買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2015年07月19日
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「そうですか」と僕は言った。
「僕は忘れるんですか」
「忘れるさ」と医者は言った。
「忘れたことに気づかないくらい、完璧に忘れると思うよ」
医者はそう言うと、自分の鼻を指さきでさすって言った。
「でもまあ、わたしはこれ、忘れていないけどね」
僕たちは笑った。
(川上未映子さん「ヘヴン」P246)

映るものはなにもかもが美しかった。しかしそれはただの美しさだった。誰に伝えることも、誰に知ってもらうこともできない、それはただの美しさだった。
(川上未映子さん「ヘヴン」P248)




斜視のせいで、ひどいいじめを受けている「僕」と、父を忘れないために自ら「しるし」を付けることでいじめを受ける「コジマ」。その二人の交流はどのようなかたちでおこなわれ、そしてすれ違っていくのか。

いま、また、そして、つねに、いじめの問題が注目されていますけれども、そういう現実とも一線を画した寓話的なお話になっていると思います。

手術により、物理的には「並木道の向こう側」の光が見えるようになった「僕」には、その美しさを共有できる友がいないというラストは切なかったです。

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Last updated  2015年07月19日 10時00分00秒
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