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2004年12月24日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay
次女は本当に嬉しそうにその指輪を眺めては、ふと笑みをこぼしている。

「ねぇ、見せて」
 素直に手のひらに乗せて、差し出した。
「素材は何?」
「シルバーだって。手作りだよ」
「へぇ、彼にはそういう才能があったの?」
「ううん。キットを買ってそのとおりに作ると、誰にでも手作りの指輪ができるらしい。けど、あたしは嬉しいの。見て、彼が言葉を刻んでくれているでしょう?」
 わたしは指輪の中に刻まれた文字を読んだ。

「別に、そんなことでもないんだと思うけど。指輪が嬉しいの。出あってから三年になるけど、一番嬉しかった。前の彼女の時は、ティファニィの指輪を贈ったらしいけど別れたから、指輪には良い思い出がないらしい。だから今まで指輪の話は禁句だったのよね、あたしたち」
「へぇ。そう?」

 そうか、もう三年が過ぎたのか。
 彼は当時、次女が今の大学を受験するために通っていた塾の講師だった。
 次女が初めて恋をした相手なのである。
 紆余曲折はあったけれど、ようやく恋人と呼べるようになったのだろう。

「ねぇ、母さん。あの指輪にはとっても素敵な思いが込められてるんだって。母さんが未来への示唆って言ってくれたけど、実際、彼の気持ちもそうだったのよ。これからは、そういう気持ちを持って、わたしときちんと付き合いたいって。うれしかったわ」
「そうだったの?良かったじゃない。でも、世の中にはまだ一杯男はいるよ。決めちゃって後悔しないの?」
「そりゃそうだけど。今は良いの。とっても幸せだもの」

 次女はわたしの布団に潜り込んできて、幼子のように身体を絡めた。

 彼女は、直に寝息を立て始めた。
 その寝顔は、穏やかで本当に幸せそうだ。
 良かったね。
 わたしは頬ずりをして、灯りを消した。






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最終更新日  2004年12月25日 12時17分45秒
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