買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2008年11月18日
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柴田翔さんの 「されどわれらが日々――」 を読みました。

「私」は、過去に女性を妊娠させ死に追いやったことから、心の中に虚無を抱えています。
一方、「私」のいとこであり、幼なじみの「佐伯節子」は学生運動の中で、党の方針転換(六全協による武装闘争の放棄)により、心のよりどころを失ったような状態になっています。

この二人が、なんとなく婚約してから、「佐伯節子」に変化が起こり、「私」のもとを離れていくまでがこの物語の大筋になっています。

一方に、頭から信じていた者の方針転換(裏切り?)により、生きる指針を失って、周囲への適応不全に陥るような人々がおり、一方にはそんなふうになることが理解できない人々もいます。

見方を変えてみますと、
「私の前にあったのは、継起する事実だけだった。私は、事実から、世界とは何かを学んだ。私には失望は無縁だった。」という、はじめから「老いる」ことを許容している「私」。
「日々そこに存在しているかにみえる私たちの生は、個々ばらばらの事象の偶然的な継起に過ぎず、その無意味さの中で私は疲れ果ててしまっている」と感じており「どうにかしなければいけない」と「老いる」ことを拒否する「佐伯節子」。



ここで、冒頭に書かれている言葉を引いてみますと、
「道化 (王に)おお、おいたわしや、王様には裏切られなさったと!
     して、一体、誰方にでございます?」

ほんとに、「誰方にでございます?」のでしょうか。とても分かりにくいです。ひょっとして、裏切りなんてどこにもなかったのではないでしょうか?

というわけで、以前読んだときにも印象がはっきりしなかったのですが、今回もはっきりしなかったのでした。そして、それも無理もないような気が、今はしています。





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Last updated  2008年11月18日 06時11分17秒
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柴田翔  
つき指  さん
 柴田翔、実作から離れ、東大ドイツ語教授へなりましたが、青春時代はよく読みました。 (2008年11月18日 20時46分45秒)

Re:柴田翔(11/18)  
shov  さん
つき指さん、こんばんは!
いつもご訪問ありがとうございます。

> 柴田翔、実作から離れ、東大ドイツ語教授へなりましたが、青春時代はよく読みました。

僕も、この本は30年ぶりくらいの再読ですが、当時は、もうひとつだけ「われら戦友たち」というのを読みました。
これまた、まったく印象に残っていないというのは、よっぽどボンヤリと読んでいたのだと思います。

ドイツ文学の先生の仕事としては「ファウスト」の翻訳を、例によって買書つんでます。
「ファウスト」そのものはとても好きな作品です。 (2008年11月18日 21時04分49秒)

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