医師が病気になったとき-特発性大腿骨頭壊死-

医師が病気になったとき-特発性大腿骨頭壊死-

恩師からの手紙


大腿骨頭壊死になって手術を受けるまでの間、松葉杖の生活でした。杖での暮らしは不自由であるので、外出するのが億劫になってしまいます。昔は、街を歩いていて、ちょっとおいしそうな食べ物屋さんや気になる飲み屋さんに気軽に立ち寄ったものです。おいしいと、家族や仕事場の友人を連れてゆくのです。(連れて行った家族や友人がおいしいと言ってくれると嬉しいし、その人が常連でその店を使うようになると、もっと嬉しいものです。)でも、杖だと外出そのものをしなくなります。そんなところに、私が医師になりたての頃の上司から、同窓会の招待状が届きました。大腿骨頭壊死のため行けない旨、ご返事を書いたところ、ご返事をいただきました。
拝啓
特発性大腿骨頭壊死に罹患されたと知り、びっくり仰天です。私どもの教室の激務に堪え、藤が丘病院でも恐らく多忙な激務が続いても、へこたれないで頑張って下さっていると思い続けていましたから…。奥様、息子様、ご両親様ともどもさぞかしご心配のことと拝察申し上げます。早速、「今日の治療指針」(医師が患者さんの治療指針をたてるときに調べる本のひとつ。現在の治療指針のスタンダードなものが掲載されている。毎年改訂される。)をみたら、「比較的若年者、あるいは働き盛りの世代に多いことから、骨頭温存手術を考えることが重要」など書いてあり、stage分類、病型分類A-C(Type)などが挙げられていますが、どの当たりで、何らかの意味で11月というそんな先のOpeでよいのかと素人なら心配です。とにかく今は栄養をつけるよう、手術に耐えられる身体づくりでしょうか。11月に手術をされたらお見舞いに行かせてください。その前に私と家内の心ばかりのお見舞いを失礼ながら同封させて頂きました。まだ残暑のときが続くようですから、内科的疾患に気をつけられて手術に備えられますように。末筆ながら御奥様、ご両親様に宜しくお伝えください。
敬具
2005.8.11夜
恩師は、私が地方の大学を卒業して消化器内科をめざして門を叩いた医局で教授をされていました。入局(医師の世界では入社といわずに、入局といいます。)したとき、「鉄は熱いうちに打て」とばかりに、厳しく鍛えられました。とても辛くて、やめたいと思ったことも多くありましたが、私のような間抜けにとっては、とてもよかったようです。今、どの病院で仕事するにしても、周囲から信頼されるような仕事ができるのは、恩師の躾があったからと思っています。このお手紙を頂いて、とても嬉しく、ご心配をおかけしたことを反省しました。

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