全13件 (13件中 1-13件目)
1
『ふふふ』自然に口元に笑いがこみ上げて来たなんて気持ちいいんだろう今頃、ロブはバスタオルを腰に巻いてシャワーから大きな期待を抱いて出てくる頃だろうそんな姿を想像するだけで、声を出して笑ってしまいそうだ『バカな男。。。。。』マヌエルもライアンもロブもみんな結局は、下半身の欲望に支配された情けない動物『思いっきりロブを舞い上がらせてやってから、捨ててやれば良かったかしら』エレベーターの中で、必死に笑いをこらえる私を見て、周りの客が少し変な視線を投げるそんな事さえも今の私には心地よかった『ピーーーーーーン』エレベーターがロビー階へ着いた事を知らせる『これから飲みなおそうかしら』そんな事を考えながらロビーを横切り自動ドアへと向かうそこへ、スーッとタクシーが滑り込む『あっ』私は思わず声を上げたタクシーから金髪の若い女の肩を抱いて出て来たのはライアンだった
2006.06.07
コメント(2)
私はベッドに腰を下ろし、夜景をぼんやりと眺めた。何故か涙が出てきて、夜景がぼやけて見えた。何でここに居るんだろう。バスルームからはシャワーの音が聞こえる。気がつくとロブの携帯が鳴っていた。何気なく目をやるとそれはロブの奥さんからだった。何故、そんな行動に出たか分からない。でも私の手は携帯をつかんでいた。「もしもし?」電話口の向こうから少し刺々しい声が聞こえた。「ロブ、何度も電話したのよ。聞いてるの?ロブ?ロバート???」彼女がまくし立てる。「ロブはシャワーを浴びてるわ」私は答えた。「は?あんた、誰?」「私?ふふ、さあね。」「ちょっと、ロブを出して!!!」電話の向こうから怒りが伝わってくる。何故こんなことをしてるのか、私にも分からない。「だから、彼は今、シャワー中。そうね、出たらお知らせするわ!」私はそう言って、強引に電話を切った。胸がドキドキした。そして、私はバスルームのロブを残して部屋を出た。爽快だった。
2006.05.23
コメント(1)
飛び込んだロブの胸の中で、ロブの鼓動がだんだんと早まるのを感じていたもうどうでも良かった仕事も恋愛も何もかも忘れて、ほんの一瞬だけそういうしがらみを考えなくていいそんな時間が欲しかった私の背中にしっかり廻ったロブの腕が、さらに力を入れて私を抱きしめた静かに私はうなづいたロブの部屋から見える窓には、高速のライトがきれいな間隔をあけてイルミネートされていた7年も住み慣れた街が、今夜はやけに見知らぬ街に感じる窓の下を歩く人の流れを見つめながらこの街では、自分もこんなちっぽけな点のひとつでしかないんだとさらに寂しさがこみ上げてきた『僕、シャワーを浴びて来るよ キミエは少しゆっくりしたらいい』『そ、そうね そうするわ なんか、いつもよりお酒が回っちゃったみたい』バスルームへ向かうロブの背中を見ながら後戻りはできないと自分に言い聞かせていた
2006.05.18
コメント(0)
私は始めてそこで気がついた。ロブに会ってから、どこかで彼と同じ目を見たことを。ロブのメガネの奥の目は、昔、私が死ぬほど愛した男と同じ目だった。昔。。。ううん、本当はそんなに昔のことでは無い。たった、3年前のこと、でも、私の中で無理矢理に封印していた。思い出すのも辛い、彼との2年間。死ぬほど愛して、そして、死ぬほど憎んだ。タイラー。。。その男と同じ目を持つのがロブだった。そして、ロブは皮肉なことにタイラーと同じ香水も使っていた。香りは、人間の六感の中で一番強く印象に残る。ああ、何で今まで忘れていたのだろう。いや、忘れていたのではない、忘れようとしていたのだ。忘れようとしても忘れられなかった唯一の男。薬に溺れたり、アルコールに身を任せてみても忘れられなかった。自分をいじめればいじめるほど、心の片隅に置いたはずの思い出をくっきりとした輪郭を持って思い出させたっけ。やっと、少しずつだけど、忘れていたのに。。。何で今更になって?「大丈夫かい?キミエ?」ロブの言葉が自信に満ち始めていた。気がつくと私はロブの胸に飛び込んでいた。「キミエ、部屋に、来ないかい?」続く
2006.05.02
コメント(0)
しばらくの間、二人の間に沈黙が流れたグラスの中で揺れるグリーンオリーブに目を落とし目の前にいるロブに話しかけることさえ忘れた私とそんな私を静かに見つめるロブとの間で、数分が過ぎていった『。。。。。。。。キミエ』マーティー二で、唇を濡らせながらロブが口を開いた『無理に聞くつもりはないよ 君と僕は、あくまでもエージェントとクライアントの関係だ 嫌なら、言わなくていい。。。。。。ただ』『。。。。。。。。。。。ただ?』私は顔を上げてロブを見た。『。。。。。。。。。。。。ただ。。。。 僕なら、君みたいなきれいな人を絶対悲しませたりしないな』そういって私を見つめるロブの視線に耐え切れなくなって、私は言った『悲しますとか、悲しまされるとか。。。そんな関係じゃ全然ないの そんなことを要求できるほど、私は彼を愛してないわ』ふっとロブは、一瞬私を見抜いたように唇の端で笑ったそして言った『そんなにムキにならなくてもいいよ』『ただ、君が腹を立ててるのは電話の相手のあの男ではないんじゃないかな なんて思ったもんだから』カッとなって、私は音を立ててグラスを置いた周りのカップルが私を見て、ひそひそと会話をするきっと私とロブも恋人同士の小さな諍いをしてると思ってるのだろうそんな状況にさらに腹が立って、私は言った『なんなの? 私のこと知ったような口きかないで!』そんな私の行動もちゃんと計算済みだったように、ロブはひるみもしないで、私の目をしっかり見つめていたつづく
2006.04.26
コメント(2)
そのバーからはロスの夜景が一望出来た。一瞬だけ、嫌なことを忘れられた。でも、すぐに現実に戻った。そう、私の隣にはライアンでも、マヌエルでもなく、ロブが。そっと横目でロブの顔を盗み見た。ロブは眼鏡の奥の目をキラキラさせて景色に見とれてるようだった。「ロブ、何飲む?」「あ、ええ。景色に見とれてしまったよ。。。ハハ。えっとね、僕はカルーアミルクを」「え?ああ、カルーアミルクね。私はドライマティーニを頂こうかしら?」「ああ、じゃあ、僕もそれを」カウンターの向こう側のバーテンダーは慣れた手つきでシェーカーを振った。氷がシェイカーの中で踊る音が心地よい。バックにはシャーデーがかかっていた。シャーデーで何度、メイクラブしただろう。ライアン、リチャード、ジョッシュ、そして名も覚えてない男たち。「乾杯しませんか?」既にグラスに口を着けてたロブはあわてて、そうですね、と苦笑いをした。「こういうシチュエーションにキミエみたいな素敵な女性と2人きりなんてめったに無いんで」「あら、お世辞でも嬉しいわ」「えっと、それじゃ、ビジネスの成功を祈って乾杯」「いいえ、二人に乾杯しましょう」ロブの顔が薄暗い照明の中でも赤くなっていくのが分かった。「は、そうですね。では、二人に」カチンと小気味良い音をたててグラスがぶつかった。ロブのグラスは震えていた。私は心が震えていた。続く
2006.04.19
コメント(0)
『。。。。。。。えっ?』ロブの突然の行動に、私は身を引いたでも、その手を振り払わなかったのはなぜだろう二人の視線が、ほんの一瞬だったが絡み合ったほんの一瞬のことなのに、それが1分も2分もの間に感じられたなぜだろう、ロブの瞳の奥に垣間見るどこかで見たような、懐かしさに似たもの『そういえば、さっき会議室でもこんなふうに思ったわ。。。。』と、そんな考えが私の頭の中をめぐっていたすべてがスローモーションで過ぎていく中で、ロブの口がゆっくり開いた『あ。。。。あのぅ。。。』『。。。。。。。。。。ごめんなさい 私、どうかしてるわ今夜』あわてて、私は言った『。。。。。。。。』タイミングを失って、ロブの口から行き場を失った言葉がため息とともに消えたそのとき『。。。。。。。。。。。。。。僕でよかったら』『。。。。。。。。。。。。えっ?』何かを決心したかのように、ロブは静かにけれど、しっかりとこぶしを握り締めて私の目を見つめて言った『僕みたいな男に、アドバイスされるなんて キミエは冗談じゃないって言うかもしれないけど。 僕でよかったら、話を聞くよ 。。。。。。。。。。。。。。僕、Regent Beverly Wilshireに泊まってるんだけど そこのロビーに落ち着いたバーがあるんだ 。。。。。。き、君さえ 嫌じゃなかったら。。。。。。』ふと、私の頭の中で、マヌエルとレイチェルがそして、ライアンとあの電話に出た女が楽しそうに笑う顔が浮かんで、私は言った『ええ、構わないわ』つづく
2006.04.13
コメント(2)
「あのぉ、キミエ、どうかしましたか?」いつの間にかロブが私の後ろに立っていた。「え?ああ、何でも無いんです」私は無理やり笑おうとした、が、あふれたのは涙だった。「ああ、ごめんなさい」大したことじゃないはずなのに涙が出たことにびっくりした。びっくりしたのは私だけじゃなかった。ロブが驚いた顔で心配そうに私を見つめた。「あ、もし、嫌なら、食事、行かなくても・・・」「そうじゃないの。ちょっと、嫌なことがあって・・・。さ、こんな夜はパーっとしましょうよ」無理やりに明るく言った。私は目の前に立つうだつの上がらない男にすがっていた。最低・・・。「あ、あの・・・」ロブの毛深い、厚い手が私の肩をつかんだ。「え?」思いがけない行動に私は動くことが出来なかった。続く
2006.04.11
コメント(0)
何でこんなことに。。。。。ロブを会議室に待たせたまま私は、急いで自分のデスクに戻った『ライアンには何て言おう。。。。。』ライアンは2ヶ月ぐらい前に、友達の紹介で知り合ったアーティスト特に付き合ってるって間柄でもないけど、週末には連絡を取り合っているボーイフレンドだまだまだステディーになる勇気も、忍耐力もない私だけど本当は彼に次のステップを踏んで欲しいと願う自分がいることも確かだったその一方で、ライアンよりもいい男が現れたときのために。。。。。と自分をフリーにしておけるそんな贅沢さもちょっと気持ちよかった『やな女。。。。。。』そうつぶやいたものの、アーティストと結婚して、一生貧乏な暮らしを強いられるのは真っ平だったここまで待ったのだ、これから先はじっくりと考えて男を選ばなくちゃ20代はしっかり遊んだ今では名前さえ思い出せない男もいるどこかの男にとって、私も名前を思い出せない女の一人であることも分かっている振られて、1週間アパートで泣き暮らしたなんてウブな時期もあったしまいこんでいた、胸の奥の古い傷が少し痛んだ気がしたこんなセンチメンタルになれる自分が、まだ自分の中に残っていたことに驚きながら細い指が、もう覚えてしまったライアンの電話番号を押したプルルルルルルル。。。。。。。プルルルルルルルルルルルル。。。。。。。。『ハロー』『。。。。。えっ?』一瞬、戸惑った電話に出たのは、若い女の声だった『ハロー? ハロー?』受話器の向こうで、女がリピートする動揺を隠せないまま、乱暴に電話を切ったつづく
2006.04.07
コメント(0)
金曜の夜に予定の無いのはここ半年ほど続いていたし、確かに今日も予定は無い。でも、何かが腑に落ちなかった。そんな私を知ったように、当たり前のように指図したマヌエルにも腹が立った。でも、それよりも彼に対して恥ずかしかったのかもしれない。きっと今頃、レイチェルは既にニューヨークのプラザのスイートでシャンペンでも飲んでるんだろう。それに引き換え私は。。。そんな私の思いをロブは知ってか知らずか、嬉しそうにしてる。そんな彼を見て、ますますイライラした。舌打ちしそうなのを抑えて私はオフィスへと戻った。勿論、下僕のようにロブは私の後を追う。その気配さえも、泥臭い。「では、食事でもしましょうか?何かお好きなものでもありますか?」私は無理やりに作った笑顔を貼り付けて聞いた。「えっと、そうですね、うーん。。。」私の目を見るのが恥ずかしいのか、ロブはもじもじと足をカーペットに擦り付けながら下を向いた。「えっと、あなたは、確か、日本人ですよね?それでしたら寿司はどうですか?僕も寿司大好きです」「寿司ね。。。そうしたら寿司六がビバリーヒルズにあるわ。そこはどうでしょう?」ロブはまだ下を向いたままだ。なんて男。クライアントじゃなかったらこんな男、一発殴ってやるのに。「え?ああ、良いですね」ロブが初めて私の顔を見た。私は思わずハッとした。めがねの奥の目が私を捕らえた。どこかで見たことがある目だった。続く。
2006.04.04
コメント(0)
テーブルを挟んだ二人の男まるで美の両極端に位置するかのような二人マヌエルが太陽なら、ロブは夜の空に消えてしまいそうな月マヌエルの彫りの深い顔立ち決して大きすぎない、でもしっかり焼けた肌に強調された、たくましい筋肉を品のいい純白のシャツがなぞるマヌエルの愛人で、秘書のレイチェルにちょっとした嫉妬心を感じて、私は戸惑った『。。。。。。。。え』『。。。。。。。。。。。みえ』『。。。。。。。。。。。。。。。キミエ!』マヌエルの声にはっと我に返ると、二人が心配そうな顔で私を見つめていた『大丈夫かい?キミエ? 顔が少し赤いよ』『Excuse me....』そういって、私はレストルームへと席をはずした会議室へ帰ってくると、ロブとマヌエルはすでにミーティングの真っ最中だった『僕は無能な人間と話しをすることぐらい、時間の無駄遣いは無いと思ってるんだ。だから、だいたいミーティングを始めて3分で、このクライアントとそれ以上話を続ける価値があるかを僕は見極める。はずれは無いね。。。。。。』『やっぱり、トランプ・リアルエステートのマーケティングディレクターなんて、肩書きだけだったのかしら。やっぱり、外見が語るほど、中身も魅力の無い男だったってことなのね』これで、さっさと退社できるわと心の中でホッとしたそのとき『僕もこの世界でかなりの人間にあってきたけど、ロブぐらい切れる男は見たこと無いよ』『。。。。。。。。。。。。。。えっ?』私は自分の耳を疑った『僕はこれからニューヨークに飛ばなきゃいけないけど、どうだろうキミエ ロブは今週末ロスで滞在の予定だそうだから、今夜予定が無かったら 街案内ってのは。。。。』『ぜひ。。。。。』いい訳とともに、私の口が開く前に、白い歯を覗かせてロブは笑った
2006.04.04
コメント(0)
私は会議室へ続く廊下を何度も同じような気持ちで向かった。今日もそう。全く最悪な金曜日だわ。思わずつきそうになったため息を慌てて引っ込めた。「じゃ、会議を始めようか」マヌエルは先に席に着くと、クライアントと思われる冴えない男に席を勧めながら、使いこまれた皮のカバーのノートを開いた。マヌエルはジョブホリック、仕事とゴルフそれと秘書のあの愛人が彼の人生。最低の男、でも、あの、ギラギラとした魅力は私も無視できなった。「え、は、はい。そうですね」クライアントなのに可愛そうなほど萎縮した男。「えっと・・・あ、そうか、紹介、まだだったね。彼はトランプ・リアルエステートのマーケティングディレクターのロブ・シュレイダー。彼女は僕の有能な右腕、日本から来たキミエだよ」「ハロー、はじめまして」差し出した右手をおずおずと握ったロブの手は汗でべっとりだった。「あ、ハロー、えっと、ロブです」この男があの、ドナルド・トランプのマーケティングマネージャー?信じられないわ。そんな思いを笑顔の後ろに隠して、私はロブの対面の席に着いた。
2006.03.31
コメント(0)
それはある青空のとっても綺麗な日に始まった。突然の春の訪れを運ぶ風と一緒に『こんな天気のいい日に、一日中ミーティング詰めなんて。。。。ハァ やってらんないわ』『今日も残業。。。。。。か』そうつぶやきながら、同僚のA子がそそくさと退社の準備を始めるのを、憂鬱な目で追うA子『具合悪いとかさ~ 身内がたった今病院に運ばれたとかさ~、何でもいいじゃん口実作れば ~?』『。。。。。。ったく』あきれてものも言えないA子の肩越しに、ちょうどミーティングを終えたボスのマヌエルが腕時計を指で指しながら、『もうすぐ、次のミーティングだ』と合図する会議室から出てきた、マヌエルの後ろから見知らぬ男が付いて来る。見た目のさえない男。。。。。。『新しいクライエントかしら。。。。。?』小太りで、毛深くて、申し訳なさそうに頭にへばりついた頭髪。。。。お世辞にも魅力的だといえないその顔には、ファッションセンスのかけらも見られないダサい眼鏡短い足で一生懸命マヌエルの後を追いかけるように歩くこの男に覚えた、一種の嫌悪感は、会議室に急ぐハイヒールの音にかき消された つづく
2006.03.31
コメント(0)
全13件 (13件中 1-13件目)
1