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2003年05月06日
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 調停の申し立ては初めてなので、下調べをしておいたつもりでもやはり緊張します。


 この日の服装は、グレーのセミタイトスカートに空色の綿ニットアンサンブル。ニットは2年前にネットフリマで購入したものです。何度も自宅で洗濯しているので、クッタリ感が出ています。足下は履き古したローファー。これは何度も捨ててしまおうと思っていた靴ですが、雨の日用にととっておいたものです。鞄はペカペカしたナイロンの安物にしました。香水はつけず、マニキュアは落としてあります。アクセサリーもなしです。つまり「お金がありません」と全身でアピールしているのです。髪は半年前に美容院に行ったきりですから、これも好都合です。

 こうした演出には私なりの理由があります。いろいろなサイトで同じように養育費請求の調停をした人の体験談を読んでみると、調停では担当する調停員の主観も少なからず影響を及ぼすらしいのです。オーダーメードのスーツを着てブランドもののバッグを抱えているような人が「養育費を請求します」といっても、親身になってくれないということでしょう。

 そうした話を見聞きして、ふと「リップスティック」というレイプ犯罪を描いた映画を思い出しました。被害者のモデルが裁判に臨む際、胸元が見えるほどシャツのボタンを開けて着ているのを弁護士が直させます。被害者が「男を誘うような女」であってもなくても、レイプの罪が軽くなるわけではないと思いますが、少しでも陪審員の心証がよくなるなら、といった配慮からでしょう。

 養育費の請求についても、こちらが相手よりも暮らし向きが豊かと思われては「向こうも苦しいんだからこのへんで手を打ってはどうですか」と不本意な結果に持っていかれるかもしれません。それでなくても元亭主は泣き真似が上手なのですから、こちらも「不憫な母子家庭」になりきることが必要と思ったわけです。

 さて、S市の裁判所は駅から徒歩10分ほどの場所にありました。東京家庭裁判所は以前息子の氏の変更手続きで足を運んだことがありますが、それよりもずっと小さく古い建物です。

 1階の売店で収入印紙を買い、2階の受付の前で番号札を取って、順番が呼ばれるのを待ちます。壁に貼られたパネルを見ると、家事相談は個室で行われると書いてあります。そこで元亭主がいかにろくでなしかをゆっくりと訴えることにしよう…。そう考えているとチャイムが鳴り、私の番になりました。

 ドアを開けて中に入ると、そこは1脚の椅子もなく、ただのカウンターになっていました。その向こうには20~30の事務机が並び、みな忙しそうに仕事をしている様子。さらに2名の先客がいてカウンターごしにあれこれと話をしています。私がきょろきょろしていると年配の男性が「どうしましたか?」と出てきました。

「謄本ある? 子供は何人? 収入印紙は? じゃあこれに書いてね」

 ふたたび廊下に戻り、投票所のようにいくつかに仕切られた長机に向かって腰掛けました。渡された用紙は「家事審判・調停申立書 事件名(養育費)」とあります。申立人、つまり私と、相手方である元亭主、息子の本籍、住所などを記入していきます。「養育費月___円」の部分には5万円と書きました。あまり多いと「相場」から外れてしまい、少ないと相手の負担にならないので、その間をとってはじきだした金額です。

 相手方の住所の欄には電話番号も書かねばなりません。戸籍の附票、住民票から住所は調べがつきましたが、電話番号はまだわからないため、「勤務先:○○株式会社」と書き添えて会社の電話番号を記入しました。

 受付に戻り、さきほどの担当者に書類を出すと
「はい、はい。じゃこれでいいですね。あとは切手と…」
「あのう…相談は?」
「え、相談したいの? 養育費請求するっていうから申立書書いてもらったんだけど」
「いえ、調停の申し立ては今日する予定なので、それはいいんですが」

 2~3人立てばいっぱいの狭い受付に、入れ替わり立ち替わり人が出入りして、とてもじっくりと事情を説明するどころではありません。たしかに、調停の意思は固まっているのですから、今更相談というほどの相談もないのですが、このあとどうすればいいのかわからず、何とも心許ない気持ちです。

「養育費の取り決めはしたの? していないの?」
「実は親権と引き替えに養育費を請求しないという協定書を作成したのですが、そうしたことはできないと聞きまして…」

「そう!そうなんです。なので、これからの養育費はもちろんですが、協定書は無効ということであれば離婚した年に遡って過去の分も請求したいのですが」
「うん。そうですね」
 担当者は深く頷いてくれました。この人は調停員ではないので、同意を得ようが得まいが関係はないのですが、こういう反応は心強く嬉しいものです。

「それで、このあとはどうすればいいのでしょうか」
「このあと10日から2週間の間に、あなたの書いた申立書をもとに、あなたと相手方に調停への呼び出し状が届きます。そこに調停の日時が書かれています。その日においでいただかないと、この申し立ては無効になってしまいますから、万障繰り合わせて、雨が降ろうが槍が降ろうが必ず来て下さいね」


「ではよろしくお願いします」と頭を下げ、私は裁判所を後にしました。

 結局、今日は申立書の提出だけで、貧乏人のアピールは必要なかったようです。これまでの経緯やお互いの言い分は調停で、ということになります。それにしても2週間。お役所仕事って遅いですね。





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最終更新日  2012年04月06日 12時11分59秒
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