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2005年07月26日
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 27日の午前1時15分。

 帰って来ました。ホークスの斉藤投手
 の長い原稿書いて。

 球場に着くまで、今日斉藤投手が投げることも、
 彼が無傷の9連勝だったことも知らずに。まあ、
 なんとか原稿は作ったけど、こんなんでええんか、
 の疑問は消えず。


 久々に、小説読んで震えが止まらなかった。
 リンクしましたよ。暴力の体験が。
 恐怖が。自分の体験と。いや、僕の体験なんか
 生易しいけど。
 中村さんが描いたシチュエーションは、
 かなり極端なモノとなっていて。
 でも、これぐらいの設定にしないと、
 この話はもっていけない、というか
 耐えられないだろうな、と。

 おそらく、今後数ヶ月、売れるし、話題に
 なると思うので、ネタばれになる書き方は

 紹介をします。読む予定の人も、安心して読んで
 ください。

 直木賞や三島賞の候補になっていた「となり町戦争」
 (三崎亜紀著)に、僕が感じていた不満が、
 「土の中の子供」では、見事に解消されていて。


 古めかしく感じられたことで。“もうええで”と、
 思ったのも確か。よく書けてるんですけど、優等生
 の作文、と思ってしまった。なぜって?
 暴力を空気で読ませる、って手法。普遍的な
 手なんだけど、“おまえ、殴られてないやろ、ほとんど”
 と、書き手のことを類推してしまった。

 いや、「土の中の子供」の中村君も、殴られてなんか
 いないかもしれない。でも、そう思わせない圧倒的
 な描写力を僕は感じました。もし、全く違う人
 なら、見事に僕は騙されたわけで。

 空気を読ませる時代は終わった-と僕は思ってます。
 言い方が悪い。言い直します。今、イラクの戦争や
 テロをはじめとして、むき出しの暴力が普通の、日常の
 風景と地続きで存在するのを僕らは知ってます。
 そういう中で、空気を読まされても、僕などは絶対
 納得しません。空気だけを書いてある小説を読むと、
 イライラさえしてしまう。

 もう、ええで、と。

 とりあえず、空気だけを読ませる小説は時代に合ってないん
 じゃないか、というのが僕の考えです。

 「めっちゃピンぼけ」も、そういう考えの中で書かれてます。
 芥川賞や直木賞の受賞者、作品と比べるのはあまりに不遜
 なのですが(「土の中の子供」と同じリングになんか上がり
 たくないですね。いいもんは別世界に、って感じで)。
 ただ、空気を読ませるのはダメじゃないか、と直感で
 思った記憶はあります。


 「となり町戦争」の帯で、井上ひさし氏が「この素晴らしさを
  伝えるのは百万言費やしても不可能」と書いておられますが、
  果たして?「父と暮らせば」のような、空気を読ませる戦争
  文学を書いてこられた氏だから、こういう評価になるので
  しょうが、どう言われても、今の、この世の中で、空気、なんて
  読んでる場合じゃない、と僕は思うのですが。

  (ここからは中東の文学、カナファーニーの「太陽の男たち」
 のネタバレあり、だけど、読む人もそう居ないだろから、書いて
 しまいます)

  パレスチナのガッサン・カナファーニーの「太陽の男たち」
 の厳しさ。あれを空気を読ませる書き方でなんか書いたら、どう
 しょうもない。イラクからクウェートへの密入国っていう、今な
 ら不肖がやりそうなシチュエーションんですが。空の給水タンク
 にひそみ、国境を越えて脱出を試みるパレスチナ難民3人。彼らは、
 結局、国境を越えるのに予想以上の時間が掛かった結果、熱死
 してしまう。彼らは救いの声を挙げようと思えば挙げられた状況で
 黙って熱死してしまう。難民の立場から何があっても脱出する、と
 いう強い意志。厳しさ。自らの命をはってでも、の自由への希求。
 これを空気では…。

 カナファーニーは36歳で、小包爆弾で暗殺されてますが、そういう
 厳しい状況で文章を書いてる人が、生ぬるい空気なんか書きますかい
 な。

 で、「土の中の子供」に戻って。
 どうしてここまで、という状況を作り出し、
 読み手に信じ込ませる作者の力量、って
 本当にすごい。
 カナファーニーと比較するのは中村さんにも
 失礼かもしれないのですが、核心をきちんと
 書くという姿勢は同じ気がして。

 同時に、「土の中の子供」は、自意識に貫かれた
 小説ではあるけど、決して観念小説ではない。
 うまい、と思うのは、会話。
 主人公と主要登場人物となる女性との会話。
 効いてるし、生きてる。
 と思います。
 この会話が生き生きと、自然に、普通、どこに
 でもいる男と女のものとなっていることが、
 見事に現実の世界と小説世界をつないでる
 ように僕には思えて。

 「となり町戦争」の登場人物・僕と香西さんの関係と
 比べたら一目瞭然、というか。嘘っぽいものと、本当に
 思えるものの差と言ってもいい。頭で書いたものと、土の
 匂いのするものの差と言ってもいいかも。

 これ以上、書くとストーリーにも
 触れたり、ネタばれ、になる可能性も
 あるので、ここまでで止します。

 要は「土の中の子供」、僕の心の奥、
 普段は何も感じないところまで入り込んで
 揺り動かしてくれた、ということ
 です。「となり町戦争」との比較の中でしか、
 ストーリーの根幹に触れない紹介が出来ん
 僕も情けないけど。
 (「となり町戦争」も本当によく書けてるんです。
  だから、比較の対象にするんですが。好み=テイスト
  の問題でしょうね)

 (下)荒い読み方で、表紙の曲がった「土の中の子供」
 掲載の新潮4月号。

 タイトルを眺めるだけで、自分自身、体が熱くなるのが判ります。
 昔、惚れた女の苗字とか名前を見ただけで、熱くなって
 たのと同じ。甘い、という意見が出てもおかしくないけど、
 中途半端じゃない経験をしたものにだけ許されることって
 あると僕は思いました。

  深夜の電車の中で読み終えて、JR須磨の駅から歩く
 道。足元が震えてたもんなあ。いいもんに出合った時、
 まだ心が動く自分がいて、ちょっと安心って感じかも。





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最終更新日  2005年07月27日 03時17分16秒
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