灯台

灯台

2014年01月26日
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 (でも焼酎飲むかも知れない)とも思った。

 僕の家系もそうだが、父親と母親は酒豪で、僕がビールや、チ

ューハイを飲んでも全然怒らない。

 「こいつが弟分のマサヒコ」

 そう言うと、ホームレスのおじさんは、カセットテープレコーダー

から軍歌を流し始めた。昔、街宣車-というか左翼のそれで聞い



 しかし、昔博多まで行って、とんこつラーメンを食った時のこと

を思い出してしまう。

 深夜の屋台で、ヤクザと同席すると、そんな歌が流れたのだ。

 「うん、実に弟分という感じの子だね。」

 どうも、任侠映画の設定みたいだ。

 「ここは男塾段ボールハウスだ。」とユウコは言った。

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らしくなってきたなと思う――



                  ユウコらしい・・・





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 ちなみにだが、ユウコは幼少のころから空手を習っていて、

相当強い。小学生の頃は、全国大会で優勝したこともある、

と話を聞いたこともあった。

 中学生になって、父親と揉めて、延髄蹴りで一発ノックアウ



てしまったといういきさつがあり、それは実際かなり面白い、

またハチャメチャな彼女らしいエピソードなのだけど、基本的

にはタブー。彼女が女の子らしくなったのは、そのせいじゃない

かな、とも僕は思う。

 次の年から俺から、あたしという主語になっていて、面食らっ

たものの、基本的には全然変わってないところもさすがの仕上

がりだった。彼女が、その一件で急にお淑やかになったら、父

親も、死んで本望だったろう。いや、死んでないか――。

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 それでも、彼女が暴力をふるった場面に一度も出くわしたこと

はなかった。

 はあはあ――ふうふう・・ミーンミン・・。

 どうしようか、と思った。

 あなた女ですよね、から始めるべきなのだろうか。

 いやいや、もう面倒臭いからそれはスルーしよう。

 それにしても、暑い。段ボールハウスは、多分ユウコによる

ものだろうが、ファブリーズの匂いがした。

 「男塾ですか?」

 しかしやはりこれは言わねばならない。

 はっきりとこだわりのない笑顔を見せながらユウコは応じた。

 「そうだ。」

 (そうだ、って・・。)

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 ユウコが、暴力をにおわせる発言をしたことで、僕は少し驚

いた。たぶん焼きそばに、生クリームを添えるくらい驚いた。

それでも、僕はユウコの傍で泣き言も、ぼやきも、愚癡も言わ

ず、それを食べただろう。何食わぬ顔をして――。

 ユウコは、携帯をしまい、段ボールハウスに胡坐をかくと、

 「近頃、ここらへんは物騒になってる。だからあたしは、男塾

を立ちあげることにした。」と実際、かなり突拍子もないのに、

やはり自然な仕上がりでスキンヘッドを処理した床屋。

 眉毛を剃ったけれど、これが最新の眉毛でして、はい。

 「自分たちの手で町を守らなくてはいけない。」

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        (近頃は物騒だから仕方ないな。)



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 「そうですね。うん、うん――」

 と、よくわからないけど、僕は肯くことにした。

 「どうだ、物わかりがいいだろ。」

 と、ユウコはホームレスのおじさんに言って、笑った。

 ホームレスのおじさんは、

 「本当だね」と言った。

 そういえば、あの男どうなった、とホームレスのおじさん。

 「ああ、この前のストーカー男か――ああ、マサヒコは知らない

な。二十代の女性の、悲鳴。目の前には、男。道端で困っている

のに、誰も何もしない。そこへ、あたしが、この軟派男め、女々し

い奴め、としばきあげた、とまあ、こういう感じだ。」

 「なるほど。」

 (やっちゃったわけだ。)と僕は思った。

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 そして、ホームレスのおじさんの方に視線を向けると、

 「一応は、交番へ連れていって説教されてたし、あたしからも、

社会的指導(つまりまた、ぼこったらしい。)をして、反省したらし

いから、きっと立派な男になろうとしてるんじゃないかと思う。」

 くるっと僕の方に顔を向けた。顔が近い――。

 「マサヒコ、立派な男になれ。お前も今日からその一員だ。正義

の味方になれ」

 強制らしい。でも、なろう、とその時に決めた。

 即断即決ではなく、そうしなければならない、と強く思った。

 「はい、頑張ります」

 そんな僕等のやりとりに、ものすごく、目を丸くしていた。 ホーム

レスのおじさんが、言った。

 ガスコンロでわかしたお湯で、コーヒーを差し出しながら。

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 それにしても血管の浮き出た細い腕で、サラダばっかり食べ

ている菜食主義者を想像してしまう。

 なんだか突然、オカズが少ない、と言ったお金持ちの子を想像

してしまい、少しブルーになった。小学生の頃にそんな友達がい

たのだ。でもそれは実のところ、僕でもあったのかも知れない。

 確かに、そんな友達がいた。

 でも、僕等はとある日、ちょんまげをしていないと言い切れるだ

ろうか。馬のかぶりものしていない、銀行強盗風ストッキングして

いないと言い切れるだろうか?

 僕は彼女から、そんな風に思われている自分を知っていたし、

それでやっぱり、ブルーになる。

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酔っ払いの男と会話しよう。

「口のききかたを教えてやる」

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 と、そこで、ホームレスのおじさんのフォローが入った。

 「ユウコさんは、別に道理の外れたことをしていないよ。ただ、

治安を守る仕事を自発的にやってるだけ。時間が遅いのに、

ゲームセンターでたむろしている子供を帰らせたり、たとえば、

暴走族とかに、少し、力で対抗したりするだけだよ。」

 そうか――と、僕はひそかに唸った。

 高校一年生になってユウコはついに、ウルトラバカになったの

だな、と。こいつやっぱりすげえ、と僕は逆に感動していた。そん

なの警察に任せるべきなのに、しかも、女なのに、ついに、そん

なことまでやるようになったのだ。将来は、警察官だろうか、と僕

はぼんやり思ったりした。

 ここまできたら、アマゾネスになるのか、と僕は思った。

 「では、マサヒコ、ついて来い。」

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 ユウコと共に段ボールハウスを出ると、田舎の町――とは、もう

言えなくなった、盛況した、街路をすりぬけていく。

 田舎とは言っても、一歩外へ出ればこんな感じだ。

 どこにでもビジネスがあって、どこまでも大きな物が出来上がる。

 コンビニ。カラオケ。劇場前広場のパチンコ屋。路地裏。コインロ

ッカー。彼女はそこをねり歩き、目を血走らせる と、そこへ、オカマ

が現れる。身長は百八十センチはあろうかという体格で、あきらか

に筋肉質。それなのに、ワンピースなるものを着、そこはかとなく、

髭の剃り跡があるオカマが。

 「ユウコ~ッ」とした発情したモンスターボイス。

 「ああ、どうした、マドレーヌ。」

 マドレーヌ? っていうか知りあい?

 しかし、このマドレーヌちょっと声が大きい。

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        (魔物よ、魔界へ帰れ。)





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 僕はすっかり面喰いながら、それでも、ユウコの隣でキョロキョ

ロしていた。

 社会見学の感じが強くあった。

 「近頃、変態が店に来るの。」

 (大丈夫、変態はあなたですよ。)と、僕はにこにこしながら、言

おうかと思ったが、ユウコは真面目な顔で、

 「いつだ?」と言った。

 僕はそれを聞きながら、無農薬野菜のことをつとめて考えた。

そろそろ、ぬか漬けのキュウリ食べたいなと思った。

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        (きゅうり食べると、お腹が冷える。)





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 しかし、話は続いていた。

 「いつも十九時頃に店にやってきて、すっぽんぽんで、お酒飲ん

で帰るの。気持ち悪いったらありゃしない。こんな店だと思って、

馬鹿にしてるのよ。警察にも言ったけど、民事不介入とかいって、

ほんとはただ、気持ち悪いから相手したくないだけなのよ。偏見よ。

別にそういうプレイでもなんでもないのに」

 (そりゃそうですよ)と僕は笑顔で言いたかった。

 「そいつを、しばきあげよう。」

 そう言うと、ユウコはレトロな看板の店へと行き、おもむろに服を

脱いだ。なんだかよくわからないが、すっぽんぽんになった。

 僕は呆気にとられながら、ユウコのきれいな身体を見つめた。

 「まあ、きれいな身体。」とマドレーヌは言った。

 「いや、あの、何してるんですか、ユウコさん」

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 「裸には裸だ。男塾。」

 僕はすっかり混乱していた。変態がもう一匹増えたような気がし

て、僕はこわかった。僕はもちろんユウコの裸に興味がないわけ

ではなかったが、かといって、こんな形で、神様感謝しますという

わけじゃない。それとも何か、僕は男ではないのか、とビックリし

てしまう。

 なんというか、カルチャーショックを味わう。

 原初の頃から、ここはプライヴェートビーチだった。

 まったくのノープログレ。僕もおそらく、ユウコに向かって、お前

の身体になど興味はない、と言わねばならないのだ。なんにせよ、

純粋にこわかった。

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 しかし、ふっと僕は思った。

 このままでは、僕まで服を脱がされそうなシチュエーションではな

いだろうかと思ったのだ。僕はその瞬間、つとめて強い声で、

 「許さんぞ変態!」と僕は言った。

 明らか色んなことを誤魔化していた。

 マドレーヌが驚くくらい、大きな声だった。

 「買いだしに行って来ます。クソウ変態め、いたいけな女性・・・

そうだ、女性に、破廉恥な真似を、許すものか!」

 「そうだその意気だマサヒコ!」

 「買いだしに行ってきます。飯を食わねば戦えない! 精のつ

きそうなものを、買ってきます。」

 「おう、行け、弟分よ!」

 僕はドアをものすごい勢いで飛び出した。





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最終更新日  2014年01月26日 20時21分46秒


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