・ ワークショップ:例会の冒頭でLet’s warm up with logical questions!ということでクイズがあった(会報担当の加筆あり)。 Q1: One day, a man fell off from a 50-story high building, but he didn’t get hurt. Why? A1: He was on the first floor. Q2: Johnny’s mother has three sons. The first son’s name is April. The second son is May. What is the third son’s name? A2: Johnny.(April, Mayだからといって3番目はJuneではない…) Q3: What was the highest mountain in the world before Mt. Everest was discovered? A3: Mt. Everest.(発見されてもされなくてもエベレストが一番高い)
(2)大井先生の考え ・ パラグラフ(段落)構成のスキーマを教えることが重要。 ・ 筆記思考の大切さ、実際に手を動かして書くことの大切さを見直したい。ワークシートをちょこちょこ穴埋めするのは生徒や学生のためになるのか??? 大学生はハンドアウトを見て「う~む」とうなずく感じで働いていない! 昔はノートを採って整理していた。 ・ writing活動にはservice activityとしてのwriting(昔の和文英訳のように文法や語彙習得のために行う)と本来のwriting(自分の意見や考えの表明)の2つがある。 ・ グローバル化の社会ではさまざまな価値観を持つ人と交渉するので、説得力が必要。そのためには論理だった言い方、書き方が必要。その力を英語のライティングで身につけましょう。 ・ 発信型の英語の授業で英語を自分のものとして表現する喜びを生徒に体感させてやってください。 ・ 一日1ページはノートに英文を書かせましょう。One Day One Page. ・ 言語習得におけるライティングの果たす役割: a) Comprehension(インプット理解)では、学習者は分かったふりをすることが可能(Hawkings:1985)。リスニングやリーディングにおいては意味的・語用的にさまざまな情報が理解を助ける(Clark and Clark:1977)。 b) Production(アウトプット産出)では、学習者はコミュニケーション達成のため中間言語を最大限に使用する。 Swainによる3つのアウトプットの機能: 1) アウトプットは気づき(noting)を促す:言いたいことと言えることの差に気付き、何を知らないか認識する。 2) 仮説検証の機会を与える(hypothesis testing) 3) メタ言語知識を与える:メタ言語を使用して言語を振り返る(conscious reflection) 例)原爆が落とされた。A bomb was dropped. 学習者は、メタ言語で「英語ではdropを使うのか」「『落ちる』は自動詞fallで、『落とす』は他動詞dropという対応関係にあるのか」などが分かる。 ・ 英語のパラグラフ構成: 1) structure of a paragraph: topic sentence, supporting sentences, concluding sentence 2) cohesion(結束性)、coherence(論理的一貫性) ・ mini-argument用の英語のパラグラフ構成: topic sentence (general 一般的)で自分の意見を述べる +理由・説明(specific具体的)+具体例(details 詳細な) +理由・説明+具体例 +理由・説明+具体例
・ Process writingの6つのステップ: 例)クラスの担任のクガ先生について書く。 1) Idea Generation(アイディアの創出・配列):clustering(風船のように思いついたことを絵に描いてつないでいく)、listing(リストを作る), heuristic questions(Mr. Kuga is a great teacher.という命題に対して、What do you mean by “great”?、Can you give three reasons why you think Mr. Kuga is a great teacher?などの質問を考えて答えていく) 2) Write an outline(アウトラインを書く): topic sentence:Mr. Kuga is a great teacher. supporting sentences(abstract idea+concrete idea): a) Mr. Kuga is kind to us. He takes time for us. He listens to us. b) He is funny. Many jokes. Interesting stories. c) He is full of energy. His voice. His eyes. His big smile makes us happy, 3) Achieve cohesion(結束性を持たせる) I went to the zoo yesterday. I saw many animals there.など2~3文で充分結束性のある文章が書ける。 a) lexical chain(語句の言い換え、関連語の使用) b) pronouns, definite articles(代名詞、定冠詞) c) sentence combining d) transition words(つなぎ言葉):first, second, third, in addition, therefore など。 4) Write(書く) 5) Review(peer review, self-check):仲間で読み合う 6) Revise(書き直す)+内省記述を書かせる
(5)参考文献 ・ Marrill Swain, “Three functions of output in second language learning” はG. Cook(1995), “Principle and Practice in Applied Linguistics” Oxford University Press pp.125-144に引用。 ・ “A Case Study at a public junior high school in Chiba” (田畑:2004) ・ 「4技能統合した活動の例;小中大をつなぐストーリー・テリングの実践」(大井、田畑:2007)『関東甲信越紀要』
(6)質疑応答 ・ Q:中1で書かせると、とっちらかっている。どうサポートするか? A:10回の授業で、1回目は「見本を見せる」(6~7文)。「トピックはどれ?」「サポートはどれ?」と質問すると生徒は理解する。2回目はgood(良い文章)とbad(悪い文章)を見せる。「どうしてこちらがgoodなの?」と問いかける。このようにモデル文を見せるのがよい。 ・ 大井先生: a) argumentative writing(opinion essay):パラグラフの階層性(ハイアラーキー)を大切にしている。I like bananas. I like oranges.ではダメ。モデル文をバラバラにしたカードを渡して並べかえさせる。 b) narrative writing:物語の場合は出来事を書いていけばよい。バスケ部で今日あったことなどを書くのに向いている。 ・ Q:指導上の留意点は? A:大学生の場合、「3単現のSを間違えるとは思わなかった」と文字化しておくと次に生きてくる。
(7)意見交換 ・ Hさん:自分も生徒にstory tellingの活動をさせているので、小学生に見せるというのは面白そう。(大井先生が「I went to the zoo yesterday. I saw many animals there.など2~3文で充分結束性のある文章が書ける。I like bananas. I like oranges.ではダメ。」と言われたのを受けて…)『はっぱのフレディ』ではI like ~. I like ~が出てくる。クリティカルシンキングの観点から申し上げると、シェークスピアでは「最後に情に訴える」といて散るので、「情」も大切か、と。 大井先生:グローバル化の世界では非情かと。 Hさん:『ジュリアス・シーザー』で…、ロジカルな中で聴衆の全体のムードが変わってしまう。Deliveryも大切かな。 大井先生:エートス・パトス・ロゴスが揃わないといけない。 Hさん:聴いているのはイギリスの庶民。 大井先生:文芸の価値とargumentの違いがある。非情という点でのtrue storyがある。(友人の友人から聞いたが)日産のカルロス・ゴーンにグループで作った試作車を見せたとき、あるチームのプレゼンで「ABCを作ったが…」のように物語系で話したら途中で話を切られてしまい、左遷されてしまった。別のグループは「3点について述べます」と言って成功したという。(この話を聞いて、英語のパラグラフ構成は)今の子ども達に必要な知識ではないかなと思った。(audienceが違う)みんなが聞いてくれる世の中ではなくて、(パラグラフ構成を知ることは)empowermentになると思う。 ・ Sさん:セールス発表ではスキームが必要になりそうだ。何が目的で聴衆がどうか、による。高校のスピーチコンテストに関わっていてJudgeのネイティブがパラグラフ・ライティングの考えは必要と言う。型にはまったところだけでなく、「譲歩」も必要。Strongな意見ではなく「こういう意見もあるけれども」と相手を認めるところがあると。説得力が増すと思う。 大井先生:(相手を認めないと)「ああー、それはあなたの意見でしょう? That’s your case.」になってしまう。一般化にもっていけない。ネイティブはそういう反応になる。「譲歩」に関しては大学生には踏み込ませたい。 ・ Nさん:日本語の授業でどうかと思った。国語と英語の授業が仲良くしなくてはいけない。中3は光村図書で新川和江『私を束ねないで』を自分に当てはめて生徒は詩を作った。「私をボクサーのようになぐらないでください」と書いた生徒がいて、「詩だからそのまま」としていた。 大井先生:この話は何時間あっても良いトピック。教育学部では国語を専攻している人もいる。来週、北九州大で発表するのはmulti-competenceについて。大学生は「(ライティングを学んで)他のレポートも書けるようになった」という。国語の授業でなぜやらないの、とは口が裂けても言えない。National languageなんですよね。小説を読んで「作者の心の動きは?」など、心情理解をさせる…。 Hさん:国語科でもやっています。 大井先生:「音楽鑑賞では論理は必要ない」と言っている人がいた。 Hさん:Don’t think. Feel.(映画『燃えよドラゴン』の有名なセリフ)もある。 ・ Xさん:peer feedbackへの持って行き方は? 大井先生:peer feedbackによって「(自分が書いたものを)他の人が読むんだ」という気持ちが育つ。大学生では反論してくる。Moodle(ムードル)を用いて、ネットにあげるときには、実名かイニシャルかにする。 註)ムードル(Moodle)は、オープンソースのeラーニングプラットフォーム。教育者が質の高いオンライン学習過程(コース)を作ることを助けるパッケージソフトである。(Wikipedia参照) ・ Hiさん:中3担当で月1回のトピックライティングをしている。モデル文とuseful expressionsを提示して、生徒は英文と和訳とセルフコメントを書く。先生がコメント、評価はcontentsとexpression。ALTがあまり対応が良くないのでコメントのみしてもらっている。リライトの仕方を指導している。生徒作品のどこがよいかをコメントしたり、「僕は野球部です」を【誤】I am the baseball club.などの間違い文を紹介(I am on the baseball team.)。 大井先生:ネイティブを活用しましょう。指導時間中にさせても良い。書き直しは「ノートに手書き」とした。判子を押した。年間でポートフォリオとして評価。