Tapestry

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MY LIFE AS A DOG

「マイライフ・アズ・ア・ドッグ(MY LIFE AS A DOG)」 2005-05-26

★★★★★

1985年(わ、もう20年前だ~!)スウェーデンの映画。大好きなラッセ・ハルストレム監督。
確か初めてビデオが出た頃に一度観たのだが、それほど印象に残っていなかった。
犬が大好きな男の子の話、ぐらいにしか覚えてなかったのだが、なんでだろう?
今回改めて観てみたら、とっても良かった。

主人公のイングマルは愛犬シッカンが大好き。
バナナの仕事で遠方に出かけた父さんは帰ってこないし、母さんは重い病気にかかっている。
お兄ちゃんとはいつもけんかばかりで、叱られるのはいつもイングマルばかり。
11、2歳というところだろうか。思春期に入ったばかりの微妙な年頃だ。
(日本の子供たちに比べて、かなり大人っぽい印象)
母さんは息子たちを怒ってばかりで、とうとう病気をこじらせてしまった。
そのため、イングマルは叔父さんのところに、お兄ちゃんはおばあさんの所に
預けられることになる。

観かたによっては、せつなく悲しい物語でもあるが、
何といっても全編に流れる温かい雰囲気がこの映画の魅力だろう。
これがハルストレム映画の魅力でもある
。監督の人生観が観ている側にも伝わってきて、「生きていくのも悪くない」と思わせてくれる。
ここでは、一見不幸にも見えるイングマルだが、彼はいつも考えるのだ。
「人工衛星に乗せられて宇宙に行った、あのライカ(犬)の悲しい運命を思えば、
どんなことだってたいしたことはないんだ。」
母親と別れて暮らすのも、父親が帰ってこないのも、
ライカの運命に比べればたいしたことはない。
そんな風に考えながら淡々と生きる少年を観ていると、胸がキュンとなる。
少年の笑顔が、これまた飛びきりかわいいのだ。
多分、昔観たときと違って、自分も母親になった今は、母親のどうしようもない怒りや無力感、
子供が母親を無条件に愛する気持ちがせつないほど理解できるので、こうも胸を打つのだろう。
子供特有の無力感までをも思い出してせつなくなった。
どんなに筋の通った理由があっても、どんなに強い希望があっても、
大人は子供の考えなど聞いてくれないのだ。
そのために母さんとも、愛犬シッカンとも別れなければならなくなる。

こうやって書いてみると本当にやるせなくて悲しい話なのに、
ほんわかと温かい気持ちになれるのはなぜだろう?
登場する村人たちも、みんながあたたかい。
イングマルに想いを寄せるボーイッシュな少女サガもとてもいい。
出てくる子供たちみんな、いい意味で大人っぽく、いい意味で子供らしいのが微笑ましかった。
どうにもできない辛い事がたくさんあっても、
結局はたくさんの温かい大人たち、友人たちに支えられて成長していくのだな・・・と思った。
そういう人とのつながりを知っている子供は、どんな不幸な境遇にあっても、
決して間違った道に進むことはないだろう、そう信じられるような希望にも満ちている映画だ。



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