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2005年02月01日
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テーマ: 吐息(401)
カテゴリ: Essay


 あれからどのくらいの時間が、わたしの頭上を通過したのだろうか。
 頑固で利己的な父には、我々子供達は随分泣かされたものである。
 でも、どんなに理不尽で許せないと思っても、
 父を心から憎んだことなど一度もなかった。
 今では、すべてが素敵な想い出にすりかわっていた。
 わたしは父との親子関係を思うとき、
 同時に娘達と元夫との関係に思いを馳せるのだった。


 言いにくそうに長女が言った。
 「そうね、何か考えてるの?」
 「うん。お見舞いに行ってこようかと思ってる」
 「そう。きっと喜ぶね」
 「だから母さんの誕生日、
  一緒に過ごしてあげられないけど良い?」
 わたしと元夫の誕生日は近い。
 彼が先で、わたしが後だった。
 わたしの誕生日に近い三連休を、
 父親と過ごしてやりたいと言うのである。
 「良いわよ。母さんのことは」

 「うん。良い」
 「でね、メールを入れたんだ。
  そしたらね、頑張って生きてきてよかったって。
  良いことがあるもんだって、嬉しそうなの。
  病院の許可をもらって、外泊するって」

 「うん」
 それっきり二人は黙り込んだ。

 たとえ何があったとしても、親子の関係は永遠である。
 小憎らしく思った父のことだって、真から憎むことはできなかった。
 まして、娘達と元夫はすこぶる良い関係にあったのだから、
 そうしてあげたい気持ちが、痛いくらい伝わってきた。

 元夫からメールが入った。
 「連休に会いに来てくれるそうです。
  感謝します。ちゃんと育ててくれてありがとう。
  これからも娘達を、僕の代わりによろしくお願いします」
 わたしは、返事を返さなかった。

 「お願いされなくたって、面倒みるわよ……」
 心の中で精一杯の声をあげた。


 わたしは、父のことを思った。
 ただ、22年前に逝った父のことを……。





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最終更新日  2005年02月01日 16時05分22秒
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