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レジデントの勤務時間制限は必要か?



ずっと気になっていたことだったので、昨年の英語のクラスのリサーチのトピックに選んだ。

そもそも、飛行機のパイロットや、トラックの運転手は連続勤務時間を法律で定められているのに、命を預かる医師は仮眠は少しとれたとしても、ぐっすり眠ることはなく36時間も連続勤務をしている。そして彼らは最高、週120時間も働く。24時間の間で5時間以下の睡眠しかとれなかった場合、精神状態は万全とは言えなくなる。1晩不眠の場合、認知機能はアルコールの血中濃度が0、1%の時と同じレベルにまで下がるのだ。法律ではこの状態で車を運転するのは安全ではないと判断されるのに、医師はこの状態でも患者を診察し、オペ室でアシストもする。そのほかにも記憶力、計算能力、注意力、集中力だって、しっかり睡眠をとったときと比べて劣るのだ。慢性的な不眠状態はムードやモチベーションをも左右する。

実際のアメリカ人のResidentのインタビュー記事からは、「慢性の疲労から、怒りっぽくなって、新しい患者なんてもう診たくなくなっていた」や、「小児科の患者が重篤で助かるみこみがないとき、その子の親がしつこく質問をしてきたが、うっとおしくて、その子がなくなればいいのにとさえ思った」と告白している。

睡眠不足の医師は帰宅途中、いねむり運転で事故を起こしそうになったり、女医は生理不順を抱える人が多い。(これはナースにも共通)。慢性の疲労は様々な症状を引き起こす。患者を治療しながら、自分はとっても不健康な生活を強いられている。

不眠、過労状態で働く医師が医療ミスをひきおこすというデータもあがっている。
アメリカでは医療ミスが原因でなくなる人の数は、自動車事故、乳がん、エイズで志望する人数より多いのだ。
死因別の統計では心臓病、癌に次いで、第3位に院内感染も含めた医療ミスが入るという異常な事態。

http://www.youngagain.com/mortality.html(アメリカの医療ミス関連記事)

これらの問題をうけて、法律をつくって医師の連続勤務時間を制限しようという動きがたかまっている。

実際、2003年、7月にAccreditation Council for graduate Medication Education(ACGME) がResidentの勤務はは週80時間までと規制したが、厳しくとりしまわれないため、効果はほとんどの病院でないとのこと。

そのため、法案 "The Patient and Physician Safety and Protection Act of 2003"がつくられている。

http://www.amsa.org/hp/rwhlearn.cfm

これによると、連続勤務は24時間まで、週80時間まで、オンコールについてなどなど詳しく提案されている。
それでも守れない場合の罰則について違反をしている病院を公表することを拒んでいたり、Resident自身の免許が剥奪されることになるので、誰も申告しないだろうと言われており、この法案の行方も???つめが要求される法案のよう。。

さてこの動きに反対する人もいる。
Residentが勤務制限されるとその分、歳の医師につけがまわる。
彼らのなかにはそもそもトレーニングなんだから、継続して患者を診ることで病態を学ぶべき!!そして患者に対する責任感を身につけるのだ!!という人がいる。

という意見については、やはり慢性疲労の状態では学ぶことの能力自体が下がるし、医療、患者に対する情熱だって失うことになると反論したい。

Residentに限らず、どの医師もが他の職種の方と同じ権利をもって、しっかり休養することが、医療ミスの減少どころか、質のたかい医療を提供できることにもつながるはず。

この問題は容易に解決できることではないが、医療界だけでなく、皆が注目して改善方法をみつける必要があるのではと思う。過労死でなくなった医師の問題については医師不足(小児科、脳外科)を解消できるような法改正(診療報酬の見直しなど)だって必要。

他人事じゃない。誰だって、不眠で機嫌の悪い医師に診てもらいたくないはず。
この問題は自分の健康、命をも左右されるかもしれないこととして関心をもっていただけたらと願う。

2004年11月

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