ハジマリノ歌 15話「動き出す勇士」


画面にはカディス最強の兵器、グングニルのデータが映し出されていた。
「これが・・・」
ノヴァはその内容を隅々まで見ていく。
これが今回自分の仲間たちを殺した兵器。
色んな事を考えているうちに時の支配者の考えが解らなくなってきた。
「最初のうちは俺の運命を強制的にも変えさせないようにしていた。なのに今はほとんど未来と違う。諦めたのか、それともこれも作戦のうちか・・・」
パソコンの電源を落とし椅子から立ち上がり、ベッドに移動する。
そしてそこに腰掛ける。
すると、訪問者が部屋のチャイムを鳴らした。
再び立ち上がり、扉を開ける。
そこにはマリの姿があった。
「あの、お邪魔でしたか・・・?」
「いや。なんだ?」
「お話が」
ノヴァはそれを聞くと無言で部屋の中へ入った。
そしてマリにも入るように合図した。
マリも部屋の中に入り、ノヴァはそれと同時に部屋の照明を点けた。
「悪いな、あいにく席がない。そこにでも座ってくれ」
彼はそう言ってベッドを指差した。
マリはベッドに腰掛け、ノヴァは自分の椅子に座った。
「話とは?」
ノヴァが訊く。
「・・・何をしようとしているのですか?」
マリが真剣に訊いた。
ノヴァは表情一つ変えず話を聞いている。
「前の話でも妙に犯人に近付いているような発言を。あなたは一体・・・」
「何度も同じ事を言わせるな。お前たちが知る必要はない」
「あります!じゃあ言わせてもらいます。たしかに、監獄から出してもらった事に感謝していますし、その見返りにあなたに尽くそうともしています。でも、そんな隠し事ばかりの人の下で信頼して働けますか?」
マリが勢いのある喋り方でノヴァに迫った。
「・・・信頼など必要ない。お前たちは俺に言われた通り―」
彼の話は途中で遮られた。
マリが突然彼に抱きつき、ノヴァはそれに動転した。
「一人で背負い込まないで下さい。私たちもいますから」
「・・・ふまないか、といてくれないか。息か・・・(すまないが、どいてくれないか。息が・・・)」
「す、すみません!」
彼女は素早く離れた。
そしてその場にもういられないと思い、すぐに部屋から出て行こうとした。
「マリ」
出て行く直前にノヴァに呼び止められた。
マリは振り返らずその場に止まった。
「ありがとう」
彼の口から出るような言葉とは思えなかった。
マリは一度頷いて、そのまま走り去って行った。

レオンはトールに会う為、王宮に来ていた。
兵士に頼み、彼を連れてきてくれるよう頼むと、今は会議中なのでと言われ、少し待つことになった。
ただ待つのも暇だったので、近くの軍施設に足を運んでみた。
中に入ろうとすると、突然声を掛けられた。
「レオン様」
声の方に振り向くと、トールの側近であるテュールがこちらに向かって歩いてきた。
「君はトールの」
「テュールです。ここに用ですか?」
「いや、トールとの面会まで時間が」
レオンが頭をかきながら言った。
するとテュールが言った。
「・・・リカードというバレンシアの兵士を知っていますよね」
レオンは少し驚いた風な表情をした。
彼は前自分と相討ちになった。
「何故彼の名を?」
「今ここに収容されています」
それを聞いてさらに驚いた。
生きていたのか。
彼は内心ホッとしていた。
「恐らく王子もあなたをここに連れて来ようとしていたのでしょう。・・・入られますか?」
テュールは少々恐縮して言った。
レオンは少し黙り、そして切り出した。
「案内してくれ」
テュールは頷き、レオンを連れて施設の中に入って行った。

レオンはある個室に連れてこられた。
「病室・・・」
リカードはやはり重傷を負ったのだとそこで察した。
テュールがドアを開け、レオンが先に中に入る。
部屋の中は普通の病院の個室のようになっていて、ベッドの上に一人の男が上半身を起こして起きている。
何も考えていないようにボーっと窓の外を見ていた。
「リカード」
リカードは声に気付きそちらを向く。
そしてレオンの顔を見て驚いた表情を見せた。
しかしまた窓の外へ視線を戻し、それから喋り始めた。
「トールに会ったよ」
「知ってる」
「あいつに助けてもらったんだ。俺も、仲間も」
「そう」
「・・・今はこれ以上お前と話したくない。出て行ってくれ」
レオンはそれを聞いてハッとした。
時間をおかずに会ったのは軽率だった。
自分は彼の仲間を殺したのだ。
「・・・わかった。じゃあな」
レオンはドアを開け部屋を出て、テュールもその後について行った。
「トロイメ・・・」
リカードは呟いた。

施設から王宮に行くと、すでにトールが待っていた。
レオンとテュールは急いで彼の元へ向かう。
トールはレオンに会うと同時に言った。
「無事でよかった。まぁ俺はお前が死ぬはずないと思ってたけどな」
「心配掛けたな、すまなかった」
レオンは続けて言った。
「・・・リカードに会った。トールが助けたんだってな」
「あぁ、街の中で倒れていたのには驚いたが。まさかこんな形で再会するとは思っていなかった」
トールはそれでもリカードと会えた事に喜んでいた。
「じゃあ話は一つだけでいいな。バレンシアが何故撤退していったか知っているか?」
「いや、聞いていないが」
「バレンシアの国王が何者かに殺された。それも戦闘が始まる数日前に」
レオンは疑問を抱いたような顔をした。
「じゃああの戦闘は」
「バレンシアの意志ではない。何者かが偽りの指示を出した」
「何故数日も経つまでその死に誰も気付かなかったんだ?」
「それは今親父の派遣した隊が調べている。バレンシアもバレンシアで相当焦っているようだ。緊急で我が国へメッセージを送ってきた。こっちもそれでてんやわんやだよ」
レオンはその話を聞いて一人の男の顔を思い浮かべていた。
ノヴァ・ワグナー。
もし彼が犯人なら、自分の目的を成し遂げたからもう国王の死がバレてもよかったのか。
ならば、彼はそんな国家犯罪を犯しても平然な顔をして自分と会っていたのか。
データを渡したのは失敗だったか。
しかし誰かを利用するならば、利用されるのもいた仕方ない。
「犯人の手掛かりは?」
「全く。でも手段がかなり殺人に慣れていないと出来ないような事だったらしい。それで、そこまで優れた者がバレンシア国内にはいないんだ」
「どういう事だ?」
「バレンシアで何らかの優秀な技能を持った者はすでに調べた。しかし、どれもその手口とは結びつかない物だった」
「だったらもっと視野を広げれば」
「親父にそう言ったよ。でも、何故かバレンシアの操作から手を広げようとしないんだ」
レオンはその時感じた。
本当に彼の父親、ロンドは何かを知っているのではないのかと。
「俺はこの件に関して調べたい国が二つある。最大の兵力を持つボルドー、そして・・・」
そこでトールは言葉を詰まらせた。
レオンは推測で言った。
「カディスか」
「・・・あぁ」
その推測は的中していた。
「最初の推測がはずれなら次に有力な所に当たるのが普通だろ。なのに何故一つの予想に固執するんだ」
「国王が何かを知っている。または何かをしようとしている」
言葉にすべきかしないべきかとも思った。
が、話を進展させる為に言った。
「かもしれない」
トールもそれを予測の一つとして持っていた。
「そこでお前に頼みがあるんだ」
「頼み?」
レオンが訊き返す。
「テュールと一緒にカディスの内部まで調べてくれないか。危険な事を頼んでいる事は判って―」
「いいよ、お前の頼みなら」
トールの話を遮って言った。
その方が自分の活動にも都合がいいと考えたからだ。
「私も彼と同じ意見です。しかし、我々が失敗すると王子にも疑いが」
「大丈夫だ。俺はお前たちを信じている。もしもの時は、俺も一緒だ」
そう言い、トールは手を差し出した。
「頼んだぞ」
「あぁ」「はい」
二人は彼と握手を交わした。
ここに自国に浮上した疑念を見出す為、晴らす為に少数鋭勢が実行された。

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