新英語教育研究会神奈川支部HP

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ルター、学校へ行く(男子高編その1~10)


オススメは…
 ・その19 不定詞:ルターの発問にとまどう生徒たち
 ・その18:B4版のプリントを半分に折って学習する生徒たちに「断片化」を感じた
では、2004年9月から翌年3月までのルターの奮闘ぶりをお楽しみ下さい。

8/27/04 「ルター、学校へ行く」シリーズ再開のお知らせ
 2004.3.12の「ルター、学校へ行く(県立高校編その7)」を最後に学校現場を離れていたルター。9月から私立の男子高校で高1と高3を教えることになりました(得意のピンチヒッターです)。
 昨年度お世話になったT高校の高3のみなさんとの経験が随所に生かされると思います。また日々の発見を報告したいと思っています。おたのしみに。

9/7/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その1):今日は英字新聞
 今日は「ジャパンタイムズ」の記事からベスランの小学校占拠事件とプロ野球再編で選手会がストをするかもしれないというニュースを取り上げた。
 ベスランの小学校占拠事件では行方不明の生徒の写真に向かって手を伸ばす(reach out)少女の写真。記事と共に池上彰『そうだったのか! 現代史』を紹介。ロシアとチェチェンのこと、現代史を知るにはこの本を読むといい、と話した。
 プロ野球再編で選手会がストの記事ではmerger(合併)という単語を取り上げ、M & A (merger and acquisition 合併買収)という話題につなげた。
 こんなかんじでボツボツやっていこうと思ってます。

9/9/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その2):今日は英語の歌
 高1の授業でQueenのWe Are the Champions.とKiller Queenを扱った。「もしも授業で扱い歌があったらCDと歌詞カードを持ってきて」と言ったら、早速持ってきた生徒がいた。日本のグループ、ELT(Every Little Thing)のMy Best Friendという歌の英語版だった。アップテンポで歌う感じの曲ではなかったが、歌詞を説明して曲をかけたら、喜んでくれたようだった。
 昨年同様、かなり苦戦しております。

9/15/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その3):ピーター・フランクルさん+六義園でホッとひと息
 高1の授業で物理学者のフェルミについての文章を読んでいる。そのなかにelegantという言葉が出てくる。elegantで思い出すのは、雑誌『数学セミナー』の「エレガントな解法」ということばだ。数学者の野崎昭弘さんも『数学的センス』の中でエレガントについてのエッセーを書いている。
 そこで昨晩観た、NHK教育午後10:25~の人間講座のピーター・フランクルさんの話をしてみた。昨日の話題は数学オリンピックの話で、ハンガリーのk嗄al[ケマル]という雑誌(HPもあります)を紹介していた。数学を懸命に学ぶ人たちが世界にいるのだな、ということがよくわかった。番組を観ていた人は1人しか居なかったが、それだけに話した甲斐があるというものだと前向きに解釈しておいた。
 午後は、駒込にある六義園まで行って、冷抹茶と白玉あずきを食べながら、庭園を流れる風に当たりながら、ホッとひと息。半球に見える空と流れる雲を観ながら、少しだけ自然と一体化。
 さあ、明日はアメリカの銃規制について取り上げよう! 夜に放映される「ボーリング・フォー・コロンバイン」に話をつなげる予定。

10/5/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その4):歌「デスペラード」+中坊公平+藤原正彦+N理事長の授業参観
 今日は高1と高3の授業をN理事長が私の授業参観にいらっしゃった。するといつもは騒がしいみなさんがスーッと静かに。「ピンチをチャンスに変える」とはこのことだとばかりに、この静かな時間帯を利用して、いつもは騒がしくて聞いてもらえないような文法解説ができた! よかった、よかった。

 今日はイーグルスの歌「デスペラード」をイーグルスとリンダ・ロンシュタットの2つを聴かせて、(HPに掲載してある)記事を使って2通りの解釈を解説した。そのなかにある「失恋結婚」については別途詳しく解説した。
 私の分類では、結婚には4パタン、「お見合い(紹介)結婚」「恋愛結婚」「友達結婚」「失恋結婚」がある。不自然な出会いだからこそかえって譲り合いの精神がうまれ、うまくいく人も多いのが「お見合い」。恋愛とはいかないけれど、姉と弟のような仲良しの「友達結婚」。そして失恋した反動で結婚してしまう「失恋結婚」。これが私の周囲にはたいへん多く、結婚後、かなりの割合で破綻している。皮肉なことだが、ある意味で正統派で王道ともいえる結婚パタンなのだ。高校生の若いみなさんには「ご注意を」と話した。
 そして新聞記事の切り抜きから中坊公平さんを紹介。豊田商事事件を知っていた人はほぼ皆無。中坊さんの担当した森永ヒ素ミルク事件のことやネズミ講(マルチ商法)の怖さを話した。私は教員として教えていて、こういうことこそ必ず授業で扱わないといけないといつも思っている。というのは高校時代の世界史の先生が修学旅行前に「みなさん、置き引きをしっていますか?」と言って、無闇に物を置いておくと、持っていかれてしまいますよ、と話してくれたのだ。そのとき私は「置き引き」なんて知らなかった。その話をしてもらったことは後々になってとてもありがたく感じたのだ。そんなこと、知っているだろうと高をくくることは絶対にしたくない。多くの若い人を目の前にして話す機会のある者として、英語教員である以前に、社会人として話をしたいといつも思っている。

10/11/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その5):高3の授業は「8時だよ! 全員集合」の加藤茶のスタイルで
 今、私が受け持っている高3の2クラスは理系は物理と数学、文系は世界史や他の英語の課題など、それぞれが内職。ある日、テキストを開いてくれている人を数えたら40人中4人だった。
 ここでふつうなら「テキスト持ってきなさい」と指導しそうだが、そうしない。テキストの半分がセンター試験そのものの抜粋で、やさしすぎてレベルが合っていないのだ。それに9月から担当が替わって、残りの3ヶ月を彼らは慣れない私と学ぶわけである。「テキストを持ってこさせるor来させない」問題で授業中の貴重な時間を使うなんて愚の骨頂だ。短い時間でちょっとだけでも「なんだ、そうだったのか」と英語の学習のコツを伝えたい。
 そこでどういう気持で取り組むか。私の授業をなにかに喩えるなら、ドリフの「8時だよ! 全員集合」のエンディングテーマで加藤茶が「ババンババンバンバン 風邪ひくなよ」「ババンババンバンバン 歯、磨いたか?」「ババンババンバンバン お風呂入れよ」と声をかけていたやり方である。毎回の授業で小テストと解説プリントで1つのテーマで入試問題に取り組んでもらい、50分の内20分は集中してもらうことにした。うまく機能していくかは今後を待ちたいが、先週は念願の「感情と体調をあらわす-ing / -ed」を扱った。採用されるときの面接で英語科のO先生が「受験生は入試問題で食傷気味ですが、どうやって興味を持たせますか?」と質問され、「分詞を扱いたいと思っています。感情と体調をあらわす-ing / -edで、人の気持ちはexcited、物事の評価はexcitingの話をして、入試問題で説得力を持たせれば必ず興味を持ちます。ばっちりです!」自信満々に答えた。そう語ってすでに1ヶ月が経っていたおり、やっと扱えて公約を果たせたのでホッとした。

10/16/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その6):英作文指導で「前文とつながないBecauseノを一掃したい!」
 高校には外国人講師の方が3人にいて、先日、アメリカ人のP先生とお話ししていて、英作文でI like dogs. Because I have a dog named Pochi.「犬が好きです。ポチというイヌを飼っているからです。」のような前文とつながないBecauseノを改めさせたい、という話で意見が一致した。(becauseは接続詞なので、I like dogs because I have a dog named Pochi.となる。)P先生は中3の生徒に指導している最中だ、と言っていたが、日本人教師もここは連携して一掃しないといけないと感じた。
becauseの使い方の確認
●この間違いが英作文では多い
例)「遅刻した。車が故障したからです」
(×)I was late. Because my car broke down. ?とは違うのでダメ
(○)I was late because my car broke down. ?に該当:文の途中で2文を結ぶ

●接続詞の使い方を確認しておきたい。
(1) 文頭に使って、2文を結ぶ
  Though he was very tired, he went on working.
  接続詞 S+V       S+V
(2) 文の途中で2文を結ぶ
  He went on working though he was very tired.
  S+V        接続詞 S+V
(3) 例外的:Whyノ? と尋ねられて、Because ノ.1文で答える
  Why were you late? ミ Because my car broke down.
(Why were you late? ミ I was late because my car broke down. )


10/17/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その7):「英作文の課題を翻訳ソフトにかける高1生徒」
 高1のクラスで「先生、見てください」と英作文の課題を差し出してきた。自分が尊敬するテニス選手についての文章だったが、読んでみると文体が不気味である。「これは?」と訊くと「あー、これはネットの翻訳ソフトにかけたんです」と言う。なるほど、それで日本語のスタイルそのままの「物事が主語」の「受動態」ばかりなのかと納得。さっそく英語のスタイルの「人が主語」「能動態」に書き換えを始めた。
 時代が進むとこんなこともあるんだな~。そんな今だからこそ、英文法の指導が必要なのだと感じた。

10/27/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その8):ふりだしに戻る?
 高1と高3を担当していたルター。中間テストを終えて成績を出してホッとして、先週末に関西にお住まいのK先生に貴重で高価な文法の蔵書を譲っていただいて大満足。今週からは「さあー中間も終わってこれで少し高1に話が通じるようになったから、文法解説を詳しくしたり、読み物もできそうだ」「助動詞はだいぶわかってくれただろうから、今度は述語動詞をやっていこう」と考えていた。
 ところがである。高1は担当を入れ替えることになってしまったのだ。ショック! 諸事情は割愛するが、まさにふりだし状態。
 生徒も教員もやっと慣れてきた状態だったので、私以外の2名の教員も生徒も残念に思っていることだろう。これから多くの人に出会えるわけなので、ピンチをチャンスに変える気持ちでやっていこうと思っております。
 地震やイラクの人質事件も心重くなりますが、自分の場が激震しております。

11/5/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その9):「byとuntilの使い分け」+「生徒に本を貸してもらう」の巻
 高1の担当替えして1週間。やっとお互い慣れてきた。Nくんが「byとuntilの使い方が気になる」と言い出したので、「やった~!」とばかりに喜々として、以下のような説明を行った。

by「~までに」とuntil「~まで」
Iユll wait here until five oユclock. 5時まで
       until you come back. あなたが戻るまで
Iユll finish the work by five oユclock. 5時までに
          by the time you come back.あなたが戻るまでに
byには節がつけられないのでby the timeを用いる

 この説明をし終わる頃、Mくんが「先生、うれしそうだね」と鋭い指摘。説明が終了して気分爽快。(みんなはどうだったのかな?? 文法解説して喜々としている人も珍しいだろうな。)
 するとNくんが「これ、貸します」と言って、本を手渡してくれた。
マーク・ピーターセンの『英語塾』(集英社)1260円だった。「ありがとう」と借りたものの、汚してはいけないので自分でも帰りがけに購入。巻頭に「byとuntilの使い方」が載っていた。それで貸してくれたのだ。
 冠詞や時制も載っている。さあ、精読するぞ。

11/12/04 ルター、学校へ行く(私立男子高編その10):lead to「~に至る」とcause「~を引き起こす」の解釈で高1のEくんと激論するの巻
 昨日は、lead to「~に至る」とcause「~を引き起こす」の解釈で高1のEくんと激論した。
 Scientists also believe that global warming will lead to major changes in climate.(科学者も地球温暖化は気候の大きな変化に至ると信じている)
 という文章をある生徒に訳してもらったところ、
 気のない感じで「地球温暖化は気候の大きな変化をもたらす」と訳したので、
 私は以下のように言った。
 「地球温暖化」が主語で「気候の大きな変化」が後にあるからといって、
 「地球温暖化は気候の大きな変化をもたらす」のように、
 適当に訳してはいかん。ここでは自動詞で「lead to ~」を使っている。
 (その生徒に辞書で引かせて…)
 ほら、自動詞で「lead to ~」には「~に至る」という意味がある。
 このように意味がとれなければテストで×にしますよっ、と
 私にしてはハッキリ断言した。
 すると予習をきっちりやってくるEくんが『ジーニアス英和』を引いて
 lead to ~の和訳に「(物事が)~を引き起こす」と書いてありますよ、
 と食い下がってきた。(心ない辞書だな、『ジーニアス英和』)
 そこで私は、いやいや、自動詞のlead to~「~に至る」と他動詞のcause「~を引き起こす」は違う。この著者はlead to ~を使っているのだから、日本語にそのまま反映できるなら自動詞的に訳すのがよい、と応戦。
 それでも不満そうなEくんは「でも×にすることはないでしょう?」と言うので、「いや、授業で約束したから、もし出題してlead to ~を『~を引き起こす/~をもたらす』と訳したら×にする」と断言し、「なんでも同じだというなら、一緒に読む意味がない。いつもはヘラヘラしているかもしれないが、ここだけは譲れない! 他の先生に訊いてもらってもかまわない」と言い放った。
 Eくんは真面目でいい生徒である。だからこそ、譲れないのだ。私との授業はまだ12回で、一ヶ月も経っていないから、私の信用度は低いし、私の言葉も通じていない。これは一つの悲劇だな。しかし、大人げないとは思いながら、議論をふっかけてみた。ま、これで解雇されてもかまいませんけれど。

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