「ミナコの思考回廊」

「スクラップ」




付き合って1ヶ月近くなる、彼の部屋にお邪魔した。彼の本棚には、膨大な量のスクラップブックがあった。


「ねえ、これ何・・・?」

「それはそのとき欲しい物を、雑誌や広告から切り抜いて貼ったやつ。子供の ころ、ハサミ使うのが好きでさ。
 雑誌やら新聞やら紙ばっか切ってて。じゃ あってことで親がスクラップブ ックを用意してくれたんだよ。
 それがこのトシまで習慣みたいになっててさ」

「ふーん・・・ね、見てもいい?」

「どーぞどーぞ」


背表紙にはそれぞれ西暦が書かれてあった。
とりあえず一番最初のものを開くと、ぼろぼろのそれには、怪獣やクルマなど子供の好きそうなものが切り張りされている。

彼の年齢を逆算して考えると―――大分手先の器用な子だったんだな、と思う。
ちゃんと輪郭に沿ってハサミが入れられていた。


微笑ましく思いながら数冊先を見て眉をひそめた。
そこには家族の・・・親子の姿ばかりが切り抜かれている。いっそ偏執的なほど丹念に、隙間なく、大勢の親子の姿が。


手狭なキッチンでコーヒーを淹れている彼の背を見る。
出会った当初。まだ付き合い始める前に聞いた話だ。

『親父は俺が小さいころ事故で死んだよ。』

なんでもないことのように彼は言った。
何をそんな昔のことを今更、と顔に書いてある。そんなあどけない表情が忘れられなかった。

、、、、この年に、父親を亡くしたのだろう。


見てはいけないものを見てしまった気がして本棚に戻したが、すっと目線を移す。

一番最近の、今年の年数が書かれたもの。
どうしても気になって手を伸ばし、目を見開いた。

最初の数ページには恋人たちの姿。それ以降は白紙だ―――今年ももう、終わりに近いと言うのに。


棚に戻して振り返ると、コーヒーをテーブルに置きながら、彼がそっと笑った。



「・・・ほしいものは、そんなところにはないって気付いたんだ」



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