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2004年04月06日
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カテゴリ: 紫苑の日常
 本当に驚いた。

 勤めを終えて帰宅してみると、テーブルの上に、長女と彼の名前を書いた書き損じの婚姻届が置いてあった。
 昼間、所在を知りたくて携帯電話に入れた時、区役所にいるとのことだったから、わたしの頭の中は、ものすごい勢いで婚姻届の提出へと向かっていった。
 順番が違うじゃないか、まず、親に報告があってしかるべき、否、もう二十歳を過ぎた大人なのだから、それもありだろう、とか支離滅裂でじっとしていられなかった。完全に血は頭へ上り、激しく逆流を始めていた。彼女はまだ学生である。彼を恋人として認めてはいるけれど、まだまだ先でも良いじゃない、親が手塩にかけて育てた娘の卒業式の余韻すら浸れていない。母娘旅行だってしたかった。もっと、もっとしたいことはいっぱいあったのに、良いとこ取りの彼に、憎しみが湧いてくる。着替えをするのも忘れて、わたしはロッキングチェアに張り付いたまま、ただ、ぼんやりと揺れていた。いつかは来る瞬間ではあるだろう。しかしながら、こんなに唐突に来なくて良いじゃない、ひどいよ、涙があふれてぽろぽろとこぼれ落ちた。
 目を閉じると、幼かった日々が浮かび、現実の落差に戸惑った。それでも、ゆっくり、じっくり考えて、わたしはひとつの結論にたどり着いた。
 「良いじゃないの、彼女が幸せなら。それが一番なのだから」

 そう思った瞬間、身体が喉の渇きを訴えていた。混乱して朦朧とした意識は、完全に現実に戻った。椅子から立ち上がり、干からびた喉にビールを流し込んだ。冷たさとほろ苦さを伴った液体は、わたしの切ない思いに、じわじわと沁み込んで、まるで何事もなかったように、鎮まっていた。

 ケ・セラセラ。
 人生はなるようにしかならないんだ。

 何でも来い、受けて立とうじゃないの、胸をどーんと叩きたい気持ちになった。

 「あのさー、テーブルの上の紙、見たんだけど」
 「あ、あれ?お守りよ」
 「お守り?」
 「うん。いつか結婚できますようにって」
 「えーーーっ!うっそーーーーっ」
 「親にも言わないで、二人だけで出すわけないじゃん。普通ー」
 「そうね、そうだよねー」

 わたしの眉間から一気にしわが消えて、目じりへと移っていった。





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最終更新日  2004年04月06日 10時52分50秒
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