灯台

灯台

2014年01月26日
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 2は、折角田舎へ来たんだから、ちょっと案内してあげな

さいよ、というユウジの母親のアサミさんにいわれて、僕

を森へと案内してくれた時のことだ。

 僕は風景写真がそれとなく好きな子供で、とりたてて、

森の写真が好きだった。森が水をきれいにするように、

森が涼しいように、僕は、そこでたくさんのことを想像した。

 年を取ってから、西洋絵画でアルブレヒト・アルトドルファ



 田舎の森は、多分そんなに美しいものではなかった。

 道端に、ゴミが捨てられていたり、乗り捨てられた車が

あったりした。でもそんなこと気にもせず、ユウコは喋った。

 「あれは毒があるキノコだ。」

 案内した。鬱蒼とした、深い森の中を。

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 ボーイッシュな印象の彼女と、防空壕とか、大木が倒

れているとか、あれは珍しい鳥だ、という基本的なことを

クリアしつつ、僕等はカブトムシやクワガタをもちろん探し

た。本当に鬱蒼とした森で、ブナとか、クヌギだとか知ら

ない僕に、あれはこれこれこういう木だぞといわれると、



 「蝉めえ、うるさい!」というユウコが傍にいると、子供

心に泣けてくる。

 川の音が聞きたい。波打ち寄せる音が聞きたい。

 最終的に、エアコンの音が聞きたい。

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 ともあれ、田舎の人はみんな木が詳しいんだな、と変な

ことを思ったりするくらいに、ユウコは詳しかった。

 また、草の名前にもすこぶる明るかった。そのせいで、

僕はどこを歩いていても、木の名前や、草の名前を気にす

るような癖ができた。しかし、話はそこで終わらないのがユ

ウコで、その途中で、僕等は蛇に出くわした。青大将だった。

 しかも、それを見つけたのは僕だった。

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 毒はないけれど、とぐろを巻いているので、攻撃はして

こないというのはすぐにわかった。もちろん、普通はそう

だ。蛇と出くわして、蛇がいきなり噛みついてくるようなこ

とはまずない。蜂は別だ。黒い服を着ていたら、いきなり

襲いかかってくるはあるかも知れない。ライオンだって、

お腹が減っていたらそうかもしれないけど、普通は――。

そういう時には逃げる。これはよいと僕がただちに去ろうと

すると、ユウコはずかずか大股で近付いて行って、おもむろ

にガツンといきなり頭の所を手にとると、「蛇って可愛いなあ」

とわけのわからないことを言いながら、「どうだ、マサヒコ」と

戦利品を見せた。

 あなたはネズミをくわえた牧羊犬か、と僕は思った。

 そして僕の目の前に、どうらぞ、と突きだした。

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 ユウコはビニールやゴムのおもちゃみたいに、ぶんぶん振

りまわす、ヨーヨーにも、水ふうせんにも似た童心ならではの

遊びに子供がえりしながら、挙げ句、藪の中へとあわれな蛇

を、「おらよ、ストライイイィク!」と野球のボールのように、

びゅんと放り投げられた。

 そこにホームベースも、バッターがいないことも幸いだった。

 でも蛇はすごく困ったと思う。

 「やめてくれシャー」くらいは絶対に言ったと思う。

 僕も、そう言ってやりたかった。でも、ユウコは、でさあ、と

何事もなかったように、森の案内を続けた。

 そして僕は心の中で思った。蛇ごろしのユウコ・・。



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 もしかしたら見えていなかったのは自分だけで、

 あるいは、そうやって自分が忘れていただけで、

 全てはこうなるように仕組まれていたのかもしれない。

 本当のことは誰も知らないし、知ることは出来ない。

 『時間』ってやつのことを、時々思う。



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 3は、もちろん、夜中のきもだめしだ。ユウコが提案したの

は、昼間にバナナと牛乳をとある場所に置いてきた。それを

探してとってくる、というもの。

 何故バナナと牛乳・・・?

 わからなかった。でもそれは確実に、自然に処理された。

 肝試しの夜、僕はたったひとりでバナナと牛乳を見つけた。

 こわかった。でも、バナナと牛乳を食べると、おかしかった。



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https://storyblog.s3.amazonaws.com/uploads/picture/image/424/a0001_016476_m.jpg]

 お爺ちゃんとおばあちゃんの家へ着くと、ユウコが待ってい

た。「久し振り」とも言わず、「よく来たな」とも言わず、

 「出掛けるぞ」と言った。

 マッサージ機のコードを齧ったみたいにピリッ、ときた。

 感電した。それでも、僕はお爺ちゃんとおばあちゃんにだけ

挨拶して、ユウコと出掛けた。

 少し髪をのばしているらしいのがわかった。

 こころなしか、頬の輪郭が女性らしくなっただろうか。

 胸も少し大きくなったかも知れない。

 でも、と僕は思った。何故、上下ジャージ。



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 彼女はまず、近所にある、ゲームセンターへと僕を連れていっ

た。それは高校一年生らしい反面、少なからずショックだった。

 (パンと同じだよなあ)と僕は思った。

 少し前まで食パンに、バターをつけるのがよかった。最後に、

ジャム。時々にはチーズが。でも、クロワッサンが好きになった。

次にハムサンド。お次は、ホットドッグ。ヘイヘイ、サンドウィッチ。

パパヤパパパヤ、アンパン、食パン、カレーパン。



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 ユウコが、すっかり垢ぬけたなあと想う、そんな僕をよそに、

いきなり素通りし、その横にある、きたならしい段ボールハウ

スへと案内した。

 ちなみに僕は日本の隣に北朝鮮や中国があって、そこで、核

兵器がつくられているかも知れないというくらい驚いた。

 ノレンをくぐると、年齢はわからないが、おそらく六、七十代くら

いのホームレスがいた。

 ユウコに気付くと、カッカッカ、とけたたましいすごい笑い方で、

ユウコを迎えた。

 皺だらけの顔は、無尽蔵の、小さな生命の蠢動、という表現を

したかった。

 段ボールハウスは、賞味期限の切れた牛乳みたいな感じがす

る。そのせいか、子供の時の牛乳パックの筏を連想してしまう。

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 「今日は誰も来ていないよ」とホームレスのおじさんは言った。

 「こっちもない」と携帯をいじりながら、ユウコは言った。

 そして僕は、無尽蔵の、小さな生命の蠢動と、牛乳パックの

筏を想像している。

 そのせいか、目の前の人間が、神様が命をとっておいたとい

う気がして、一緒にビールを飲みたくなった。

 ビールを飲むと、どうしてか、シャチのショーを思い出す。

 パンダの親戚みたいなシャチとビール・・。 



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 そんなことを考えていると、

 穴が広がって、僕はそれを人の鼻の穴のように、

 僕は思い始める。すっと手をのばせば、

 ボウリングの穴になって、

 ピンを転ばせるために転がってゆく。



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          (ここ何処だい?)







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最終更新日  2014年01月26日 20時21分03秒


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