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目覚めると信長になっていた。あかるい。朝か。昨日までの信長の記憶と、平成のいちサラリーマン水島三朗としての記憶が、あたまのなかで錯綜していた。まるでSFじゃないか。こんなことが、ありうるはずが、ない。わああああああああああああああああ。それどころじゃない。月代をべべんと叩く。いまは、いつだ。そうだ。天正十年六月一日。そして、ここは、──本能寺。ええと、いつだったっけ、本能寺の変は。ええとええと・・・ああああ、こんなことなら、山岡荘八や吉川英治や司馬遼太郎をしっかり読んでおくべきだった。えええい。とにかく逃げよう。ここは危ない。「おい、蘭丸。馬じゃ。馬をひけぃ!」「と、殿ぉ。いかがなされました」「馬じゃ、馬をひけと申しておる。 一刻のゆうよもならん!」「殿、殿。お待ちを・・・」ふ~っ。なんとか脱出した。森蘭丸、坊丸兄弟が左右を走っている。他のものたちも続々と合流している。まずは、一安心。さて、どこへ行こうか。こうしてると、桶狭間を思いだすなあ。そうだ!このまま光秀のいる亀山城を攻めてもおもしろいぞ。やつは、まだ気づいておるまい。先手必勝!獅子身中の虫は、そっこく退治すべし!決まりだ。「蘭丸。亀山城にむかうぞ」「えっ、殿。亀山城は、確か明智殿が・・・」「そうじゃ、明智めに一泡吹かせてやるのじゃ。ダハハハハハハハハハハハ」われながら、グッドアイデア。これで、織田家は安泰。秀吉や家康のでる幕は、ないのじゃ。「みなのものお、よく聞けえええぃ! 敵は亀山城にあり!」途中、兵馬を休ませるために集落に立ち寄った。村の長にふろを借り、いい気分で入っていると、とろりとろりと眠くなった。ふろのなかで目覚めると、処刑中の石川五右衛門になっていた。
2004年09月25日
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「さとるー、お婆ちゃん、さがしてきてくれない?」 「またかよ」 ランドセルを机に置いて、さあこれから友だちと外であそぶぞってときなのに。ママはいつもぼくに用事をいいつけるんだ。それも、よりによって、ばあちゃんさがしだよ。かんべんしてくれよ。 「おねえちゃんにたのんでよ。ぼく、いそがしいんだ」 「おねえちゃん、きょうは塾なのよ」へへ~んってんだ。おねえちゃんは、ぜんぜん上達しないピアノのおけいこですかあ。それっじゃあ、しょうがないですねえ~~だ。 おばあちゃん、どこにいっちゃったのかなあ。 こまっちゃうなあ。 きのうは、大雨のなか、ハスの葉を傘代わりにして帰ってきたよな。 そのまえは、工場の中をてくてくあるいて、守衛さんにみつけられて、工場長さんの自動車に乗っけられて帰ってきたよな。 そのまえは、お墓のおまんじゅうをたべているところを、お坊さんにみつけられて、電話があって、パパがむかえにいったよな。 吉岡商店でおかねを払わずに酢イカをたべちゃったり、線路ぞいの枯れ草でたき火をして電車を止めちゃったり、ぜんぜん関係ない小学校の母親参観に出席したり……。 まいるよなあ。 いまは、ほんと、パパにいわせれば、「せわがやける」ばあちゃん。 でも、ばあちゃんは、ボケるまえ、ぼくにいろいろなことをおしえてくれた。 戦争中に防空壕に入ってお手玉したこと。うちのまえの道を、りくぐんしょうこうが馬に乗って行進したこと。たけやりで、ビー29をつっつこうとしたこと。笑っちゃうこと、泣けちゃうこと。 でも、ぼくが一番しりたかったこと──そう、じいちゃんとの出会い、なれそめっていうのかな。そいつを知りたかったんだけど、おしえてくれるまえに、ボケちゃったんだよな。 「ばあちゃ~ん、ばあちゃ~ん」 このあき地かな。 「ばあちゃ~ん、ばあちゃ~ん」 あっ、いた!あんなところに、しゃがんじゃって、なにやってんの。 「ばあちゃん、ばあちゃん」 「ああ、ゲンちゃん、みつかっちゃったね」 「ぼくだよ、さとるだよ」 「こんどは、わたしがオニだよ」 「ばあちゃん、ぼくだよ。さとるだよ。誰だい、ゲンちゃんって?」 「ゲンちゃん、かくれないのかい?」 「ぼくだよ。さとるだよ。ほら、かえるよ」 「ゲンちゃん、かえるのかい? じゃあ、おんぶしてくれよ」 「いいよ。ほら。よいっしょっと」 ああ、けっこう重いんだよな、ばあちゃん。 「ゲンちゃん」 だれだよ、ゲンちゃんって? あっ、 ゲンちゃんって、去年死んだゲンゾウじぃちゃんのことだね。 「ゲンちゃんの背中あったかいよ」 ばあちゃん、 幼なじみのじぃちゃんと、いっしょになれたんだね。 よかったね、ばあちゃん。
2004年09月24日
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パソコンで、日記を書いていた。‘腹上死’ という言葉を出したかったが、‘ふくじょうし’ を変換すると ‘吹く上司’ しかでてこない。‘副上司’ならともかく、‘吹く上司’ とは、なさけないパソコンだ。(もっとも、腹上死が出てくる文章を書く私は、ろくなやつじゃないが)しかたがないので、‘腹上死’ を辞書登録した。これで、‘ふくじょうし’と打って変換するとすぐ ‘腹上死’ が出てくるわけだ。ついでに知っている変態用語を辞書登録することにした。しふんしょう ポチッ 嗜糞症 ポチッだえきあいこう ポチッ 唾液愛好 ポチッせっししょう ポチッ 窃視症 ポチッじゅうかん ポチッ 獣姦 ポチッこうれいこうい ポチッ 好冷行為 ポチッほりゅうせいこう ポチッ 保留性交 ポチッピーピーピーピーピー 突然、アラームが鳴り、つづいて画面にヤメテ クダサイ ゲヒンナ コトバ ヲ トウロク シナイデ クダサイという文字があらわれた。なんだ?こんなソフト、インストゥールされていたっけ?ワタシ ハ パソコン デスジョウヒンナ パソコン デスゲヒンナ コトバ ハ ゴエンリョ ネガイマスなんだとお!パソコンのくせに、ユーザーにさからうのかあ!えーい、こうしてやるう。しょういんしせつじょ ポチッ 小陰唇切除 ポチッがんきゅうあいこう ポチッ 眼球愛好 ポチッしがあいこう ポチッ 歯牙愛好 ポチッぐんしゅうあいこう ポチッ 群集愛好 ポチッピーピーピーピーピー 再びアラームが鳴った。さっきより大きい。ヤメテ クダサイイジメナイデ クダサイワタシ ハ ジョウヒン ナンデスうるさい!そのあまったれた根性、叩きなおしてやる!えい!いんもうちょうこく ポチッ 陰毛彫刻 ポチッしやく ポチッ 絞扼 ポチッきゅうかくほう ポチッ 吸角法 ポチッおうとあいこう ポチッ 嘔吐愛好 ポチッピーピーピーピーうるせえんだよ!あまえは、おれのもんだ。おれの好きなようにして、なにが悪いんだ!おれの好みのおんな、いやいや、パソコンにしてやる!ピーピーピーピーアラームは鳴りつづけている。鼓膜が張り裂けんばかりに。さんてんとうりつ ポチッ 三点倒立 ポチッさいん ポチッ 鎖陰 ポチッせいぶつあいこう ポチッ 聖物愛好 ポチッぶんぴつえきあいこう ポチッ 分泌液愛好 ポチッかんちょうあいこう ポチッ 浣腸愛好 ポチッ私の目は血走っていた。常軌を逸していた。ピーピーピーピーヤメテ クダサイ ヤメテ クダサイさつじんいんあい ポチッ 殺人淫愛 ポチッずこうねんえきししょく ポチッ 鼻腔粘液嗜食 ポチッピロン ピロン ピロン ピロン アラームが変わった。てんし ポチッ 天使 ポチッせいしゅん ポチッ 青春 ポチッぜんい ポチッ 善意 ポチッパソコンが、対抗してきた。なんだあ、こいつ!そんな言葉は辞書登録しなくてもすぐ変換できるんだよ。やめろ!じゅんすい ポチッ 純粋 ポチッじゅんじょう ポチッ 純情 ポチッじゅんしん ポチッ 純心 ポチッせいぼ ポチッ 聖母 ポチッやめろっていってんだよ!おれをおこらせるな!へいしょあいこう ポチッ 閉所愛好 ポチッせっきょうあいこう ポチッ 説教愛好 ポチッしったいあいこう ポチ 失態愛好 ポチッごうとうあいこう ポチッ 強盗愛好 ポチッどうせいあいけんお ポチッ 同性愛嫌悪 ポチッじぞくぼっきしょう ポチッ 持続勃起症 ポチッどうだ。まいったか!かみさま ポチッ 神様 ポチッせいすい ポチッ 清水 ポチッぜんこう ポチッ 善行 ポチッぜんにん ポチッ 善人 ポチッぜんしん ポチッ 善心 ポチツ負けるか!きんしんそうかん ポチッ 近親相姦 ポチッゆめ ポチッ 夢 ポチッにんぎょうあいこう ポチッ 人形愛好 ポチッけいさつかん ポチッ 警察官 ポチッアホ! 最近の警察官は信用できないんだよ!ほりゅうせいこう ポチッ 保留性交 ポチッぼらんてぃあかつどう ポチッ ボランティア活動 ポチッとうぼうあいこう ポチッ 逃亡愛好 ポチッくさなぎつよし ポチッ 草薙剛 ポチッあいじょうちんでき ポチッ 愛情沈溺 ポチッじこぎせい ポチッ 自己犠牲 ポチッいんぶそうしょく ポチッ 陰部装飾 ポチッぼせいあい ポチッ 母性愛 ポチッせいまじゅつ ポチッ 性魔術 ポチッみらい ポチッ 未来 ポチッにょうどうせっかい ポチッ 尿道切開 ポチッえほん ポチッ 絵本 ポチッえろほん ポチッ エロ本 ポチッどうとく ポチッ 道徳 ポチッおぶつあいこう ポチッ 汚物愛好 ポチッせいい ポチッ 誠意 ポチッろしゅつしょう ポチッ 露出症 ポチッぼせいあい ポチッ 母性愛 ポチッにゅうじるあいこう ポチッ 乳汁愛好 ポチッおやこうこう ポチッ 親孝行 ポチッたまごそうにゅう ポチッ 卵挿入 ポチッ………………・・・・・かくて秋の夜は、ふけゆく。
2004年09月23日
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夜中、トイレから戻ると、俺が寝ていた。「おい、起きろ!」「な、なんだよ。びっくりしたなあ」「おまえは俺か?」「そうだよ。俺はおまえで、おまえは俺だ」「どうして、もうひとりの俺がいるんだよ」「知るか、そんなこと」「のんきに寝てないで、そこ、どけよ! 俺のベッドなんだからなあ」「なにぃ! これは俺のベッドだ。 A家具店で買ったんだ」「そんなこと知ってるよ。俺が買ったんだから」「いや、俺が買ったんだ」「おまえは俺か?」「何回きくんだ。そうだよ。俺はおまえで、おまえは俺だ」「じゃあ、きのうあんなことしたことや、おとといこんなことしたこと、みんな知ってんのか?」「あたりまえだろ」「気持ち悪いなあ」「お互いさまだ」「おまえ、俺だよな?」「そうだよ、しつこいぞ」「じゃあ、どうして夜中にトイレ行かないんだ? 子供の頃からの習慣だぞ」「あっ、そういえばオシッコしたくなってきた。ちょっと行ってくる」「おい、ずうずうしく寝てんじゃねえ! ずるいぞ、俺がトイレに行っているまに」「やーい、ひっかかった」「幼稚だなあ」「お前もだ」「なあ、漫才やってる場合じゃないぞ」「そうだな。どうにかしないとな」「だいたい、お互いの思考パターンは、いっしょだな」「そうだろな」「じゃあ。ああしようか」「そうだな。そうしよう」「このサイコロをふって、大きい目がでたほうがこの家に残る」「で、小さい目のほうは、旅にでる」「うん、そうだ」「よし、やろう」「ほいっと。3だ」「ほいっと。5だ」「じゃあ、俺が旅にでる」「なんだか、うらやましいな」「いつも考えていることだからな」「うん、そうだな」「服とか通帳とか、ちゃんとバッグにつめたか?」「うん、バッチリだよ」「あ、それから、キャッシュカード、ほら。暗証番号は──」「わかってるよ」「時々、電話しろよ」「ああ、そうするよ」「これからふたりの性格、少しづつ、変わっていくだろうな」「そうだな」「じゃあ、あばよ」「あばよ」
2004年09月22日
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お日さま、ニコニコ、いい天気。甥っ子と手をつなぎ、お散歩だ。「ドーラえもん ドーラえもん ウンパカパッパァ ぼーくー ドーラーえもーんー」お歌をうたって、お散歩だ。「ドラねこ くわえた おさかな おっかけてー」「違うでしょ、ゆうちゃん。 おさかな くわえた・・・」ヒュ~~~~~~んん?確かに今、猫をくわえた魚が、目の前を横切ったよなあ。甥っ子のゆうちゃんも目を丸くしている。お金が好きな大人の私は、とっさに、甥っ子に、さっきのドラえもんの替え歌を教え込み、ふたりで歌った。「カーネがふる~ カーネがふる~ ワンサカサッサー ほーらー カネーが ふるー」ドカドカドカドカドカドカドカドカドカ・・・・・・・・お寺の鐘が降ってきた。
2004年09月21日
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予約していた歯医者さんに20分ほど早く着いたので、近くを散歩することにした。ここいら辺は、私が、昔住んでいたところだ。現在はきれいに区画整理されて建売住宅が並んでいるが、30年ほど前は、ある会社の社宅が並んでいた。父がその会社に勤めていて、私は10歳くらいまでここいら辺で暮らした。歯科医院の西側に貨物用の引込み線路がある。その線路の西側がゆるい土手になっていて、10メートルほど行くと、線路と平行に幅3メートルほどの川が流れている。川の向こうは田んぼだ。この線路から川までの原っぱが、社宅の子どもたちのぜっこうの遊び場だった。この原っぱだけは、昔のままだ。ススキやイノコヅチなどが群生し、コオロギや鈴虫が競うように鳴いている。そういえば、ここでよく、かくれんぼをしたっけ。土手にすわり、イノコヅチを引っこ抜いて、種を服につけてみる。「あっ、やっちゃんのお父さん!」えっ?誰だ?むこうの川にかかっている橋の下の方からだ。「やっちゃんのお父さんでしょ?」ススキの穂先に少年の顔が現れた。少年は小走りで土手の下まで来て、私を見上げ、「ボクだよ。向かいの家のケンジだよ」と言って、鼻水を手のひらでぬぐい、その手のひらを半ズボンの横でぬぐった。ケンジ?ケンジだって。私の背中をゾォ~と冷たいものが走った。「ねえ、おじちゃんとこの やっちゃん、 オニなのに、なかなかボクをつかまえに来ないんだよ」こ、この子は・・・。「どうして黙ってるんだい、おじちゃん」ケンジは、30年前、いっしょに遊んだ友達だ。あだなは、「ジンケ」──名前を逆さまに読んだのだ──といった。確か、ジンケは・・・。「ねえ、おじちゃん。 やっちゃん、帰っちゃったんなら、呼んできておくれよ」やっちゃんというのは私の小さい頃の呼名だ。今、この子、ジンケは、私を30年前の私の父親だと思っている。確か、ジンケは・・・。「ボク、ず~と、橋の下にかくれてるのに、やっちゃん、帰っちゃうなんてズルいよ!」思い出した!ジンケは、30年前、あの川の下流1キロほどのところで、溺死体で発見されたんだ!「あ~あ、つまんない。ボク、待ちくたびれて、橋の下で眠っちゃったよ」「・・・・・」「ねえ、おじちゃん。やっちゃん、呼んできておくれよ。 おじちゃんたらあ。どうして黙ってんのさあ」「ジン・・・、ケ、ケンジくん」私はやっとそれだけ言った。「まあ、いいや。それじゃあ、おじちゃんが、やっちゃんの代わりにオニになっておくれよ」そう言うと、ジンケはススキの奥に走り去った。ジンケ。許してくれジンケ。ジンケ。涙がボロボロ出た。私が、あの時、ちゃんと探していれば、君は死なずに済んだんだ。ジンケ。許してくれ。「もう、いいよ~~~~」遠くのほうでジンケが言った。涙で前がよく見えなかったが、私は必死にススキをかきわけた。「よ~し、ジンケ~、待ってろよ~~。 見つけてやるぞ~」声がふるえていたのが、ジンケにばれなかっただろうか。かまうもんか。「ジンケ~。すぐ見つけるぞ~~~~ ジンケ~~~~、ジンケ~~~~~~~」
2004年09月20日
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面倒な方は ---------------の下 からお読みください。後楽園ホールにボクシングを観に行くついでに、御茶ノ水で電車を降り、出版社に寄った。‘ついで’などといっては出版社サマに怒られる。むしろ、こちらがメインというべきだろう。なぜ寄ったかというと、投稿用の原稿を手渡すためだ。童話を3編書いた。郵送してもいいのだが、直接持っていったほうが印象がいいだろう。下心がみえみえなのだが、かまうものか。読まれなければ話にならない。ボロッちぃビルの階段──エレベータはないのだ──を3階まで上がり、ボロッちぃドアを開ける。受付のお嬢さんなどいない。室内は、いなかの市役所のようだ。仕切りの向こうには机が8つほどある。誰もいない。みんな出かけているのだろうか。仕方がない。ショルダーバッグから、原稿が入ったA3の封筒を出し、仕切りの上にある台に置く。封筒はもちろん軽くのりで封をしてあるだけだ。頑丈に封をすると、編集者が開封を面倒くさがって、ポイっとクズ箱に放り投げるのを、私は知っているからだ。------------------------------------帰ろうとすると、奥のドアが開き、「あっ、お客様ですか。いらっしゃいませ」と言いながら、ノーネクタイの恰幅のいい男性がやってきた。編集長らしい。「お、おじゃましてます。投稿の原稿を持ってきました」「ああ、童話のね。それはそれは、どうもどうも」男性は、よくあることらしく、たいして驚きもせず、封筒を手にした。裏に書かれた私の名前をみて、「ああ、あなたですか。良く投稿される方ですね」と言った。「はい。いつも投稿させて頂いてます」「うんんん。あなたでしたか」男性はあごに手をあて、意味ありげな顔で私を見た。「あなたね。投稿先を間違っていますよ」「え?」「投稿先が違いますって言ってるんですよ」「なんですか。いきなり」「はっきり言います。あなたの作品は童話の体をなしてないんですよ!」「げっ!」「わるいことは言いません。童話を書くのはおよしなさい。」はふ はふ はふ と、私は口をパクパクさせるしかなかった。「よく、こういう勘違いをされるかたが、いるんですよ」「で、でも、私、学生時代、御社の雑誌に童話や詩を何篇か載せて頂いたことがあるんです」私は体勢を立て直して、どうにか言った。「それは昔のことです。今のあなたの文章には致命的な、こうなんていうか・・・、そう、トゲがあるのです。 前回もあなたの履歴を拝見して、思ったのですが・・・」そう言いながら、男性は封筒を開封し、私の簡単な履歴書を取り出した。「ほら。 詳しく言うのは遠慮しますが、17歳あたりから、屈折した人生を歩んでいるではないですか。 もう、あなたは、童話を書ける精神じゃないんですよ!」ドッカ~~~~~~~~ン。大きな木槌で頭をたたかれたみたいだ。「わたしはこの業界に35年いるんです。 その私が言うのです。 ジャンルを変えて、別の出版社に応募なさい」男性は、たたみかけるように、めまいで倒れそうな私に言った。「わかりました。ありがとうございました」気がつくと、私は人ごみの中にいた。もう童話を書ける精神じゃない・・・致命的なトゲ・・・屈折した人生・・・・さっき言われたことが頭の中をかけめぐる。グ~と、お腹が鳴った。どこかに喫茶店でもないかなと、顔を上げ看板を見回す。‘あなたの記憶、消します’そんな文字が私の目に飛び込んできた。記憶を消す? 本当だろうか。私は吸い込まれるように、その看板のあるビルに入っていった。「はい、いらっしゃいませ。 記憶を消したいのですね。 はいはい、承りましたよ。 ご安心ください。ばっちり、消しますよ。 ここに、忘れたい出来事とそれを経験した年代を記入してください」なんと、要領のいいことだ。私はためらうことなく、白衣の男性に渡された用紙に必要事項を記入した。白衣の男性は、私を電気椅子のようなところに座らせ、電線がたくさん付いたヘルメットのようなものを手にして言った。「それでは、はじめますよ。よろしいですか?」「あっ、ちょっと待ってください。トイレに行きたいんでけど」私はおじけづいた。私の経験、私の思い出、いいことも悪いこともある。悪いことだけ、消し去っていいものだろうか。しょうがないな、という顔で、「おトイレはあちらです」と男性は指し示した。私は、立ち上がり、ゆっくり出口に向かった。「あっ、そちらじゃないです。おトイレはこちらです」実際ちびりそうだったが、今は我慢だ。出口の横に置いたショルダーバッグをつかむと、私は、ドアを開け、全速力で階段を駆け下りはじめた。やめたやめたやめた。記憶を消すなんて、できない。「ちょっとお客さ~ん!」と叫びながら、タタタタタタと男性が追ってくるようだ。逃げろ逃げろ。そりゃあ、私は屈折した人生を歩んでいるよ。家族・友人の死、裏切り、5度の転職、病気、離婚・・・・・。それが何だっていうんだ!階段を降りきり、ビルを出る。男性は追ってくるのか?振り向かずに、人ごみをかき分け、駅に向かって走り続ける。悪いことも良いことも全部ひっくるめて、今の私が出来たんだ。暗さを知らなければ本当の明るさは分からないではないか。痛めつけられなければ他人の痛みは分からないではないか。駅が見えてきた。私は走る。走り続ける。
2004年09月19日
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わたしは死にました。ついに死んでしまいました。わたしの眼下2メートルに私は横たわっています。ベッドの上です。安らかな顔です。苦しまなかったようです。突然死でしょうか。眠るように、いや、睡眠中に死んだようです。一昨年逝った祖母の死に様をみるにつけ、わたしは思ったものです。死ぬ時は、ポックリ逝くか、まわりに迷惑をかけているのもわからないくらい完全にボケてから逝きたいものだと。祖母はさんざん家族に迷惑をかけて死んでいきました。ボケたから、本人は苦しまなかったようですが。下の私は、見る限りポックリ逝ったようです。過労死でしょうか。とにかく、めでたしです。なぜか思い残すことはありません。ただ、心配なのは、私の体が誰にも発見されずに腐って、見る影もなく醜くなることです。だとしても仕方がありません。ぜいたくは言いません。望みどおりの死に方です。それだけでも感謝しなければなりません。遠くでわたしを呼んでいるようです。なんだか、とてもいい気持ちです。あっ、向こうの方、そう、長いトンネルのようなその先に光が見えます。満たされるような懐かしいような、不思議な気分です。吸い込まれていくようです。さようなら、みなさん。お元気で。おや、下の私が目を覚ましたようです。起き上がってスリッパを履いて、眠い目をこすりながら、いつものように夜中のトイレのようです。下の私は死ななかったようです。それでは、わたしは誰でしょう?このわたしは、いったい誰でしょう?もうどうでもよくなりました。光が、私を呼んでいます。さようなら、みなさん。わたしは行きます。生まれ変わるとはこういうことではないでしょうか。
2004年09月17日
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秋らしくなってきた。日差しが弱くなり、涼しいくらいだ。近所の公園のブランコにすわり、昼食のパンを食べることにした。公園には私以外だれもいない。去年、近くに新しい公園ができた。子どもやママさんは、みんなそちらに行くようになった。ここには、たいした遊び道具がない。ブランコとシーソーと砂場。それだけだ。3つのパンを食べ終わり、ゴミのビニール袋を胸ポケットに入れて、立ち去ろうとすると、「おじさん」と誰かが呼びかけてきた。見ると、となりのブランコに少年がすわっている。7,8歳くらいの見なれない子だ。「おじさん、暇そうだね」なんだい、いきなり。「少し、お話して、遊んでよ」子どもと話すのは嫌いではない。甥っ子とは精神年齢が同じだと思うくらい話が合う。「いいよ、ぼうや」少年は、ブランコを少しゆらし、しばらく黙っていた。「なに、話そうかなあ。 そうだ、おじさん、近所の人にあだ名づけして遊ぼう」「え、あだ名?」「じゃ、さっそく始めるよ。 おじさんちの向かいの奥さんは、いつもアタマのてっぺんから黄色い声を発しているから、 カナキリン。 はい、次、おじさんの番。」「うまいな、ぼうや。 そうだなあ。 斜め向かいの井上さんは、ズボラン」「え?どうして?」「いつもクルマを自宅前の公道に違法駐車させているからだよ」「へえー、なるほどね」2人の会話を整理すると以下のようになる。<本名> <あだ名> <理由>田所の奥さん カナキリン いつもアタマのてっぺんから黄色い声を発している。井上の奥さん ズボラン いつもクルマを自宅前の公道に違法駐車させている。鈴木の奥さん ローゼ ノイローゼぎみで家に閉じこもりきり。 佐藤の奥さん シリッキー 旦那を尻にしいている。佐藤の旦那さん シリシッカー 奥さんの尻にしかれている。小泉の奥さん ムッシンK 夜中や早朝に掃除機をかけたり洗濯機をまわしたりする。佐々木の奥さん 息子自慢 会うと子どもの自慢しかしない。田中の奥さん ビッキー 時々、万引きする。大出の旦那さん オクジカ 奥さん、実家に帰った。小林の旦那さん サンヤー やくざだ。山本の旦那さん キドリン 家の中でもネクタイをしている。中村のお婆さん ヒトグラ 一人暮らしでさびしそう。「このくらいにしとこうよ」少年は、飽きたのか、ブランコを大きくこぎ出した。「そうしようか」「そうだよ。 悪口ばっかになっちゃうよ」冷静な子だ。「近所だけで、これだけの人間模様。 ましてや世界中だと、たいへんだね」少し生意気だな。「じゃあ、ぼうや、最後におじさんのあだ名を考えてくれよ」「んんー、そうだなあ クモツカってのはどう?」「クモツカ? どうして?」「雲をつかむように実体が無く、いつもふわふわしているからだよ」私はガツンっと頭を叩かれたような気がした。「おじさん、どうして黙ってるの? あっ、僕のあだ名を考えてるんでしょう? 無駄だよ、おじさん。 だって、おじさんは僕だもん」そう言って、少年はふわっと消えた。ブランコは揺れている。 遠くで、カナキリンの声がした。
2004年09月16日
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窓をあけ、朝の空気を思い切り吸い込む。出窓に置いたコーヒーをひとくち飲むと、体中にエネルギーがみなぎる。ベランダの手すりにとまったスズメに「おはよう」とあいさつする。スズメはこちらを見て小首をかしげ、「ピョパヨウ!」と言って、飛び去る。ロマンチックを気取るのもここまでだ。部屋の隅では、行き場を失ったワタボコリがうずを巻いて踊っている。「あああああああ、いやになるよ」逃げ回るワタボコリをつかまえて、まるめて屑かごにほうり込む。ちょっと掃除を怠ると、これだ。最近、掃除機をかけてないなあ。さいごにかけたのは、3ヶ月くらい前だったか。面倒なんだよなあ、掃除って。ピンポ~ン悩んでいると、チャイムがなり、パジャマ姿のままでドアを開けると怪しげなセールスマンが、「こんにちは。旦那さん、お掃除にお悩みですね。 ちょうど良かった。 これ、お掃除ロボ 『ペペポイ』 です。 ただいま、お試し期間中です。 使い方は、簡単です。 この説明書を読んでください。 また来ます。」と、一気にまくし立て、20センチ四方ほどの段ボール箱を置いて、行ってしまった。なんと、グッドタイミング!まるで、作り話だ。箱から出てきたものは、高さ15センチくらいの円柱のロボットだ。スターウォーズのR2-D2(または、宇宙戦艦ヤマトのアナライザー)を小さくした感じだ。説明書を読むのが面倒なので、最初に目にとまった頭部の黄色いボタンを押してみた。「ソウジ ソウジ ソウジ~ ソウジ ソウジ ソウジ~ ボクハ オソウジ ロボ ペペポイ ホイッ! ス~イ スイ スイスイ~ ス~イ スイ スイスイ~ ナンデモカンデモ スイコム ボク ペペポイ ヘイッ! ピカピカ ピッカピカ~ ピカピカ ピッカピカ~ ツルン ツルツル シンピンドウヨウ ボク ペペポイ」バンッ!頭部のボタンを思いっ切りひっ叩いた。「うるさい! 静かにしろ!」止まってしまったので、もう一度ボタンを押す。「ソウジ ソウジ ソウジ~ ソウジ ソウジ ソウジ~ ボクハ オソ・・・」「うるさいんだよ! それに歌が字余りだんだよ!」「シツレイシマシタ。 ハジメマシテ。 ボク、ペペポイ デス」「おっ、人間の言葉を認識できるのか?」「モチロンデス。 ボクハ サイコウキュウ ロボ ペペポイ ハイッ!」「歌はいいから、さっそく掃除してくれ。 何ができるんだい?」「ホコリ・ゴミ ナドノ キュウイン、 タタキ、ゾウキンガケ、ワックスガケ・・・、 ナンデモゴザレ ボクハ オソウジ ロボ ペペポイ ヘイッ! 」そう言いながらペペポイは、足を伸び縮みさせたり、手の先から雑巾やハタキやブラシを出し入れさせた。「じゃあ、まず、ホコリを吸い込んでくれ。 それから雑巾がけして、ワックスをかけてくれ。 オレは出かけるからな。 夕方帰ってくるから、頼むよ」急いで着替え、食パンをくわえて家を出た。ペペポイとの会話におもわぬ時間をとられてしまった。駅まで走らなければ。仕事(クライアントとの交渉・プレゼンテーション)を何とかやりこなし、まっすぐ帰ろうと思ったが、仕事がうまくいったので緊張が解け、途中でなじみの居酒屋で軽く飲む。ほろ酔い気分で店を出て、家路につく。駅を出て、コンビニの角を右に曲がり、2つ目の交差点を左に曲がり、まっすぐ行った突き当りにはたして、家は、無かった。それどころか、家が建っていた場所にぽっかり穴が開いている。恐るおそる覗き込む。ゆうに地下100メートルはありそうだ。深すぎて良く見えない。な、な、なんなんだよ、これは。こんなのありかよ!足元に箱がころがっている。ペペポイが入っていた箱だ。ふたを開け、説明書を取り出し、街燈に照らして読む。------------------------------------------ご使用前に必ず以下の説明をお読みください。 ・当社のロボット「ペペポイ」は、マルチ掃除ロボットです。 ・吸引時の注意 吸引した物は、内蔵の異次元機能で宇宙に飛ばしますので、 内部の掃除およびフィルターの交換の必要はありません。 出荷時、吸引能力は「最強」にセットしてあります。 このままですと、接触したもの全てを吸い込んでしまいますので、 一般家庭でご使用の場合は、必ず「最弱」にセットし直してください。 ・・・・ ・・・・ ・・・・------------------------------------------私は説明書を握りつぶし、穴の底に向かって叫んだ。「バカヤロ~ まだ、家のローン、30年以上もあるんだぞ~~~~~! ふざけんな~~~~~~~!」すると、奥のほうから、かすかに聞こえてきた。ス~イ スイ スイスイ~ ス~イ スイ スイスイ~ ナンデモカンデモ スイコム ボク ペペポイ ヘイッ!ピカピカ ピッカピカ~ ピカピカ ピッカピカ~ ツルン ツルツル ・・・
2004年09月14日
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思い切って書こうと思う。そして、みなさんに少しでも、私の残酷性を知ってもらい、死んでいったものたちへの供養としたい。けさ、姉から、電話があった。殺しの依頼だ。「またかよ」渋る私に「お願いよぉ。また、しつこいヤツに付きまとわれているの。 子供も怖がって眠れないみたいなの」と、ひそひそ声で話してきた。ん?なぜ声をひそめるのだ?やつは、近くにいるのか?思ったより事態はひっ迫しているようだ。しかたがない。かわいい甥っ子のためだ。私は手袋などの殺しの道具をバッグに詰め、愛車のフェラーリに乗り込むと平均時速150キロメートルで姉の住む隣町の公営団地に向かった。だいたい旦那がだらしなさ過ぎるよ。愚痴だ。私と義兄との仲は悪い。私は弱虫は嫌いなのだ。7分25秒で団地に到着した。バッグを脇に挟み、姉の住む棟の4階へと足音を立てず、しかも素早く駆け上る。ヤツはプロだ。わずかな足音にも敏感に反応し、たちまち逃げ去ってしまう。ドアを静かに開け、入り口に立っていた姉の指差す方に静かに歩み寄り、ヤツがいる手前の床にバッグをそっと下ろす。バッグから取り出した軍手を素早くはめ、キンチョールをヤツめがけて噴射する。ゲジゲジ。正式名称:蚰蜒(ゲジ)。ムカデ網・唇脚類・ゲジ目の節足動物。十五対の長い脚が特徴。日本にはオオゲジなど五種が分布。人間に害はない。 by 広辞苑
2004年09月11日
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むかし、Easy Seekに書いたものですけど。---------------------------------------------------------- 〔女子高生〕〔女子高生〕〔会社員〕【ドア】【ドア】〔女子高生〕〔女子高生〕 《吊革》 《吊革》 《吊革》(OL)(OL)(OL)《吊革》 《吊革》 (老人)(会社員)(会社員)(OL)(OL)(痴漢)(OL)(会社員)(OL) (先生)(OL)(女子高生)(会社員)(助教授)(OL)(OL)(OL)(老人) (女子大生)(女子大生)(老人)(女子大生)(痴漢)(OL)(痴漢)(主婦) 《吊革》 《吊革》 《吊革》(男)(女)(女) 《吊革》 《吊革》 〔女子高生〕〔女子高生〕〔会社員〕【ドア】【ドア】〔女子高生〕〔女子高生〕 ---------------------------------------------------------- ---------------------------------------------------------- 〔だり~~〕〔ピポパッ〕〔会社か〕【ドア】【ドア】〔ぽ~~~〕〔・・・・・・・〕 《吊革》 《吊革》 《吊革》(昨晩)(フン)(ヘヘ)《吊革》 《吊革》 (ヨロ)(だり~)(しゃき)(ヘラ)(びし)(ムラ)(イヤ)(へへへ)(ムカ) (うう)(あれ)(ポケ~)(よしゃ)(オホン)(イヤ)(結婚)(あん)(ヨロ) (ABCD)(就職就職)(ヨロ)(へらへら)(ウシシ)(イヤ)(へへ)(きゃ) 《吊革》 《吊革》 《吊革》(眠ぃ)(辞)(ゲッ) 《吊革》 《吊革》 〔昨晩ヘヘ〕〔今朝ウホ〕〔頑張ろ〕【ドア】【ドア】〔ピポパパ〕〔ピポポパ〕 ----------------------------------------------------------
2004年09月10日
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私は、クルマを運転していた。夕暮れだ。信号が赤なので止まった。先頭だ。 青になったので走り出した。ふいに左側から、2人乗りの原チャリ(50ccバイク)が私を追い抜き、前方に出た。私はブレーキを軽く踏み、減速した。後続車も危険を察知し、私から100メートル以上離れた。原チャリは、小刻みに蛇行して私を挑発している。スピードは20キロほどのノロノロだ。2人は白いツナギ姿だ。ノボリこそ立てていないが、昔なら、「横浜銀蠅」、最近なら、ナイナイの「数取り団」ってところか。うしろのヤツがこっちを見て、舌を出している。両足をひらいたり閉じたりしている。耐えるんだ。せいやんちゃん。ガマンだガマン。うしろのヤツがこっちを見て何か言っている。「バ~カ、バ~カ」と言っているようだ。耐えるんだ。せいやんちゃん。あんなアホガキを相手にしてはいけない。おまえは大人だ。ガマンだガマン。うしろのヤツが荷台で立ち上がり、お尻をふりふりしている。耐えるんだ。せいやんちゃん。うしろのヤツが吐いた唾が、フロントガラスにかかった。耐えるんだ。良く見ると痰が混じっている。耐えるんだ。耐え耐え・・・たたたたたた・・・タコやろう!ざけんじゃねえ!私は、アクセルをめいっぱい踏み込んだ。うしろのヤツは、接近してきた私に驚き、前のやつに怒鳴って知らせている。まもなく私のクルマは原チャリを跳ね飛ばした。ご主人を失った原チャリは、左側の縁石を飛び越えてケーキ屋に突っ込み、前に乗っていたヤツは私のクルマの左の前輪と後輪にゴキ、ゴキと踏まれ、うしろのヤツはしばらくクルマのボディに乗っかり、フロントガラスに貼りついて恐怖におののいた顔を見せていたが、減速すると前方に滑り落ち、しばらく引きずられた後、ギャリギャリギャリとクルマの底をこすって後方に流れた。私は急ブレーキを踏んで止まり、バックをして、2人をもう一度轢き、前進して、また轢いた。原チャリが突っ込んだケーキ屋の脇にクルマを止め、あやまった。私のクルマを避けて通るクルマが迷惑顔でこっちを見ている。原チャリのふたりは、他のクルマにさんざん轢かれ、あとかたも無くなった。 注:途中からフィクションです。 よろしく!
2004年09月09日
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以前勤めていた会社の同期Kから、同窓会への誘いのハガキがきた。人付き合いの悪い私ではあるが、当時付き合っていたM子が来るだろうという下心も働き、出席することにした。場所は、県内でも上のランクに入る高級ホテルのホールだ。お酒を飲むのでクルマは控え、最寄りの駅まで電車で行き、そこから歩いて行くことにした。確か、ここだったよなあ。「●●会社同窓会様」というボードが出ているので、ここで間違いないな。10分ほど、遅刻してしまった。階段を駆け上がり、ホールのドアを開けると、すでに20名ほどが来ていた。いや~ん バカんっそこは、お尻なの~ ウッフン陽気なカラオケの声が聞こえる。あいつは、確かYだったな。相変わらずふざけたヤツだ。「やあ、遅いじゃないか」幹事のKが話しかけてきた。「わりー、わりー」軽く受け流す。「みんな待ってたんだぞ。遅れるなら連絡しろよ」そうだ。Kは、確か神経質な上に、話し出すと長かったっけ。「電車が遅れて・・・」「まあ、いいや。さあ、奥へ奥へ」室内は、やけに騒々しい。みんな、すでに相当お酒を飲み、出来上がっているようだ。「みなさ~ん、お待たせしましたあ。S君が来ましたあ~~~~」おおぉぉぉ と、どよめきが起こり、みんなの視線が私に集中する。「おお、SだSだ」 「よっ、待ってました」 「Sちゃん、遅いじゃないのよ~」おい、待てよ待てよ。私は主賓か?そんなこと聞いてないぞ。「さあ、こちらへどうぞ~」キャバクラ顔に磨きがかかったH子が手を取って導き、奥のカラオケ機器の横にある椅子に座らされる。すると、全員が寄ってきて、私を取り囲むような格好になった。よく見ると、みんな、腐った魚のような目で私を睨んでいる。まるでゾンビだ。「Sさん、お久しぶり~。3年ぶりかなあ」こいつは誰だったっけ。名前を忘れた。「なんだよ、なんだよ。みんなで囲んじゃって。変だぞー」「変なのは、オマエだ!」Kが唾を飛ばさんばかりに怒鳴りつけてきた。臆病な私は、急に萎縮してしまう。「そ、そ、そう言えば、M子は来てないみたいだね」平静を装うように私は言った。「おまえ、本当に何にも知らねえのかよー」なんだ? この状況は、ちょっとヤバイんじゃないのか?私は身の危険を感じ、腰を浮かせて出口を見た。ドアの前には、まるで見張るようにNが仁王立ちしている。「M子は、死んだよ。それに社員の3割は死んだんだ。 みんな、おまえのせいだぞー」「え? ど、どういうことなんだよ? ぜんぜん、わからないよ」私はこの会社を辞めたあと、次の会社ではまもなく海外出張し、半年前に帰ってきたので、当時の会社の様子はおろか日本の出来事も把握していない。「これでも読め!」Sが、使い古したスクラップブックを投げてよこす。ふるえる手で開く。新聞記事がファイルされている。黄ばんでいる。だいぶ古いようだ。------------------------------------------平成12年●月●日 I県S郡の・・・●●株式会社S工場で、集団食中毒!保険庁は・・・で、食中毒が発生したと発表した。・・・・・・・・昼食後、全社員(267名)が腹痛をうったえ、近くの県立病院に運ばれた。うち、82名が死亡し、171名が頭痛や吐き気をうったえ入院した。・・・・・・・・保険庁科学検査課の・・・によると、木屑に発生する黴(かび)と工場で使われているプリント版の溶解液が反応し、猛毒の物質に化学変化したものと判明・・・・平成12年●月●日 I県S郡の・・・●●株式会社S工場、閉鎖。 本社(東京都大田区)も操業停止。・・・・・・・・・・・・---------------------------------------------「みんな、おまえのせいだあああ!」「な、な、なんだよ。こ、これがどうして俺のせいなんだよ」「おまえが置いていった箸のせいなんだよ。まだ、わからねえのか!」え?箸?箸って、ごはんを食べるときの、あの箸か?しばらく頭を抱えていた私は、はっ、と気付いた。そうだ。そういえば、辞める前にこんなことがあった。この会社では、昼食時、みんなで食堂に集まり、外から取ったお弁当を食べていた。その時、箸は自分持ちで、使った後は自分で洗って、ひとつのプラスチック製のかごに入れておくことになっていた。無精な私は箸(木製)を洗わずに箸用ケースにしまい、そのままかごに入れていた。5日ほどの夏休みが終わった後、かごから取りだした私の箸用ケースを開けるとびっちり黴が生えていた。私は、思わず、うわっと叫んでケースの蓋を閉め、かごに戻した。横でKがニヤっとしながらのぞき込んでいたっけ。その日は、割り箸で食べた。次の日、私は予定通り退職届を出して、会社を辞めた。「ま、まさか、あの箸が・・・」「その、まさかなんだよ。 見ろ、俺の腕を。その時の後遺症で麻痺しちまったんだよ」Sが幽霊のようにブラブラと左手を振った。「私は左目を失明したわ」 「俺は左半身不随だ」 「オリは脳軟化症デヤ~」「アタイは全身脱毛症よお」 「俺は味覚不能だあ」・・・・・・わっ、近づくな近づくな!「さあ、みなさ~ん。いよいよ、本日のメイン・イベントで~す」陽気なYがカラオケマイクで叫ぶ。サ~Kの合図とともにカーテンが引かれた。みんなは、バッグやふところからバットや出刃包丁を取りだし・・・・
2004年08月18日
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8月14日(晴れ) 奇妙なことに気づいてしまった。 1か月ほど前に、うちの向かいに越してきた家族のことだ。 越してきた旨の挨拶が無いのは、しょうがない。 今どきの人間だ。 回覧板を渡すためドアホンを押したが応答がないのも、しょうがない。 よくあることだ。 庭にいる奥さんに「こんにちは」と言ったが無視されたのも、しょうがない。 この街ではめずらしくない。 奇妙というのは、その家族の判で押したような生活だ。 病気療養中で暇な私は、この1週間、向かいの家族の行動を調べてみた。 それを以下に簡単に記す。 6:30 飼い犬が5分くらい激しく吠える。 6:34 2階の南側の窓が開き、40才くらいの旦那さんが顔を出す。 6:56 30才くらいの奥さんが表に現れ、ポストに入った新聞を取っていく。 8:28 掃除機の音が聞こえてくる。 9:48 奥さんが2階のベランダで洗濯物を干し始める。 10:30 庭で夫婦と3才くらいの娘が遊び始める。 12:15 やきそばの臭いがしてくる。 14:10 ピアノの音がしてくる。 16:09 夫婦で草むしりを始める。 17:10 奥さんが2階の洗濯物を取り込み始める。 17:35 1階の台所らしき西側の部屋に明かりが点く。 18:00 カレーの臭いがしてくる。 18:37 ユーミンの「埠頭を渡る風」が聞こえてくる。 20:30 2階の東側の部屋に明かりが点き、夫婦の怒鳴り声と娘の泣き声が聞こえてくる。 20:48 銃声が3発聞こえる。 物音ひとつしなくなる。 24:00 家中の明かりが突然消える。 そのまま朝を迎える。 6:30 飼い犬が5分くらい激しく吠える。 以上のような光景が、1分1秒違わず、毎日毎日繰り返されている。 奇妙と言えば、もうひとつある。 その家の真上の空だけ、いつも晴れていることだ。 まるで、異次元からひょっこり迷い込んできた家族のようだ。 わたしは意を決し、その家に突入することにした。 ドアホンを押しても無視されるのはわかっている。 新聞を取りに出てきた奥さんに話しかけても同じことだろう。 ここはもう、強行突破しかない。 塀をよじ登り、「えい」っと・・・。 「うわ!」 痛っ。いてててて。 はじき飛ばされてしまった。 まるでバリアだ。 んんんんんん、 こうなったら、穴を掘り、地下から侵入だ。 よいっしょ、よいっしょ、えっちら、ほっちら・・・。 ガギゴゴ! うわ! 硬くてこれ以上堀り進められない。 くそおお、ここまで掘ったのに。 もうヤケだ。 門扉に体当たりだあ ドカ ドカ ドカドカドガガ。 ふ~。 だめだ。 こんなことやってるまに、もう夜の8時半を過ぎてしまった。 近所の人が変な目で見ている。 かまうものか。 あきらめないぞ。 体当たりだあ。 エイッ!。 ドガ ドガドガ。 あっ、 おっとっとっと・・・。 開いた! ドアは、どうだ? ドアも開いたぞ。 「こんばんは」 返事がない。 正面にある階段で2階に駆け上がる。 ダダダダダ バ~ン バ~ン 銃声だ。 わっ、踊り場で奥さんが拳銃をかかえ、こっちを見ている。 う、う、撃つな! お、俺は関係ないぞ! バ~ン(私、撃たれる) バ~ン(奥さん、自殺だよ) 8月14日(晴れ) 奇妙なことに気づいてしまった。 1か月ほど前に、うちの向かいに越してきた家族のことだ。 越してきた旨の挨拶が無いのは、しょうがない。 今どきの人間だ。 回覧板を渡すため・・・・
2004年08月14日
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まるで、イナゴがバッタの襲来。甥っ子2人は、11歳と1歳。遊びにくると、あら、不思議。3時間もしないうちに 牛乳1リットルパック1本半、 ポテトチップ・エコパック5袋、 カール・チーズ味1袋、 オロナミンC7本、 ヤクルト3本、 アロエヨーグルト3個、 バナナ4本、 せんべい7枚、あっというまに無くなるよ。特に下の子の食欲は、すさまじい。確実に母方の祖母の血を引いている。食べるのに飽きると、立ち上がって、せつない顔して踏ん張るよ。んんんん~~~~~~~~~。くしゃい、くしゃい。寝ころがして、オムツを脱がせると、ほーら、ほらほら、ゴルフボールのようなまん丸うんちだ。ペチャ便じゃなくて、助かった。あっ、今日も聞こえてきたよ。ブ~ンブンブンブンイナゴかバッタの羽音が。
2004年02月03日
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ちょめちょめクラブモークンニ娘。
2004年01月31日
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ラストちゃぶ台男子十二珍棒
2004年01月30日
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にっきゅうさん
2004年01月12日
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クシュン。
2004年01月11日
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百姓日記~大塩平八郎の乱などニッキニッキニッキニッキ、にきの菓子 カメ屋まんねんどう、にきの菓子 ばんざ~~~い!その息子 ニッキニッキ、ニッキゴルフ~ニッキー・チェン:酔拳、猿拳、蛇拳 etcニッキー:主演はシルベスタ・スタローン
2004年01月10日
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新歓コンパで、後輩に強制する飲み方「にっき、にっき、にっき、にっき・・・・・」飲み物:ニッキ・ウイスキー
2004年01月09日
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森田日記少年隊のニッキニッキーマウスゴダイゴのニッキー吉野
2004年01月08日
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