救世軍(the Salvation Army)は19 世紀のイギリスでブース大佐が始めた,社会改革を求めるキリスト教の一派です。軍服姿でバンドを組んで賛美歌を歌います。街頭でラッパを吹いて募金を呼びかける「社会鍋」が冬の風物詩として知られています。貧しい人たちに食事を無料で配給することでも有名です。歌詞のCarry your cup in your hand はそのことを指しているのです。 個人的なことですが,私の曾祖父・伊藤富士雄は昭和初期に日本救世軍の創設者・山室軍平のもとで廃娼運動(ご存じでしょうか? 娼婦を廃業させる運動です)を推進していました。「ひいおじいさんは貧しい東北で口減らしのために身売りされた薄幸な娘さんたちを1,000 人ぐらい助けたそうです。若くして亡くした長女『おりよさん』に重ねて見ていたのかもしれません。救出法は合理的で,どれだけの借金があるか知らずに働かせられていた娼婦たちと雇い主の間に入り,借金額をはっきりさせ,年季明けさせたのです。しかし時にはヤクザの人にボコボコにされ,大怪我したこともありました。一族の誇りです!」と,生徒に話すこともあります。身売りされた少女たちの悲しみや曾祖父の正義感に思いを馳せながら語ると胸が熱くなります。そして人身売買は忘れてはいけない過去であり,形を変えて存在する解決すべき現在の問題なのです。ですからこの歌はこういう話題に触れるための私にとって必須アイテムなのです。
『チャタレイ夫人の恋人』(D. H. LAWRENCE, LadyChatterley’s Lover)の15 章末の一節,What’s that as flies without wings, your ladyship? Time! Time!(翼が無くて飛ぶのは何? 時間だ,時間だ!)を思い出しました(若者は読まないのかな? 寂しいね…)。まさにTime flies( like an arrow).「光陰矢のごとし」。時が過ぎゆく無常を惜しむ,この歌詞の心情に似ている日本の歌は何かなと考えて思い浮かぶのは,小倉百人一首の小野小町の歌「花の色は うつりにけりな いたずらに わが身よにふる ながめせしまに」(若者は百人一首しないのかな? もったいないね…)。ミスチル(Mr. Children)の「イノセントワールド」の一節,「様々な角度から 物事を見ていたら 自分を見失ってた」も似ていますね。
3つのスタイルでパラフレイズするのが私の文法解説の定番。 人 They found it hard to please me. 彼らは難しいと分かった私を喜ばす… 事 It was hard to please me. 難しかった私を喜ばす… 者 I was hard to please. 私は難がたかった喜ばし…
参考:Now you’re not hard to understand.(あなたのことは理解できるわ)という歌詞がオリヴィア・ニュートン・ジョンの“Have You Never Been Mellow”「そよ風の誘惑」にあります。いや~,このような英詩の美しい描写を心に描く時間を教室で生徒たちと共有したいですね。木々が紅葉し,落ち葉が降り積もっている。かさこそと音を立てながら歩く道すがら,しばし佇たたずんで,風を感じながら物思いにふける。パソコンの前に座り詰めじゃ,イカンね。
例文) ・weave ~ into …「~を…に織り込む」 ・weave silk into cloth「絹を布に織る」 ・the royal crest woven into the tapestry 「タペストリーに織り込まれた王家の紋章」 『オーレックス英和』
タペストリーと聞くと,キャロル・キングの名盤「つづれおり」を思い出しますが,私が実際に見たことがある有名なタペストリーといえば,パリの中世美術館(www.musee-moyenage.fr)にある「貴婦人と一角獣のタペストリー」(The Lady and the Unicorn,仏語ではLa Dame à la licorne)。素敵な作品です。