名前が彫られた墓石の前に立ち、4人は手を組んで目を閉じた。
様々な思いをめぐらせる。
そして目を開いた。
「みんながいなけりゃ、こんな世界にはならなかった」
「うん・・・」
リリスとフィンは涙を流した。
「あいつらの気持ちを無下にしない為にも、生きているお前らが世界を創っていかなければならんぞ」
永原が言った。
春が時計を見た。
「フィン、そろそろ時間だ。残業になるぞ」
「あちゃー、それは痛い」
「じゃあ、帰ろうか」
4人は彼らの墓を背にし、その場を去った。
彼らが去ってのタイミングで、20代前半ほどに見える女がヨウの墓の前に立った。
「ヨウ。今はあなたの望んだ世界になりつつあります。あと少しで、きっと。みんなと向く方向が違ったけど、願った平和な世界に」
女は空を見上げた。
青く透き通った空。
それは平和そのものを語っている様に見えたのだった。

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