エタ-ナル・アイズ

エタ-ナル・アイズ

2026.08.30
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 決心がついた。

 ハルは断言した。

「源内?」

「わかった、止めん。と言うか、止めても無駄だろ、これまで通り」

 もう何度目かになる溜め息を重ね、コーヒーを飲み、腕時計を見る。

「そろそろ出よう、我慢のできない奴らが騒ぎ出す」

「わかった」

「ハルくん」

 立ち上がったハルと源内を伊吹が呼び止める。

「何を出すの?」

 止める間もなくすうっとハルが顔を下ろす。頬にキスするような近さで何事か囁く。

「え」「え」

 警戒した京介の声と瞬きした伊吹の声が重なった。

「本当?」

「うん」

 驚いた顔で振り向く伊吹はハルの近さに気づいていない。

 その一瞬、ひどく悲しげな優しげな笑みがハルの瞳に滲んだ。老成した高齢の男が小さな子どもを見る目だと京介が思った瞬間、ハルと目が合う。

 鋭く貫くような怒りが届いた。

 望んだ相手は決して自分の手には入らない。なのに目の前に、それを事も無げに攫っていく存在がいる。完膚なきまでに叩きのめしてやりたいが、愛しい相手はその存在を命に代えても守ろうとする。

 できることはただ一つ。

「京介」

 ゆっくり体を起こしたハルが呼び捨てた。

「はい」

 思わず立ち上がる。

 罵倒されてもいい殴られてもいい、けれどこの場所は生涯誰にも譲らない。叩き落とされても蹴り飛ばされても、伊吹が許してくれるなら、何度でもここに戻ってくる。

「遠くにいる」

 静かな声で言い放った。

「予定」

 意味が取れない。

「連絡」

「あ」

 源内もまた首を傾げ、けれど伊吹ははっとしたように体を強張らせた。

「招待」

「……」

 まっすぐに京介を見つめて来た黒い瞳に理解が落ちた。続くことばに自分だったらと思うと、京介は胸が詰まる。

「結婚式」

 見届けさせろと訴えられている。大事な女性が必ず幸福になるのだと確信させろと命じられている。

「はい、是非」

 約束すると、ハルは頷き、くるりと向きを変えたが、

「美並?」

「はい?」

 第2会議室から出て行きながら、ハルは背中を向けたまま言い放った。

「そいつ、女に襲われてるから」

「えっ」「あ」

 京介は引き攣った。

「阿倍野とか言うのに、果物ナイフで昨日刺されかけたらしい。怪我してないって言ってるけど?」

「ハルくんっ」

 思わず呼んでしまった。

「いじめられろ」

 ぼそりと唸ったハルは振り返りもせず、部屋を出て行く。すまん、と片手で源内が謝ってくれたが、それを見送って立っている伊吹は無言のままだ。

「あの、伊吹さん…」

「…どう言うことですか」

 くるりと伊吹が振り返る。静かな目が怖い。

「今夜詳細を聞かせてください」

「う、うん」

(中略)

「…っ、あっ」

 堪え切れなくて、京介は声を上げる。

「いぶ…き…」

 視界が霞む。息が弾んで頭が朦朧とする。

(中略)

 容赦なく高まっていく体が辛い。

(中略)

 口を開いて熱を逃がす、それぐらいしかできることがない。

 汗に溶ける。溺れていく。

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Last updated  2026.08.30 08:54:54
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