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2004年07月17日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay

 外で飲んできたけれど、もう少しだけ欲しかった。
 ビールはもういいや。
 冷凍庫を開けると、凍ったズブロッカの壜がごろんと転がった。
 数日前に、長女の恋人が置いていったのだ。

「お母さん、ズブロッカが好きなんですってね」
 彼の好物のトマトを分けていると、紙袋から自分のために買って来た、数本のうちの一本を取り出した。
「うん、大好きよ」
「じゃあどうぞ。トマトのお礼です。僕も大好きなんですよ」

 珍しいものを見つけては、わたしにも買って届けてくれるのだ。 きっと、ズブロッカは長女が話したに違いない。

 凍ってトロトロのズブロッカを、口に含んだ。
 甘いハーブの香りが口中に広がって、冷たさと共に喉の奥へと沈んでいった。
 わたしは思わず、何年か前のズブロッカの記憶を辿っていた。
 お気に入りの、ロッキングチェアに身をゆだねて、ゆっくりとその記憶を引き寄せた。

 繁華街の中ほどにある、古いバーカウンターで、わたし達はよくズブロッカを飲んでいた。
「ズブロッカをロックで。チェイサーは水」
 初めて耳にしたとき、わたしはその得体を知らなかった。
「飲んでみる?」
 まん丸の氷が浮かんだタンブラーを、彼はわたしの前に滑らせた。

 たちまちとりこになっていた。
「お客様、チェイサーにビールっていうのも、結構ありですよ」
 バーテンダーの言葉に、ノルウェーのビールも試してみた。
 その取り合わせは、禁断の味だった。 


 未婚既婚、問わずに恋はするだろう。
 でも、大事な恋は、一線を越えないのが良い。
 きれいなままで心の奥にしまっておくのが良い。
 だって、いつまでも、素敵な思い出を届けてくれるから……。

 ズブロッカは、そんな恋の記憶を届けてくれた。
 甘く切ない恋の余韻を。








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最終更新日  2004年08月27日 13時11分24秒
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名無し さん
文学的でいいっすね。すごくいい感じになれました。ついコメント書いてしまいました。
ズブロッカで検索してたものです。
自分も、のみたくなってきました。
(2004年08月31日 02時00分39秒)

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